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艶もたけなわ
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村上もとか 漫画家

2016年5月 8日号

阿木燿子の艶もたけなわ 連載103

 現代から江戸時代にタイムスリップした医師のテレビドラマ「JIN─仁─」の大ファンだった阿木さんは、原作となった同名のコミックの作者、村上もとかさんに興味津々。知られざる漫画家の世界とともに、今春、奥様と260日間の海外旅行をイラストとエッセーでまとめた本を刊行した村上さんに、熟年カップルの海外旅行のススメを伺います。

  •  "にわかJINバブル"になって、かなり豪華な旅をさせてもらいました(笑)。
  •  長期間のお二人のご旅行って、仲がいいご夫婦でないと成立しませんよね(笑)。
  •  しょっちゅうケンカしてましたが、飲むため、なし崩し的に仲直りしていました(笑)。

阿木 大評判だったテレビドラマ「JIN─仁─(注1)」、私も夢中になって毎週、観ておりました。ドラマのDVDをめったに買うことはないんですが、後で全巻買ってしまったほどです(笑)。
村上 TBSに代わって、お礼を申し上げます(笑)。
阿木 言わずもがな、村上さんは「JIN─仁─」の原作者。でも私、原作のマンガ(注2)を読んでいなくて、対談が決まってから慌てて読ませていただいたんですが、ドラマのセットさながらの精密なタッチにびっくりしてしまって。
村上 恐縮です。
阿木 時代考証が大変だったのでは?
村上 僕は時代劇を描いたことがなかったものですから、ゼロからのスタートでしたね。でも今は、各地の博物館などに資料やジオラマ(模型)が数多くあるので、そういうところに行って、参考にさせてもらいました。
阿木 背景もさることながら、鉗子(かんし)などの小さな器具も丁寧に描き込んでいらっしゃいますね。
村上 監修の先生が付いてくださって、資料をたくさんいただいたので助かりました。
阿木 マンガの世界は、お一人で原作、シナリオ、キャスティング、美術、小道具まで担当して、映画でいえば製作のすべてを手掛けられる感じですよね。
村上 そうですね。何でも自分でやらなければいけないわけですが、裏返すと一人で何でもできちゃう。自分が"小っちゃな神様"になったみたいで、楽しいですよ(笑)。
阿木 確かにマンガは時空を超えられるわけですから、神様でいらっしゃる!(笑) そういえば、仁も神様のようでした。
村上 医者なら江戸時代にタイムスリップすれば、神様になれますね。でも、漫画家じゃ、役に立たない(笑)。
阿木 作詞家もダメですね(笑)。
村上 いやいや、新しい流行(はや)り言葉を生み出す、そんな存在になっていたかもしれませんよ(笑)。
阿木 ドラマの中では、勝海舟や坂本龍馬といった歴史上のスーパースターが出てきましたが。
村上 なるべく、要所要所で読者を惹(ひ)きつけるために有名人を出していこうと思っていました。たとえば、主人公の仁が坂本龍馬と友達だったら、楽しそうじゃないですか(笑)。でも、全体を通じては仁を、名もなき人たち、江戸の庶民のために懸命に治療する医者にしたいと考えました。
阿木 ドラマでは、咲(さき)さんと野風(のかぜ)さんという2人のヒロインが魅力的でしたね。2人は対照的でありながら、芯が強くて凜(りん)としているところが共通点ですよね。とくに私は、花魁(おいらん)の野風さんの気風(きつぷ)の良さにシビれました。
村上 2人は、境遇的には対極にいる女性ですね。一人は石高は小さいながらも旗本のお嬢さん。もう一人は一番人気の太夫と呼ばれながらも結局は女郎の身。でも、その時代の女性ならではの強さ、激しさをそれぞれの立場で表現できるんじゃないかと思って、ダブルヒロインにしたんです。
阿木 実は私、「JIN─仁─」をヒントに詞を書かせていただいているんです。
村上 えっ、本当ですか?
阿木 森昌子さんから3年ほど前にご依頼をいただいたんです。「花魁(注3)」というタイトルで詞を書いてほしいと。最後に決め台詞(ぜりふ)で啖呵(たんか)を切りたいとおっしゃって。
村上 それはそれは。光栄です。
阿木 昌子さんはもともと、野風さんの大ファンで、ああいう女性を演じてみたいというお気持ちがおありになったようです。
村上 野風のような鉄火肌な女性は男性も惹かれるし、女性からも憧れられるでしょうね。
阿木 村上さんが仁をお描きになるきっかけの一つに、吉原で生きた女性たちへの思い入れがあったとか。
村上 廓(くるわ)など苦界(くがい)に生きる女性たちの平均寿命は21、22歳だったというデータが記された本を読んで、心を動かされました。多くが性病などに罹(かか)り、若くして亡くなっているんですね。それをせめて、マンガの世界の中でどうにかできないかって。
阿木 あの時代だと梅毒に罹ったら、もう助からない。
村上 だから、現代医学を持ち込むしかなかったんです。タイムスリップして過去の時代に行くというのは、使い古された手法で、できればやりたくなかったんですが、この話を成立させるには使うしかないって。
阿木 今なら、性病の治療にはペニシリンが知られていますが。
村上 そうなんです。それが最初の問題でした。果たして、江戸時代で作れるものなのかって。お医者さんに聞くと、「産業革命前に、ペニシリンを日本で発明するなんてあり得ない」って(笑)。
阿木 そりゃ、専門家はそう言うでしょうね(笑)。
村上 でも、ペニシリンがないと、外科医の立場では行き詰まる。どうしたものかと悩んでいたところ、薬学の先生が「元々、カビから作ったものだから、その時代にあるもので原始的なペニシリンのレシピを作ってみましょう」とおっしゃってくださって、ストーリーに説得力が出たんです。
阿木 そうしたご苦労が実を結んで、コミックもドラマも大ヒット。でも、実は村上さんは、医学の知識がまったくおありにならなかったそうで。
村上 ムフフ。そうなんですよ。

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