対談詳細

艶もたけなわ
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 鴻上尚史 作家・演出家

2015年4月26日号

阿木燿子の艶もたけなわ


公演前の舞台稽古の終盤だったが、鴻上さんは疲れも見せず、歯切れのいい語り口で笑いの絶えない対談となりました。
笑いの中にも「演劇は"聴覚のメディア"」「(演劇は)皮膚感覚の大切さ」など、深い思慮がはっきり伝わってきました。抱腹絶倒の"鴻上ワールド"炸裂の対談、お楽しみください。

  •  映画は視覚のメディアですが、テレビと舞台は"聴覚のメディア"。
  •  日本の男性は、女性に成熟度を求めない。大人の女性の一人としては、とても残念(笑)。
  •  この時代に演劇が残っているのは、リアルに"生の空間"で出会うことに意味があること。

阿木 「ベター・ハーフ」の舞台稽古(げいこ)はもう始まっているんですか。

鴻上 はい。3週間ほどたちます。
阿木 まさに今、"産みの苦しみ"の真っ最中ですね。
鴻上 そうですね。でも、楽しいですね。
阿木 クリエーティブな苦しみって、喜びに転化しやすい。
鴻上 でも、舞台の上に出る側と、託す側とはちょっと違う。一歩引いている感じがします。
阿木 今回のお芝居、4人の男女の愛の物語で、その一人が性同一性障害のトランスジェンダー。現代的なエッセンスを織り交ぜて面白そうですね。
鴻上 これは中村中(あたる)さんという本当のトランスジェンダーの方が出演を了解してくれたのがきっかけになったんです。元々、作品自体は作ろうと思っていたのですが、役の中だけの世界で見せていても観客に対しても、説得力が薄い。それが今回、本当の方が演じてくれるということになり、インパクトがあるものを作れるということになったんです。
阿木 "彼女"ならではのキャスティングですね。私は中さんのファンで、年末のライブも観させていただいて。彼女の声には男性と女性が"棲(す)んで"いて、とても不思議。音域も広くて、天使のような声から、地獄から響くような声まで出せて。それを瞬時に切り替えられる。表現者としては強力な武器ですね。
鴻上 それ、稽古でやっていて、僕は低い声を"黒中村"、高い声は"白中村"と呼んでいますが、「天使」と「地獄」はいい言葉ですね。本人もすごく喜びますよ。
阿木 声といえば、鴻上さんは声に関するご著書を何冊も出されていらっしゃいますよね。音楽の仕事に携わる者としては、とても参考になりました。私もボイストレーニングを5~6年やっているんですが、私の先生は、深い声、大きな声、鼻に抜く声など、体のどこを使えばどんな声が出るかを教えてくれる。日本人はしゃべり方教室があるくらい、しゃべることには注意を払いますが、声そのものには意識が薄いですよね。
鴻上 本当にそうですね。ファッションや髪形に関心を寄せる人は多いけど、その10万分の1くらいしか声には気を使わない。髪形はやがて失ってしまうことがあるわけですが、声を失うことはあまりない。なのに、「魅力的な声って何だろう」と考えることをせずに一生を終える人が圧倒的に多い。非常にもったいないと思います。
阿木 ハリウッドの女優さんは発声のトレーニングを受けている人が多いとか。ハスキーな低音が求められるみたいですね。子どもっぽいのは評価が低い。その辺も文化の違いかもしれませんね。
鴻上 日本の場合、声の訓練をしないのもありますが、幼く見えるほうがウケるので、声が高いほうがいいようです。特に、アイドル業界はその傾向が強い。
阿木 本当にそうですね。
鴻上 今回の舞台に出演する真野恵里菜さんは、面白いですよ。「アイドルやって」って言うと、「は~い」と本当に高音の"アイドル声"になります。彼女の設定は、アイドルを夢見るデリヘル嬢なので「デリヘルやって」って言うと、「はい」と沈んだ声になります。アイドルの高めで幼い感じの声でないと、男は愛さない。男はバカだから女性がそうなってしまうんだという裏返しですかね。
阿木 日本の男性は、女性に成熟度を求めない。大人の女性の一人としては、とても残念(笑)。
鴻上 面白い話があります。日本にはゆるキャラやマスコットが溢(あふ)れていて、マスコットである以上、可愛くなければいけない風潮があります。

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