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原発事故に翻弄された14人描く 土井敏邦監督「福島は語る」公開

2019年3月17日号

 土井敏邦監督の「福島は語る」は、日本の原風景ともいうべき美しい自然のトップシーンに目を見張らされる。あれから8年、福島の苦難の日々がここに綴(つづ)られている。

 映画は、生活を根こそぎ奪われ、人生を翻弄(ほんろう)された14人の被災者に焦点を当てている。2時間50分と長尺ながら、そこで語られる彼らの体験や思いにぐいと引き込まれる。
 内容は、テーマごとに8章に分かれ、第1章の「避難」では、2人の幼児を抱えた若い妻が、夫とは新潟と福島とに別れ別れで暮らし、離婚寸前まで追いつめられている。その彼女の語りを通して、子を持つ福島の母親たちの苦労が思いやられる。
 たとえば「仮設住宅」の章では先の見えない空虚感、「悲憤」の章では補償の負い目を背負って生きるやりきれなさ、「学校」では転校した教え子がどうしたらいじめに遭わずにすむか苦慮する教師─。暮らしの中から被災後の困難を浮かび上がらせているのが特徴だ。
 その中でずしりときたのは「喪失」の章。石材工場を営んでいた父が、息子に工場を譲ったばかりに息子はボロボロになって亡くなってしまう話。一家は昼となく夜となく働いて立派な家を建て、さぁこれからだという矢先、原発事故で石まで汚染され、息子の希望を奪ってしまう。「こんな狂った人生を送るとは夢にも思わなかった」と、自らを責める父の苦渋にみちた表情が切ない。
 こういった人々の語りから「病めるフクシマ」という言葉がじわりと浮かんでくる。
 福島原発告訴団の武藤類子団長が登場する章では、「自分たちは理不尽な被害者なのに、黙っていていいの?」と問いかけ、沖縄で闘っている人の言葉をこう紹介する。
「国を相手にケンカしたって勝てない。でも、おれはやるんだ。それが尊厳なんだ」と。
 胸に響く。
(木下昌明)

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