対談詳細

艶もたけなわ
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西村賢太 作家

2016年1月 3日号

阿木燿子の艶もたけなわ 連載86

 見慣れない熟語がちりばめられた文体と、生々しい肉声を感じさせる台詞の数々で独特な世界観を創り出している芥川賞作家の西村賢太さん。その一方で、テレビでコメンテーターを務めたり、バラエティー番組にも出演するなど、マルチぶりを発揮しています。その極端な二面性に阿木さんが迫る爆笑対談。お楽しみください。

 ◇今は人に感謝しなきゃ生きていけないと、ようやく悟りました。
 ◇一定のクオリティーに達していないと、すごく落ち込みます。そういうことはないですか?
 ◇クオリティーはあまり気にしません(笑)。書いて、突き返されなければいいやって。


阿木 小説のカテゴリーの中で、私小説ってネクラなイメージがありますが、西村さんは......。
西村 そのイメージ通りです(笑)。僕ぐらい陰気な人間はいません。
阿木 でも最近、テレビのバラエティー番組やワイドショーで楽しそうなお姿を拝見します。
西村 昔から人前に出るのはすごく苦手なんです。宣伝をかねたアルバイトとして割りきってますが、普段はほとんど人と話しませんね。
阿木 人と話さないと、声が出なくなるそうですが、きょうはいかがですか?
西村 大丈夫です。ただし、必死にしゃべろうとするので発汗作用がすごいんです。それに、久々に声帯を使うので、話し終わった後は声がかすれます(笑)。
阿木 私もきょう、風邪気味でして。だから、途中からかすれるかもしれません(笑)。
西村 ハハハ。"かすれ声対談"ですね。
阿木 西村さんにお会いするにあたって、新しいエッセー集を読ませていただいたら、いきなり1ページ目に「無能な編集者と揉(も)め」なんて書いてあったのでドッキリ(笑)。エッセーの連載中は大丈夫だったんですか。
西村 今回は、ホントにしっかりした編集者だったので、安心でした(笑)。
阿木 西村さんはメモを取らない。下調べや後からの確認作業もなさらないとか。
西村 そうですね。調べることは一切しないですね。
阿木 子どもの頃から記憶力は抜群だったそうで。
西村 阿木さんが読んでくださった『東京者がたり』の場合、調べないことを前提に記憶だけで書こうって編集者と話して、一回も地図を見なかった。だから、絶対に間違いが多いはずです(笑)。
阿木 でも、エッセーなら記憶の"脳内散歩"で成り立ちますよね。
西村 その、きわめて個人的な彷徨(ほうこう)が狙いではあったんですが......。でも正直言うと、最近はその記憶力もかなり怪しくなってきています(笑)。
阿木 西村さんが芥川賞をお獲(と)りになった作品『苦役列車』の映画化に際して、作者としてその出来栄えが不本意で、猿芝居とまで酷評されていらっしゃいましたよね。雑誌の対談でも、監督とかなり突っ込んだ言い合いをされていましたが。
西村 僕は本心を率直に述べただけなんですが、もうちょっと言い方を柔らかくすべきだったかな、と。何もあんなケンカを売るようなことをしなくても、ねぇ。
阿木 でも、そんな自分のネガティブな発言が、映画の宣伝に貢献していることにもなる。まことに見上げた原作者だって、ご自分のことを......。ここまでおっしゃると一観客として、どれほどつまらないのか観てみたくなる(笑)。
西村 実はそれも狙いのうちだったんですが、まあ、あっちこっちで顰蹙(ひんしゆく)を買いましたねえ(笑)。でも本は売れました(笑)。
阿木 確か、監督さんと主演の森山未來さんは、関西のご出身ですよね。でも映画の主人公、ということは西村さんの"分身"の北町貫多は"野暮(やぼ)な江戸っ子"。それで台詞(せりふ)のイントネーションに微妙な違和感を覚えられたのかもしれませんね。そんなことが重なった結果、原作者の意図するものと違うと、お感じになったのではと推測するのですが......。

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