対談詳細

艶もたけなわ
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恩田陸 作家

2017年9月 3日号

阿木燿子の艶もたけなわ67

 今年、出版界で快挙といわれるニュースがありました。『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)が直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たしたのです。著者の恩田陸さんは、数々の作品を送り出しているヒットメーカー。今回は、恩田さんの仕事術から、受賞作のエピソード、さらに新作絵本『おともだち できた?』(講談社)のウラ話などたっぷり伺いました。

  •  ◇主人公の名前を忘れることは結構あって、その都度読み返して書いてます(笑)。
  •  ◇本でも作詞でも、最近タイトルに対するこだわりが感じられない作品が多い。
  •  ◇作品の顔になるのに、安易に付けた感じがして、滅多にいいなと思えるものがない。

阿木 遅ればせながら、直木賞と本屋大賞のダブル受賞、おめでとうございます。ダブルって、初めてなんですって?
恩田 そうみたいです。もともと本屋大賞は、直木賞のアンチテーゼとして始まったので、直木賞を頂いた時点で、もうないな、と思っていたんです。
阿木 でも、以前にも本屋大賞はとっていらっしゃる。で、今回で2回目ですよね。
恩田 本当にびっくりしました。
阿木 恩田さんは一時期、原稿用紙50枚を1日のペースで書かれていたとか。今はどのくらい?
恩田 毎日、コンスタントに仕事ができるタイプではないので。ひたすら考え込んで、1枚も書けない日もあるし。
阿木 平均したら?
恩田 燃え尽き症候群的な感じで、ここ数カ月サボっていて。月にならすと200枚くらいでしょうか。
阿木 それでも、かなり書いていらっしゃる。
恩田 でも、まあ、若い頃のようなペースではいけませんね。昔は気合で何とか書けましたけど、今はすぐ寝ちゃうので。
阿木 もう徹夜は厳しい?
恩田 駄目ですね、気力がね。
阿木 私も30代の超多忙な頃は、二晩くらい寝なくても、どうにかなりましたけど。
恩田 私、作詞には苦い経験があって。作詞って締め切りがタイトじゃないですか。一度だけ作詞をしたことがあるんですけど、それがトラウマになっていて。尾籠(びろう)な話で恐縮なんですが、プレッシャーで下血してしまって。ポーンと曲が送られてきて、はい、これに1週間で、詞を乗せてくださいって言われたんです。
阿木 1週間って、かなり短いですね。よほど急ぎの仕事だったんですね。
恩田 サビの部分だけでも、先に頂けたらって、先方が言うんです。
阿木 取りあえず1番だけでもって場合も、たまにありますけど。
恩田 テレビスポットに流す分を先に、ってことだったらしいんですけど、最初何を言われているか、分からなくて。
阿木 慣れていないと、面食らいますよね。
恩田 それで凄(すご)く悩んじゃって。それ以来、作詞は私には無理と思っているんです。
阿木 恩田さんほどの言葉の魔術師がもったいない。でも、小説と作詞では脳の使う部分が違うのかもしれませんね。
恩田 本当に。切り貼りじゃないですけど、クライマックスを先に書くような器用なことは、私にはできません(笑)。
阿木 私達の仕事は文字数が少ないので、いざとなれば一晩でどうにかなりますが、何百枚もの長編になると、そうはいかない。それこそ何年もかかったりとか。そういう根気が私にはないので、小説家って凄いなと常々思っているんです。今回のダブル受賞の対象になった『蜜蜂と遠雷』は構想12年、執筆7年ということですが。
恩田 小説家にもいろいろなタイプが居て、1作ごとに集中する人と、私みたいに並行していくつか連載を持つ人と。
阿木 そういう場合、ストーリーがこんがらがったりとかは?
恩田 それはないですね。ただ主人公の名前を忘れることは結構あって、その都度読み返して書いてます(笑)。

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