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高村薫 政治の嘘 見逃すまい 沖縄と首相 ゴルフ

2019年1月 6日号

 平成最後の年の瀬、沖縄県名護市の辺野古沖に建設される在日米軍施設の埋め立て工事は、ついに土砂の投入が始まった。ひとたび土砂が入った海は、もう元に戻せない。そう、辺野古の基地建設はこれで既成事実になったということである。だからだろう、その翌日、安倍首相はプライベートで趣味のゴルフを楽しむ余裕を見せた。

 埋め立て工事現場で喉をからして抗議の声を上げる住民たちと、嬉々(きき)としてクラブを振る首相と―。基地反対の声が必ずしも地元名護市の多数派ではないとしても、このなんとも言えない政治の不実と、地域社会の分断の光景に、沖縄に特段の縁はない一物書きが悄然(しょうぜん)となる。ゴルフを楽しむ首相の笑顔に、息をするのもいやな、胸がふさがれるような感じを覚える。いまという時代のありように全身が嫌悪を訴える、この抜き差しならない空気はいったい何なのか、同時代を生きる日本人として、一つでも二つでも言葉を探さずにはいられない。

 私たちは今日も忙しくスマホを覗(のぞ)き、ひっきりなしに新しい情報に接して生きている。その一方、日々ネット配信される大量のニュースに眼(め)を留めはしても、読むのは見出しだけであったり、まとめ記事であったりで、新聞の社説や月刊誌などを開く時間も機会もない。そして翌日には、また新たなニュースに押しやられて忘れてしまう。
 先の戦争はすでに遠くなり、長い平和と繁栄の末に迎えた21世紀の日本は、私たち生活者がそうして日々多くのニュースを心ならずも看過し、記憶の層の下に埋もれるままにしてきた上に立っている。
 しかも、私たちが等閑(なおざり)にした諸問題のなかには、過ぎ去るどころか深く根を張って、国の基盤を侵食し続けているものがいくつもある。たとえば、モリ・カケ問題での首相による権力の私物化や財務省の公文書改ざんは、まさに議会制民主主義の完全否定であるし、防衛省の日報隠蔽(いんぺい)は文民統制の死である。
 またあるいは、いまだに汚染水が止まらず、汚染土などの最終処分方法も決まらず、溶け落ちた核燃料の回収方法に至っては白紙という福島第1原発も然(しか)り。その事故処理費用を約22兆円とした政府の試算は、公の場で国民に向かってでたらめな数字を並べることが常態化している国の姿を如実に物語っている。
 2018年成立した働き方改革関連法で、裁量労働制拡大の根拠として厚生労働省が国会に提示したいい加減なデータも然り。またさらに、改正入管難民法は、審議に必要なデータの提出そのものがない白紙委任の採決だったし、17年の組織犯罪処罰法の改正では、法案の趣旨を理解していない大臣が平然と答弁に立った。こんな国に、私たちは暮らしている。
 さまざまな出来事が報じられては忘れられ、また報じられる。そのつど気になりながら、また忘れる。それが繰り返されるうちに、始まりは何だったのか、折々に何をどうすべきだったのか、もはや誰も解きほぐせない混沌(こんとん)になっている。そう、沖縄である。

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