対談詳細

艶もたけなわ
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嵐山光三郎 作家・エッセイスト

2016年4月 3日号

阿木燿子の艶もたけなわ 連載97

 本誌好評「サンデー俳句王」宗匠でもお馴染みの嵐山光三郎さん。豊富な知識と軽妙な語り口は、古希を過ぎてなお、"洒脱な不良老人"然としています。その嵐山さんに、不良と長寿を両立させるための秘訣を聞き出そうとする阿木さん。
 ところが、約30年ぶりの再会に、阿木さんが冷や汗を流す仰天エピソードも飛び出しました。

 ◇本音が一番。70歳を過ぎたら気ままに冗談言って、酒を飲んでればいい(笑)。
 ◇長寿と不良って、そぐわない感じがしますが、嵐山さんはどちらもお似合いになる。
 ◇僕らの時代は皆、不良少年。権威に対して突っ張っていた。でも今は非行少年です。


阿木 「嵐山さんにお会いするの」と主人(宇崎竜童氏)に話したら、「僕が読んで面白かった本があるから」と言って、『不良定年』を貸してくれたんです。それと、今度出された『漂流怪人・きだみのる』を並行して読ませていただいたら、嵐山さんのルーツを辿(たど)るようで、とても興味深かったです。
嵐山 それはうれしいなぁ。
阿木 そこできょうは、定年をとっくに過ぎて70歳を迎えた後、"よき不良人生"を送る秘訣(ひけつ)について、伺いたいと思って参りました(笑)。
嵐山 諸先輩方に、どの年齢がキツかったかと聞くと、皆、70歳だと言っておられました。思えば僕も、素晴らしい不良の先輩たちがお亡くなりになった年齢を越してしまって。まぁ、劇作家の井上ひさしさんは75歳でしたが、ジャーナリストの筑紫哲也さんは73歳、作家の吉行淳之介さんは70歳。僕の周りだとイラストレーターの安西水丸が一昨年、71歳で亡くなりました。
阿木 年々、寂しくなりますね。でも、これからは高齢化社会になって、今は70代になっても元気な方が結構いらっしゃるでしょう?残された時間をどうやって過ごすかが、問題ですね。
嵐山 そこ! そこですよ。
阿木 今まで経験したことのない時代の到来なので、お手本もないまま、日本人全体が漂流している感じですよね。
嵐山 そうです。でも僕はむしろ、日本人は漂流すればいいと思っているんです。70歳を過ぎたら、なおさら漂うように生きたらいい。そのサンプルとして、僕が書いたこの本は多少の参考になるかもしれません。きだみのる(注1)さんは『ファーブル昆虫記』の訳者であり、ベストセラー作家でしたが、基本的に自由奔放な人で、ある部分、「俺が俺が」の人ですよね。知っている家なら、どこでも泊まっちゃうような(笑)。
阿木 嵐山さんのご本では、若き嵐山青年が怪人・きださんの編集担当となり、きださんのさまざまな顔を垣間見て、その生き様に魅せられていく感じが描かれていますが、私は、きださんとは友達どころか、知り合いにもなりたくないな(笑)。だって、常識的に考えたら、かなり人迷惑な方ですよね。おまけに、普通の人はきださんを真似(まね)して漂流するなんて、とてもできません(笑)。
嵐山 確かに、きださんは破天荒な作家でした。でも、意外と阿木さんと共通項があって、阿木さんの詞はかつて、ウーマンリブ的というか、自立する女についてお書きになっていらっしゃいますよね。つまり、男に食わせてもらうんじゃなくて、一人の人間として女も男を選ぶんだって。それが、〈馬鹿にしないでよ(注2)〉って、山口百恵ちゃんの歌になってる。
阿木 そう、いきなり啖呵(たんか)を切っちゃう(笑)。
嵐山 きださんもとてもリベラルな方で、いつも「自由」を口にしていました。自分の持っているエゴイズムと自由の大切さ、自由のつらさを理解していた。自由には意志が必要だって。
阿木 「覚悟」ですよね。自由を手に入れるためには覚悟がないと、という。
嵐山 意志って孤独なんです。「こうしよう」っていう作業は、孤独でないとできない。
阿木 「こうしましょうね」と、同意を求めるのではなく、本人の強い目的意識ですね。
嵐山 付け加えて言っておくと、きださんは放浪しているから、おカネがないわけではなく、亡くなるまで人気作家だったので、実はおカネは持っていたんです。

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