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艶もたけなわ
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クリス松村 タレント

2015年5月31日号

阿木燿子の艶もたけなわ  

 オネエ系タレントとして人気のクリス松村さん。しかし、クリスさんには"もう一つの顔"、「音(おん)"楽(らく)"家(か)」がある。音楽をこよなく愛し、芸能界きっての「アイドル論客」でもあるのだ。阿木さんは現代の音楽の状況から70年代アイドル論、この国の行く末まで話を展開させ、クリスさんの"硬派な素顔"を明らかにしてくれました。

  •  しっかり社会で生きて、夢も諦めない。今の人たちに足りないところはここ!
  •  "評論家的"な上から目線ではなく、アイドル全員に対する慈しみを感じます。
  •  詞の世界が狭くなってしまっている。「考えない社会」の表れだと思うんです。

阿木 クリスさんは、歌謡曲にお詳しいんですよね。きょうは、そんなお話からお伺いしたいな、と。
クリス 今の若い人の歌のほとんどは等身大、あるいはそれ以下になっていて、そこから何も"脱皮"しない感じですね。
阿木 そうですよね。「私」の物語に終始して、広がりがない感はありますよね。
クリス 最初から結論ありき。その傾向は東日本大震災以降、アイドルに限らず日本の音楽界すべてに言えます。
阿木 同感です。"励ましソング"が主流になってしまって。皆で頑張ろう、という歌ばかりになると......。私は歌の要素としてある種の毒があってほしいなと思うんです。お説ごもっともの歌ばかりでは、つまらないですよね。作り手にもうひと捻(ひね)りしてほしいなと、つい思ってしまって。
クリス おっしゃる通りですね。私は学生運動を知らない世代ですが、その中でさまざまな歌に出会って考えさせられたり、これって何だろうという疑問が10年後にわかったり、歌によってずいぶん成長もし、救われもしました。
阿木 クリスさんは、プロフィルに生年月日を公表していらっしゃらないのですが、そうですか、学生運動は知らない世代ですか(笑)。でも、70年代アイドルには精通なさっていらっしゃる。
クリス そうですね。海外から帰ってきたら「スモーキン・ブギ」((注1))が流行(はや)っていました(笑)。
阿木 逆算すれば、いいんですね。
クリス 逆算しないでください(笑)。
阿木 震災以降の傾向として、私もまったく同意見です。「ありがとう」「頑張ろう」「大丈夫」、それだけ入っていれば歌になるような今の風潮は、文化としての"歌"をひどくつまらないものにしていますよね。
クリス 先日、ラジオ番組で「卒業ソング」の特集を組んだんです。20曲を選びましたが、「卒業」という言葉が入っていないものばかりを集めました。
阿木 それって、クリスさんの今の歌に対するアンチテーゼ?
クリス そうです。70年代の歌は、苦しいとか悔しいという言葉が、悩みを抱えつつも卒業する人への励ましだったりしたんだけど、今の若い人たちは悩みとかを歌詞に入れると「暗い歌」って思うようで、そうじゃないってラジオで説明しました(笑)。人が生きるって、皆がハッピーになれるわけじゃないし、悔しいことも苦しいこともある。だから、あえて私は「卒業で良かったね」というのは一曲も選びませんでした。
阿木 タレント たとえば、「さくら」は〈さくら さくら やよいの空は......〉という伝統的な歌曲しかなかったわけですが、桜という言葉を使ってヒット曲が出ると、同じタイトルの曲が軒並み続く。
クリス 本当ですね。
阿木 または「風と共に去りぬ」だったり「罪と罰」など、平気で不朽の名作のタイトルを付けかねない。やはり、そこは踏ん張って、オリジナリティーを大事にしてほしいなと......。
クリス 本来、作詞家はコピーライターでもありますよね。たとえば阿木さんが「美・サイレント」((注2))や「禁猟区」((注3))などをお書きになりました。今の歌のタイトルを見て、「これってどういう意味?」と感じるものがありません。
阿木 「美・サイレント」は造語で、「Be silent」(静かに!の意味)の「Be」を漢字にしたんですが、そのあたりは作詞家の遊びの部分ですよね。
クリス はい。まったく初めて見るタイトルになりました。さらに、内容的にも歌詞に空白の部分を設けて、若い人だったら、彼らが想像しうるナマな言葉を組み込むだろうし、キレイな言葉だって入れれば入れられる。(山口)百恵さんは当然、キレイな言葉を入れていたんだろうけど、ホントは? と思うわけです。
阿木 世の中に対して、してやったりと密(ひそ)かにほくそ笑む。それが作詞家の醍醐味(だいごみ)かな、と。

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