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ビニールハウスプール育ちの競泳エース松田が涙の引退会見

2016年10月 2日号

 リオ五輪競泳800メートルリレーで銅メダルを獲得した松田丈志選手(32)=セガサミー=が引退を発表した。2004年アテネ五輪から4大会連続で出場し、北京、ロンドン大会で200メートルバタフライ銅、ロンドン大会では400メートルメドレーリレーでも銀と4個のメダルに輝いた。4歳から28年間、地元宮崎県延岡市にある「ビニールハウス」のプールで、女性コーチと二人三脚で歩んだ異色の競技人生。過酷な環境を乗り越えて世界に飛び出した経験を生かして、今後は後進の指導に当たる。
 4歳で水泳を始めた松田を指導したのは、久世由美子コーチ(69)。才能を見抜いた久世コーチは肉体や技術面だけではなく、精神面も鍛え抜いた。夏は暑く、冬は寒いプールで練習に励み、練習メニューやアドバイスを書いた「久世ノート」は250冊を超えた。施設や情報に乏しい地方を拠点にしながら世界と戦う精神力は、あいさつや返事の仕方など礼儀作法から教え込んだことで培われた。
 その人間性は選手や関係者の信頼を受け、ロンドン大会では競泳日本代表の主将を務めた。メドレーリレーの前に「(北島)康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」とメンバーを鼓舞したエピソードは、苦労を重ねてきた松田だからこそのことだろう。リオ大会でも、メンバーの精神的支柱としてアドバイスを送っていた。
 久世コーチについて、松田は「いい環境も情報もない中で、コーチと一緒に頑張ってきたことは僕の誇り。一点の悔いもない」と話し、涙を流した。久世コーチも涙交じりで「常に夢を持たせてくれる青年と出会えてよかった」。2人の信頼が、個性と信念につながった。今後について松田は「これからも元気でパワフルであってほしい。水泳の普及、強化など一緒にやっていけることもある」と、第一線を退いても二人三脚を続けていく考えだ。
(水木圭)

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