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昭和、平成、そして令和へ 歴史の中で果たす役割

2019年5月19日号

 ◇新たな議論はここから始まる!  

◇天皇陛下即位  

令和の天皇陛下の即位を注視しながら、現代史研究の第一人者が天皇制の歴史と未来を論じる大反響連載。天皇という存在は、その時代の要請に応えつつ、歴史的な役割をも継承すると捉える保阪氏は、新天皇が国民とどんな関係をつくると見ているのか?

 時代は令和となった。昭和、平成、そして令和と続くわけだが、どのような時代になるのかは、まだ予測はつかない。今回はこれまでのように崩御による改元ではないために、社会全体に落ち着きのある形での移行となった。
 新天皇は現在59歳である。即位時の年齢としては歴代天皇と比べても高齢である。近現代史で見ると、孝明天皇と明治天皇はいずれも14歳であった。大正天皇は33歳であり、昭和天皇は25歳であった。摂政への就任時には20歳であったから、近代の4人の天皇はいずれも若いと言えた。少年、青年期での即位である。大正天皇は33歳であったが、年齢的に当時は働き盛りであったとはいえ、明治天皇の陰に隠れた存在であった。このような年齢と目立たない存在であることは、必然的に天皇を誰が動かし得るのかといった問題を内在していた。
 この4人の天皇に共通するのは、明治天皇という元号が被(かぶ)せられた天皇イメージと、睦仁(むつひと)天皇という個人の性格や考え方との間に落差があるということであった。確かに明治天皇は日本を短期間に一等国に持っていったと評され、それ故に「大帝」とも語られてきた。崩御した時には、日本のメディアだけでなく、イギリスなどのメディアもその存在を「名君主」と讃(たた)えた。
 しかし睦仁天皇は、少年期から青年期、そして壮年期と表面上の言動が変化している。少年期には怒りの感情などをよく表していたというのだが、次第に慎重で、寡黙な性格を表に出すようになったというのである。天皇の性格はどういう形が望ましいのか、自身で学んでいったように思われる。大正天皇にしても、元号が被せられた場合と嘉仁(よしひと)天皇との間には、開きがあった。
 それは昭和天皇もまたとかく「軍事」と共に語られるが、裕仁(ひろひと)天皇はそのようなイメージとは、必ずしも一体ではない。むしろその個人的性格を見ていけば、非軍事を希求しているのに、そのような時代ではなかったという不運が感じられる。

 ◇元号「令和」と徳仁天皇の間の一体感

 こういう落差、あるいは亀裂というのは、時代が天皇に何を求めたかという要因もあるだろうが、即位時の年齢も大いに関係を持つのではないかと、私には思われる。

 その見方を踏まえるならば、平成の天皇は即位時には56歳である上に、時代も戦後社会の価値観、規範が固まっていて、天皇自身がその枠組みに納得しているが故に、平成の天皇・明仁(あきひと)天皇との間には亀裂がなかったように思われるのである。
 このことは日本社会も、そして何よりも天皇自身にとっても良かったように受け止めることが可能であり、天皇像も明確になる。後世そのように語られるのではないだろうか。
 令和の時代の天皇は即位時には59歳である。社会的には一つの仕事を終えた年齢である。そのことは大きな利点になるのではないだろうか。つまり平成の天皇と同じように元号に被せられたイメージと徳仁(なるひと)天皇の間に一体感が生み出されるであろう。そのことは取りも直さず〈歴史〉と〈時代〉の両面に配慮できるという意味になる。そのことについて考えてみる必要がある。
 令和という時代はどのような時代になるのだろうか。それはむろん天皇の意思で決まるわけではない。しかし天皇の動きが何らかの意味を持って時代に影響を与えることはよくあることだ。平成の天皇は戦争犠牲者の追悼と慰霊を繰り返し、平成という社会に戦争の後始末の重要性を教えた。災害の見舞いを繰り返すことで、被災者を慰めるとはどのようなことかを国民に教えたのである。
 天皇が作る時代というのはそういう意味である。率先して国民の前に姿を現すことで、そこに天皇と国民の回路を作ることが可能になった。これが大きな意味を持つのは、国民との間に意思の交流や相互の認識が確認されるからである。そのことによって、時代が天皇を作り、天皇が時代を作るという関係を確認できるのであった。
 そういう関係を作るのは、少年期、青年期のような年齢で即位した天皇では、まだ十分にできることではない。この年齢で即位する理由は、先帝が短命であり、皇子、皇女も幼少時に亡くなり、長じる者が少なかったというのが理由であろう。加えて国策としては軍事主導体制の下で、天皇自身が少年期、そして幼年期であれば、そういう体制への予備知識を持たないために政治、軍事の指導者が自在に動かし得たとは言えるであろう。
 この点が明治、大正の特徴であり、昭和の初期の特徴であった。天皇はまだ幼いが故に自動的に全てを政治、軍事の指導者に一任して時代を生きてきたのであった。

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