対談詳細

艶もたけなわ
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長塚圭史 劇作家・演出家・俳優

2015年12月 6日号

阿木燿子の艶もたけなわ 連載82

 俳優・長塚京三さんの息子で、自身も若くから芝居の世界に入った長塚圭史さん。劇団を作り、自ら脚本、演出を手掛けるとともに、俳優としても注目されています。プライベートでは、女優・常盤貴子さんと結婚。
 公私ともに順風満帆のようですが、新作の魅力とともに長塚さんのマルチな才能に阿木さんが迫ります。

 ◇僕は、彼女のコントロール下にあるんじゃないですか(笑)。
 ◇留学が一つの転機だとしたら、ご結婚はさらなるステップアップになった感じですね。
 ◇結婚して5年くらいたつんですけど、本当に相棒ができたと、思っています。


阿木 長塚さんにお会いするにあたって、これまで演出なさった作品をDVDで何作か観させていただきました。
長塚 それはどうもありがとうございます。
阿木 一気に観たこともあって、多少頭が混乱しておりますが(笑)。その中で私は『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』(以下、『アンチ』)に一番共感しました。いわゆるパラレルワールドですよね。過去、現在、未来が混在した不思議な世界で、それぞれの登場人物の人間性がジグソーパズルのように絡み合い、何層にも折り重なっていましたね。
長塚 僕にとって『アンチ』は特別な作品でした。それまでは事件を題材にして転がしていく手法でしたが、ここから「世界の見え方の違い」を意識するようになりましたね。
阿木 どういうことでしょうか。
長塚 同じものを見ていたとしても、自分がどう捉えているかは人それぞれ、バラバラじゃないですか。そのズレを僕は楽しんでいるところがあります。『アンチ』はそのことをかなり意識して作ったものでした。ところが、これでかなりお客さんが減りました(笑)。
阿木 えッ、どうして? すごく面白いのに。
長塚 お客さんの中には、刺激を求めてくる人たちもいるんですけど、やっぱり安心感、安定した笑いや理解できる物語を望んでいる方が結構多かったりして。だから『アンチ』をやったときには、お客さんたちは暗いと言ってサーッと(苦笑)。
阿木 私が拝見した中では『アンチ』が一番明るい作品だと思いましたが(笑)。
長塚 そう感じていただけたお客さんは少ないようです。暗い、難しい、わかりにくいって。でも、わかりやすい安心感のある芝居に僕は魅力を感じません。
阿木 わかりやすさを求め過ぎて、説明台詞(ぜりふ)が多いと、観るほうはシラけますよね。
長塚 舞台の上で俳優が発する台詞は「部分」であって、何か欠落している状態のほうがいい。観るお客さんに「実はこういうことじゃないかな」って補填(ほてん)するスペースができるからです。演じる側と観る側との関係がフィフティ・フィフティになったほうが演劇は伸びやかで豊かだと思うんです。
阿木 長塚さんは観客を信じていらっしゃるんですね。100人いれば100様の捉え方があっていい。その中の深いレベルで繋(つな)がっている「何か」を信じてらっしゃる、そういうことですね。
長塚 それを成立させるには、僕のセンスにもかかってきますね。
阿木 『アンチ』を発表なさったのは、ロンドン留学から帰国後ですよね。ロンドンにいらっしゃる間に、日本語が好きになられたとか?
長塚 行った理由は、ある種日本の演劇活動にちょっと疲れてしまったところがあったんです。留学中に井上ひさしさんの戯曲『父と暮せば』を改めて読んだら、すごくクリアに日本語が飛び込んできたんです。その後、三好十郎さんの『浮標(ぶい)』を送ってもらってむさぼるように読んだら、全ての言葉が輝いて見えた。
阿木 海外に行って、逆に日本の風土や言葉に敏感になることって、ありますよね。自身の原点を改めて感じるというか。

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