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艶もたけなわ
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クミコ 歌手

2018年4月29日号

阿木燿子の艶もたけなわ/200 

歌に言霊を宿らせる歌い手"と呼ばれ、多くのファンを魅了してきたクミコさん。3・11では石巻市で被災し、その後は鎮魂と再生のためにコンサートを続けてきました。そんなクミコさんの歌声とは裏腹に、10代の頃の肥満エピソードや恋愛トークは爆笑モノ。最新曲「最後だとわかっていたなら」とともにクミコさんの魅力満載でお届けします。

 ◇自分のことをどのジャンルにも属せない「スキマ歌手」だと思っているんです。  

 ◇クミコさんって、恋多き女のイメージがありますが、若き日の悩みは、やはり恋?  

 ◇恋なんて言えば美しいですけど、ただ若い生き物の発情期が来たって感じなだけで(笑)。

阿木 主人(宇崎竜童氏)がよろしく、と申しておりました。

クミコ こちらこそ。以前、宇崎さんのギターで「身も心も」を歌わせて頂きました。

阿木 あの曲、主人が歌うと高音のところが苦しそうに聞こえるんですが、クミコさんだと楽々クリアという感じで。また何かの折に歌って頂けたら、嬉(うれ)しいです。

クミコ ありがとうございます。ただ私、性格がさっぱり系なので、ソウルフルな歌だと、どうも情感が足りない気がするんです。

阿木 あらッ、そんなこと。だってクミコさんは「百万本のバラ」を歌っていらっしゃいますが、加藤登紀子さんのと聴き比べると、圧倒的にクミコさんの方が、感情表現が激しいですよね。

クミコ 私、昔、「銀巴里(ぎんぱり)」というシャンソン喫茶で歌ってたんです。あそこではこの曲のリクエストがとても多くて、私もやむなく覚えたんです。加藤登紀子さんはご自分で訳されてますが、私のは松山善三さん訳のものなんです。とにかく「バラをください」が繰り返され、ゆっくり歌うと凄(すご)く長い。それに、考えてみたら愛情の押し売りみたいな歌で、この歌の主人公は、女性にしてみれば迷惑千万ですよね。女性が泊まっているホテルの下に、勝手にバラを敷き詰めちゃうんですから(笑)。なので、アレンジも後半にいくに連れ、狂気を孕(はら)んで盛り上がるようにしたんです。

阿木 「銀巴里」って、若かりし頃の美輪明宏さんや金子由香利さんが出ていらした伝説のライブハウスですけれど、オーディションを受けられた時、クミコさんが歌えるシャンソンは「サン・トワ・マミー」しかなかったとか?

クミコ 私、その時、ジャズ喫茶のオーディションも受けていて、どっちか受かった方に進もうと。そちらは落ちたので、シャンソン歌手になったような。

阿木 もともとは女優さん志願でいらしたんですよね。

クミコ 子供の頃、静岡の農村に住んでいたのですが、楽しみは土曜午後のテレビの舞台中継だったんです。ある時、ある劇団の「森は生きている」というお芝居を観て、いつか私も「あちら」の世界に行きたいなと。それで大学は演劇科のある早稲田を受けることにしたんです。

阿木 早稲田にすんなり入れたなんて、成績優秀! お母様が頭が良くなるドリンクを毎日、作ってくださったとか。何が入っていたんですか?

クミコ 聞いてください、阿木さん(笑)。ウチの母は何を思ったのか山胡桃(くるみ)とか鬼胡桃とかいうゴツイ胡桃をですね、ガンガン叩(たた)いて割りまして、殻を砕いて飛び散った実を拾い集めるんです。それを擂(す)り鉢に入れて、「頭が良くなれ、頭が良くなれ」と念じて擂るんです。その胡桃たるや、もの凄くねっとりしていて、カロリーが高そうで。それに黒砂糖を山盛り入れて、熱湯を注ぎ、私におやつとして食間に飲ませてたんです。

阿木 胡桃って、実の形からして脳に似ていて、頭に良さそうですけど。

クミコ まあ、効き目の方はどうだったのか分かりませんが。それより何より、体重がうなぎ登りに上がってしまって、あの頃は天井知らずでしたね。

阿木 面白いのは、当時のクミコさんは、食べると太るってことを、ご存じなかったとか?

クミコ そうなんです。でも、そういう時期って、ありません?

阿木 いえ、ありません(笑)。食べたら太るのは、いつの時代も常識の範疇(はんちゅう)だと思いますが(笑)。

クミコ 私の子供の頃って、健康診断で体重計に乗って増えていると、「やったねー」みたいなのがあったんです。

阿木 本当に? 地域性でしょうか(笑)。

クミコ 周りのみんな、そうだったんです。何でも右肩上がりが良いって信じてて。身長はもちろんそうですが、体重だって増えれば喜ぶ、みたいな(笑)。でも、それがいかに誤った認識であったかは、後に思い知るんですけどね(笑)。最終的には70キロを超えていたはずです。

阿木 70キロですか? それはかなり(笑)。で、そこでハタと。

クミコ そうなんです。でもまあ、胡桃ドリンクのお陰か、大学には入れたので、家に食事のために帰らなくてよくなったんです。それまでは「3食きちんと食べなさい」と母から言われ、食べないと死ぬみたいな、強迫観念を植え付けられてましたから。でも、食べなくても死なないことが分かったので、気持ちが自由になりました。当時はアングラの演劇が全盛で、とりあえず大隈講堂の裏にあった劇団に入り、"青春してます"って感じで、不規則な生活になりました。そしたら体重がだんだん減っていって。生き物として適正体重になっていったって感じですね。

阿木 クミコさんって、恋多き女のイメージがありますが、若き日の悩みは、やはり恋?

クミコ いや、恋なんて言えば美しいですけど、ただ若い生き物の発情期が来たって感じなだけで(笑)。

阿木 男性とのお付き合いで、嫌いになると、トコトン駄目になるとか?

クミコ 確かに。別れた男は死んだも同然という人も。

阿木 側(そば)に寄られるのも、嫌みたいな?

クミコ そうですね。恋って不思議なもので、すべてをキラキラさせますよね。灰が金になっちゃったみたいな。でも、それがある瞬間、元に戻っちゃうんですね。それって何故なのか、私にも分からないんですけど。

阿木 相手の男性にしたら、突然の豹変(ひょうへん)ぶりに"何で?"って思うでしょうね。

クミコ やっぱり「発情」が先行した関係では、長続きしないんでしょうか。気持ちが冷めると、総天然色カラーの映像が、急に白黒になったみたいで。ある時も突然夢から覚めたみたいになったので、私、「別れたい」と言ったんです。そしたら相手は「自分は好きだから絶対別れない」って。

阿木 男性も心を整理する時間が必要でしょうし、突然言われても、ってことはありそうですけど。

クミコ でも私、「恋愛も契約と同じで、一方がやめたいと言ったら、継続は不可能じゃないの?」って説得したんですけど、相手は「自分は好きだから」と、もう壁みたいで。ついには「道路の真ん中に飛び出て死ぬ」って。「だったら、どうぞ」って、売り言葉に買い言葉ですね。

阿木 あのー、それってあまりに冷た過ぎるのでは(笑)。

クミコ とても素敵(すてき)な恋だったので、最後がそんな形になったのが悔しくて残念だったんですが、後からやっぱり、あれは恋というより「発情」だったのかしら?と思ったら、なんだかとても悲しくなりました。

阿木 でも表現者としては、そういう体験すベてが無駄じゃなく、歌に昇華されるのでは?

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