◇前川喜平・元文科省事務次官 「霞が関より歌舞伎町で学んだ」
◇寺脇研・元文科省大臣官房審議官 「それでも『ゆとり教育』は正しかった」
◇鎌滝えり・女優 「〝出会い〞が不登校の私を救った」
一本の映画が話題を呼んでいる。いじめ、虐待に追い込まれる子どもたちの姿をリアルに描いた「子どもたちをよろしく」。企画したのは、文部科学省の元キャリア官僚、前川喜平と寺脇研の両氏。誰しもが認める〝反逆の官僚〟である。同時に、教育行政に深く関わってきた。今、子どもたちに何が起きているのか。主演女優の鎌滝えりさんを交えた鼎談をお届けする。
(構成/山家圭)
前川 安倍晋三首相の教育政策を見ていると、彼の中に、祖父・岸信介元首相の全体主義的な思想や体質が隔世遺伝しているように思います。日本の教育政策は今、「遅れてきた逆コース」を歩んでいると言っていい。小中学校の現場では今、文部科学省が学習指導要領で定めた「標準授業時数」を守らなければいけないという強迫観念にかられています。学習指導要領なんて本来、大ざっぱな基準にすぎないのに、です。そして、画一的な詰め込み教育も復活している。
私は、「学び」とは、生涯を通じて主体的に続けるものだと思っています。そのため学校教育では、「知識や知恵を自ら獲得していく力」をつけさせることが肝要です。「自ら学び、自ら考える力」ですね。
寺脇 散々バッシングされた「ゆとり教育」(*)だって、それを目指したわけです。知識の詰め込みを少し減らして、自ら考える力を身につけるための学習時間を持ちましょうというのがゆとり教育ですよ。
また同時に、助け合う力を身につけることも狙っていた。つまり、自ら調べて考え、協調して課題にあたる力を養成しようとしたのです。なぜかといえば、今の子どもたちが大人になる頃には、外国人との共生をはじめ、自然災害、地球温暖化、原発......と、みんなで協調して取り組まないと解決できない困難な課題が待ち受けているからです。新自由主義の風潮のもと、長らく生産性や競争が重視されてきたけど、もうそれでは人類社会は行き詰まるのが目に見えている。今後は、みんなが調和しながら公共を作っていくことが不可欠になる。ゆとり教育では、そういう社会の変化に応じられる力を身につけようとしたわけです。
前川 それが本質ですね。
寺脇 そう。で、子どもが他者と共生するには、「自己肯定感」を持つことが必要なんです。自己肯定感を欠いている子はストレスを抱えていたりしていて、他者とうまくやっていけない。ストレスを弱い者にぶつけて、いじめだってする。なのに、知識の多寡を問うような、これまでの教育では、成績のいい子以外は自己肯定感なんて持ちようがない。そこでゆとり教育では、「好きなことを見つけて、その力を伸ばしていけばいいんだ」とメッセージを発したわけだね。しかし、前川さんが言ったように今、詰め込み型へ揺り戻しが起こっている。
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