対談詳細

艶もたけなわ
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樋野興夫 順天堂大医学部病理・腫瘍学教授

2016年6月12日号

阿木燿子の艶もたけなわ 107回

 早期発見で治る病気といわれるようになったがんだが、依然として死亡率はトップ。だからだろうか、がん患者は精神的に不安定になることも多い。それを解消する新しい試みとして樋野先生が行っている「がん哲学外来」が注目を集めている。阿木さんは好奇心のアンテナを目いっぱい広げて、その"診察の中身"に迫ります。

  •  がん患者の本音を引き出した後、五つくらい"言葉の処方箋"を出すんです。
  •  がんにも顔つきがあるんですか?いじわるそうだなとか、強欲そうだなとか(笑)。
  •  ありますよ(笑)。がん細胞を表面の風貌というか、"顔つき"で診断するんです。

阿木 「がん哲学外来」って耳慣れない言葉ですが、先生が提唱者でいらっしゃる。従来のカウンセリングとは何が違うんですか。
樋野 病状の相談に乗るカウンセリングではなく、ここでは「対話」が主なんです。お茶をお出しして1時間ぐらい話すんです。時には患者さんのご家族や、そうでない一般の方も来られます。
阿木 皆さんと、ただお話をするだけ?
樋野 最初はお互いに何もわからないですからね。冒頭の15分くらいは、どうしてここに来たのかをお聞きするんです。そして、その後はその人が何を悩んでいるかですよね。その声に耳を傾け、いまの問題点を引き出し、一緒になって考える。対話することで、それぞれの悩みに寄り添っていく感じですね。
阿木 一口にがん患者さんといっても、悩みはそれぞれ多岐にわたるでしょうね。
樋野 患者さんの悩みの3分の1は治療法などですが、残りの3分の2は人間関係ですね。しかも、家族間の悩みが多い。
阿木 いざ、がんに罹(かか)ってみると、それまで潜在化していた親子や夫婦の問題が、白日の下に晒(さら)されてしまうことがありそうですね。
樋野 よくあるパターンとしては、旦那さんががんになると奥さんが急に支配的になり、あの民間療法、このサプリとか言い出して余計なお節介(せつかい)を焼く。逆に、奥さんががんになると、旦那さんが親身になって話を聞いてくれないなど、冷淡さが目立ってしまう。多くの夫婦はこれで悩んでいますね。なのでリビングや寝室で夫婦が30分間、一緒にいることに耐えられない。
阿木 たった30分が?
樋野 そう、会話がなくても、テレビを見たり、新聞を読んだり、それぞれ違うことをやっていてもいいんですが、それでも耐えられない。つまり、顔を見るのも嫌ってことですね。

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