対談詳細

艶もたけなわ
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藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事

2016年5月29日号

阿木燿子の艶もたけなわ 第105回

 昨年の流行語大賞にノミネートされた「下流老人」。この言葉の生みの親である藤田孝典さんが今年、新たに若者の貧困についての本を上梓しました。国は社会保障の制度をなおざりにしてきた結果、「貧困世代」の若者たちが蔓延し、「下流老人」があふれる社会に。藤田さんの話に、阿木さんは真剣な眼差し。果たして、ニッポン再生の秘策は?

  •  現代社会では、結婚も出産もリスク以外の何物でもありません。
  •  セーフティーネットって、元々はサーカスの綱渡りで張る網のことですよね?
  •  まさにそう。だから今のうちに税金を投入してしっかりとしたネットを張るべきです。

阿木 藤田さんが去年上梓(じようし)された『下流老人』は、20万部のベストセラーになり、タイトルが流行語大賞にノミネートされました。かなりインパクトの強いネーミングで、私も少なからずショックを受けた一人ですが。
藤田 出版したのは去年の6月で、その約2週間後に東海道新幹線の車内で高齢者の焼身自殺(注1)がありましたよね。年金額が低いことによる生活苦が原因とされた事件です。
阿木 覚えています! 私はあの日、ちょうど静岡に行く用事があって、新幹線に乗ろうと東京駅に行ったんですが、ホームで5時間も待たされてしまって。事件のことは後で知って、驚きました。
藤田 あの事件で思いもかけず、年金生活者の実態にスポットが当たり、高齢者も生活困窮者になる可能性があると、世の中に知れ渡った感じです。それで、「下流老人」という言葉が一気に広まりました。
阿木 巻き込まれて亡くなった方もいらっしゃる不幸な事件でしたが、世間が注目するきっかけになったんですね。それにしても、「下流老人」という言葉は強烈でした。まさか自分が生活保護を受けることになるとは、誰しも考えてもみないと思うのですが、この本を一読すると身近に迫っている現実だと思い知りますよね。
藤田 対象者が属する共同体(日本)の大多数に比べて貧しい状態にあることを指す、いわゆる「相対的貧困(注2)」は、今や日本人の2割に達しています。つまり、今までフツーだと思って暮らしていた人たちが、ある日突然、生活が成り立たなくなる。そんな状況に追い込まれるケースが急増しているんです。
阿木 藤田さんは、それに対する危機感を私たちが持っていない、自覚が足りないことが問題だと指摘していらっしゃいます。でも、目の前の貧困に気付かないなんて、日本人ってそんなにノー天気なんでしょうか(笑)。
藤田 いや、受け入れられないんですよ。"ぼんやりとした中流意識"というんでしょうか。みんなと同じでありたい、フツーでありたいといった、横並びの意識が強すぎるんです。
阿木 今や神話ですけど、かつては一億総中流と呼ばれた時代がありましたよね。その意識がまだ根強く残っているってことですね。

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