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サッカーW杯 現地発リポート! 日本代表の光と影 「4年後が不安」

2018年7月15日号

 1勝もできずに惨敗したブラジルW杯から4年。サッカー日本代表は6月14日開幕のロシアW杯で「苦渋の時間稼ぎ」といわれる試合をくぐり抜け、2大会ぶりの16強入りを果たした。W杯の現地取材を続ける気鋭のスポーツライターが、西野ジャパンの真実に迫る。

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会で2大会ぶり3度目のベスト16入りを果たした日本代表「西野ジャパン」。このチームのカギを握っているのは、よくも悪くもベテランだ。
 代表選手23人の平均年齢は28・3歳。歴代チームの中で最も高い、まさに高齢チームである。W杯本大会に臨む最終メンバーの発表で、若手ばかり外れたことで、ベテラン重視は一層鮮明になった。
 微妙と目されていた本田圭佑(32)、岡崎慎司(32)は当選。30歳代の選手は彼らを合わせ、過去最多の8人を数える事態になった。「過去の実績や経験値を考慮した」と、西野朗監督は語ったが、その判断に、多くのサッカーファンから批判や異論が集まった。
 各国代表に目をやれば、最高齢はコスタリカの29・1歳。メキシコ(28・9歳)やアルゼンチン(28・7歳)も高い。日本の28・3歳は32チーム中、上から6番目。2014年ブラジルW杯に臨んだザッケローニ監督率いる「ザックジャパン」が26・7歳で、4年間で1・6歳増したことになる。
 ベテランを重視することの問題は、次に繋(つな)がらないことだ。過去の実績や経験値に頼れば、若手が積むべき経験を奪うことになる。4年後の代表チームは、自(おの)ずと経験値に乏しい集団になる。1人の選手が何度もW杯に出場することには、大きなデメリットも潜む。
 こうした見方に対し、長友佑都(31)は「年齢で物事を判断する人は、サッカーを知らない人」とツイッターで呟(つぶや)いている。
 しかし、サッカーは個人競技ではない。この話題の本質はバランス論だ。永遠に循環する日本代表という集団の話である。その時々の代表監督にも、その考え方は不足しがちだ。成績こそが、監督の評価の一番の対象だからだ。結果を欲しがれば、実績や経験値を重視したくなるのは当然だ。4年先を心配する監督は、よほど自制心に溢(あふ)れた人に限られる。
 逆説的に言えば、「ベテランを重視するなら結果を出せ」。西野監督は、結果を求めたくなる人選をした。
 本来、この問題を心配する立場にあるのは日本サッカー協会の側だ。田嶋幸三会長であり、強化責任者である関塚隆技術委員長である。西野監督だけに責任を問うわけにはいかない。

 ◇名のあるベテランにも遠慮なし

 西野氏が監督に就任したのは今年4月。協会が電撃的に解任したハリルホジッチ氏の後任として起用された。大会前に国内で準備されたテストマッチはわずか1試合。5月30日に行われたガーナ戦が最初で最後の試合だった。

 時間が全くない中での監督就任。計算できない新戦力を一から試しているヒマはないと判断したのだろう。ゴタゴタを抱えた代表チームを短期間で立て直すには、ベテランに頼るのが一番─。そうした考えに行き着いたとしても不思議ではない。脱ハリルジャパンを期待するファンは、「新生」日本代表を求めたが、西野監督にはそれに応えるだけの余裕がなかった。
 もっとも、西野監督はハリルホジッチ前監督時代の技術委員長だ。日本サッカー界全体の利益を追求していた人物である。にもかかわらず、監督に就任するや、メンバー選考では実績や経験値を重視する策を取った。
 とはいえ、ベテランを重視する西野監督にすべての人が批判的だったかといえば、そうでもない。知名度で上回るのは若手よりベテランだ。W杯に出場し活躍したことがある選手。スポーツニュースで毎週、活躍が報じられる。サッカーに特段、詳しくない人でも、彼らの存在なら知っている。
 サッカーファンと一口に言っても、普段からJリーグをしっかり観ている人もいれば、代表チームの試合しか観ない人もいる。中には、4年に1度のW杯しか観ない人もいる。知名度の高いお馴染(なじ)みの選手が出場しているかどうかは、観戦の動機として重要だ。本田のいない日本代表は、そうした意味で魅力的には映らないのだ。もちろん、それを繰り返していると業界は先細りになる。W杯は新たなスター選手を誕生させる機会でもある。
 こうして迎えたロシアW杯1次リーグH組第1戦、日本対コロンビア(2―1)。日本は、槍玉(やりだま)にあがっていたベテランがさっそく「見せ場」を作った。
 相手は1次リーグ最強チーム。試合前から苦戦が予想されたが、前半開始3分、日本はペナルティーエリア内での相手ハンドでPKを獲得。さらに、反則した選手はレッドカードを翳(かざ)され、退場処分になった。日本はこのPKを香川真司(29)が決め先制する。
 番狂わせのチャンスが巡ってきた。だが、自力に勝るコロンビアはジワジワと反撃を開始。浮いたボールの処理を長友が焦り、クリアボールを自陣ゴール前に高々と蹴り上げてしまった。
 これはマズいと、落下点に駆けつけたのはチーム2番目の年長者で主将の長谷部誠(34)。しかし彼は、相手選手と衝突し、相手に直接FKを与えてしまう。
 チーム最年長、川島永嗣(35)の見せ場がやってきた。FKのボールは緩く、一瞬、これなら楽々止められるだろうと誰もが思った直後だった。川島はシュートを掴(つか)み損ね、まさかの失点を許してしまった。
 長友、長谷部、川島。ベテラン3人のミスが重なり、同点に追いつかれてしまった。若手のミスは「ドンマイ」で許されるかもしれないが、ベテランには掛ける言葉がない。ミスは許されないのだ。日本はこの後、大迫勇也(28)のゴールで勝利したが、もしこの初戦で日本が引き分けに終わっていたら、チームは崩壊していた可能性がある。
 第2戦のセネガル戦(2―2)では一転、長友が活躍した。前半34分、乾貴士(30)の同点ゴールを陰で演出している。
 長友は、柴崎岳(26)の対角線キックを右足でトラップすると、ボールは長友と彼を囲む相手の守備者2人との中間点に落ちた。このルーズボールを誰がモノにするか。記者席の目の前で起きたシーンだったので目を凝らせば、競り合いの勝者は驚いたことに長友自身だった。誰よりも早くボールに到達。その敏捷(びんしょう)さに相手が呆気(あっけ)にとられている間に、長友からパスを受けた乾の同点シュートが決まった。まさに年齢を感じさせない動きで、長友はセネガルの大男を翻弄(ほんろう)した。
 この試合、日本はその後、相手に勝ち越しゴールを許す。敗色が漂い始めていた。このピンチを救ったのが本田だった。後半27分、交代出場するや、その6分後、乾が折り返したボールを本田が左足で蹴り込み、日本に2―2とする同点ゴールをもたらしたのだった。
 本田は第1戦も先発を外れていた。登場したのは後半25分。W杯本大会は前回、前々回大会に続く3度目の出場になるが、2試合続けて、よく言えばスーパーサブ的な扱い、悪く言えば格落ちの扱いを受けていた。
 西野監督の良いところは、名のあるベテラン選手にも遠慮していないことだ。

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