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大人びた表情と歌唱力の12歳 美空ひばり秘蔵フィルム発見

2016年6月26日号

 昭和の大歌手、美空ひばり(1937~89)の散逸していた貴重な映像が「神戸映画資料館」(神戸市長田区)で見つかった。
 1950(昭和25)年に和歌山県の映画プロダクション・南海映画が製作したモノクロ映画「南海の情火」(高木孝一監督)のワンシーンだ。
 主人公の大学教授(原保美)が、不倫相手の女性と和歌山県太地町で鯨祭りを楽しむ場面。のど自慢大会の舞台で歌を披露しているのが、当時12歳の美空ひばり。登場は映画の初めの方で、わずか40秒ほど。三遊亭歌笑らとともに、特別出演の一人として出演した美空は、直前にリリースされた「涙の紅バラ」を歌うが台詞(せりふ)はない。
 初めて主役で登場した前年公開の映画「悲しき口笛」では、シルクハットとステッキのお茶目(ちやめ)な姿がよく知られたが、「南海の情火」では子どもとは思えない落ち着き払った表情で大人顔負けの歌唱力を発揮しており、スター街道を駆け上がり始めた天才歌手の片鱗(へんりん)がうかがえる。
 美空さんの長男で、「ひばりプロダクション」(東京都)の加藤和也社長(44)は「主演女優さんに『つまらないから帰りましょうよ』なんて言われてしまう、祭りののど自慢での端役。既に主役も演じており、次の主役映画も決まっていた中で、敢(あ)えてあの役を引き受けた母は、あの歳にして初心に返ることの重要さを知っていたのだと思いますね」と感慨深げだ。
 映像の存在は、9年前に開館した同資料館が保管する2万本ものフィルムを神戸大などが精査する過程で判明した。同資料館の安井喜雄館長は「『南海の情火』は名作というわけではなく、数多く作られた2本立て用の作品でしょう。当時は占領時代ですが、短期間で消滅した映画会社が多く、南海映画がその後どうなったかもわからない」という。
 不世出の大歌手は、憂いを含んだような眼差(まなざ)しの先に何を見ていたのか。
(粟野仁雄)

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