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NHK朝ドラはなぜ「面白い」のか?

2016年4月24日号

「マッサン」はニッカ、「あさが来た」は大同生命...ウケる「企業モノ」戦略

 ◇『暮しの手帖』がモデル「とと姉ちゃん」もヒットの兆し

 テレビ離れが指摘される時代に、NHKの「朝ドラ」が快進撃を続けている。前作「あさが来た」が今世紀最高の平均視聴率を得て終わると、新作「とと姉ちゃん」も序盤から高視聴率。好調の理由を探ると、両作品を含む最近のヒット作には共通点があった―。

 NHKの連続テレビ小説(通称・朝ドラ)が、このところ絶好調である。
 4月2日に終了した「あさが来た」の平均視聴率は23・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。21世紀に入ってからの朝ドラで最高を記録した。
 左ページの表は、朝ドラが放送開始時間を15分繰り上げ、8時スタートとなってからの平均視聴率だ。目下、各テレビ局の主戦場であるプライムタイム(午後7~11時)に20%超えのドラマが一本もないことを考えれば、まさに朝ドラの"独り勝ち"状態といえる。
 4月4日からは後続作品「とと姉ちゃん」に衣替えしたが、視聴者離れは起きず、初回の視聴率は22・6%。依然として高い支持が続いている。元毎日放送プロデューサーで同志社女子大情報メディア学科教授の影山貴彦氏は、高畑充希がヒロイン・小橋常子を演じる新作の魅力を語る。
「物語は序盤で、常子はまだ子役が演じている段階ですが、それでも見応えがあります。まず西島秀俊さんが演じた常子の父親に引かれました。決して子供を怒らない。それどころか子供に敬語を使い、子供たちを自分と対等に扱う。面白い教育法だと思いました。その西島さんが第1週の最後で亡くなり、残念がっている視聴者もいることでしょう」
 朝ドラを"時報代わり"と呼ぶ人もいるだけに、視聴率が高いのは当たり前と思う向きもあるだろうが、それは違う。昭和期には平均視聴率が50%を超えた「おしん」のような怪物作品もあったが、平成に入ると人気が下降。2009年度下期の「ウェルかめ」の平均は13・5%にすぎなかった。「あさが来た」とは10%も開きがあるのだ。
 それでなくてもテレビ離れが指摘される時代。なぜ、朝ドラは復権を果たしたのだろう?
 日本テレビOBで上智大文学部教授の水島宏明氏は「最近は実在した人物を描くセミドキュメンタリー風の作品が目立ちます。これが人気浮上の理由の一つでしょう」と読み解く。
 振り返ると、「マッサン」(14年度下期)はニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏とリタ夫人をモチーフにした物語だった。「あさが来た」の主人公・白岡あさ(波瑠)のモデルも大同生命保険創業者の一人である広岡浅子さんだ。
「実話が下地にあったほうが物語は面白くなります。説得力が増しますから」(水島氏)
「とと姉ちゃん」の主人公にもモデルがいる。終戦直後に雑誌『暮しの手帖』を発刊し、13年に93歳で亡くなる直前まで同誌の経営と編集に携わっていた大橋鎭子(しずこ)さんだ。
「実在した人物を描く上、人の選び方もうまい。今回は、戦後の主婦たちに寄り添い続けた雑誌の創刊者です。昭和世代なら大抵の人が知っている雑誌ですから、『どんな人が作ったのだろう』と興味が湧きますよ」(水島氏)
 昭和期にも、実在の人物を主人公のモデルにしたセミドキュメンタリー風の朝ドラはあった。「マー姉ちゃん」(1979年上期)は漫画家・長谷川町子さんの姉・毬子(まりこ)さんを主人公のモデルにした。
 平成に入った後も同じ。「ゲゲゲの女房」(2010年上期)の主人公のモデルは、漫画家・水木しげるさんの妻・武良布枝(むらぬのえ)さんだった。
 だが、以前のセミドキュメンタリーと最近の朝ドラは決定的に違う。最近の朝ドラのモデルは企業人、あるいは企業関係者なのだ。
 これについて、元NHKマンで現在もフリーで活躍する制作者は「昭和期だったら考えられない」と感慨深げ。なにしろ、かつてNHKは歌番組で山口百恵に「プレイバックPart2」を歌わせた際、歌詞の「真紅なポルシェ」を「真紅なクルマ」に替えさせた逸話があるくらい堅かった。

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