農民詩人の木村迪夫(みちお)の生き方を描いた原村政樹監督のドキュメンタリー「無音の叫び声」がいい。
木村は1935(昭和10)年、現在の山形県上山市牧野(まぎの)に小作人の長男として生まれ、農業の傍ら15歳で詩を書き始め、16冊の詩集を出している。
彼は幼い時、父と叔父を戦争で亡くし、7人家族の大黒柱として働かなければならなかった。この地には生活綴方(つづりかた)で有名な"山びこ学校"と呼ばれた中学校があった。彼は農業高校の定時制に入って、その影響を受け、皆で『雑木林』という詩の雑誌を出す。
彼の最初の詩は「百姓」として生きていく決意を表明したもの。ここから詩人としての彼の世界がひらけていく。
映画は蔵王(ざおう)を背に広がる田園地帯で、老いてなお村人と一緒に用水の整備作業に励む木村を捉えるところから始まり、彼の若き日々を当時の映像資料や写真で浮かび上がらせる。村の青年団での活動、結婚、出稼ぎやゴミの収集業......。その姿を通して日本の戦後史もあぶりだされてくる。
木村は農村に文化を持ち込んで活性化を図ろうと、「三里塚闘争」の映画で知られる小川紳介を招き、農民の暮らしを捉えてほしいと要望する。そこで小川は、三里塚の農民がなぜあれだけ闘えたのか、その内面を掘り起こしたいと招きに応じ、大作「ニッポン国 古屋敷村」を完成させた。
木村は父と叔父を慰霊しようと中国とウェーキ島の戦地跡を訪ねている。ウェーキでは兵士の遺骨786体を掘り起こし、荼毘(だび)に付してくる。ほとんどが「餓死だった」と。炎に包まれた無数のしゃれこうべの写真には圧倒される。また、父の形見の勲章を10個机に並べて「一生を棒にふって、こんなものもらってつまらんなあ」と嘆く。
画面上に時折、彼の力強い詩が流れ、それを「たそがれ清兵衛」の田中泯(みん)が朗読していて味わい深い。大地とともに生きる、声なき民の"叫び"が聴こえてくる。
(木下昌明)
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