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寺島実郎「高齢者」革命宣言 安倍政治に騙されない! 100歳人生・本当の処方箋

2018年10月14日号

倉重篤郎のサンデー時評 

 ◇知の再武装をせよ! 

団塊世代の「知のテーマセッター」寺島実郎氏が、高齢者が社会の変革者になる道を提言。安倍1強がもたらす政治的行き詰まりに対する一つの答えとして、高齢者を中核とする市民参画型の政治を主張、そのために「100歳人生」を生き抜く「知の再武装」を呼びかける。

 安倍晋三政権の3期目は、いずれ行き詰まるだろう。
 政策的レガシーもなければ、政局的にも参院選を乗り切るのが難しい、というのが前号(10月7日号)の自民党OBらの指摘であった。さもあらん。だが、それに代わる政治勢力は一体どこから出てくるのだろうか。
 田中秀征氏がその前の号(9月30日号)で予言したのは、自民党の中から保守本流勢力の一部が安倍氏ら自民党主流勢力と袂(たもと)を分かち野党と連携する1993年方式のダイナミックな政界再編であった。今の小選挙区制下では、政権党からの離党という行為はなかなかハードルが高いだろうが、それだけ自民党内に政策的に相容(い)れない根源的な亀裂が入っているとの明察は深く心に留めおきたい。
 もう一人、注目すべき論考を立て続けに発表している人物がいる。寺島実郎・日本総研会長(多摩大学長)である。
 71歳の寺島氏は『シルバー・デモクラシー』(岩波新書・2017年1月)で、高齢者が4000万人を占める異次元の高齢化社会の到来を見据え、その介護、医療費の高額化から社会に負担を与える存在としてではなく、社会に貢献するシルバーのあり方を模索、『ジェロントロジー宣言』(NHK出版新書)では、高齢者は知の再武装をして食と農、高度観光人材やNGOなどで社会参画すべし、と具体的提言をしている。
 65歳以上の高齢者人口は近い将来4割になる。有権者人口比で言えば5割、さらに、その投票率の高さから有効投票数の中では6割の決定力を持つ世代だ。その政治的プレゼンスに着目したのが寺島氏だ。この世代は団塊世代を中心に、戦後の混乱期に幼少期を過ごし、大学闘争を経験し、高度成長と共に企業戦士になり、そして今リタイアを迎えて、次なる自分探しをしている。80歳でもまだ7割が健常者だが、彼らが活躍する社会的受け皿がないため、しかるべき社会活動、貢献をする意思と能力を持て余しているのが現実だ。
 彼らが社会参画できるプラットフォームを多元的に作る。そして、彼らの社会貢献によって日本の世直しを実現する。それが目下の最大の課題である。というのが寺島氏の宣言である。
 それは高齢者をお荷物扱いせず、社会の改革者にしようという、ある意味革命的な発想の転換でもある。社会的に疎外されている層であるがゆえに、社会変革の担い手になりうる。それはマルクスの共産党宣言にも通じる考え方だ。
 多分、そこには安倍政治に代わる政治勢力再結集を睨(にら)んだ寺島氏の戦略もあるに違いない。それはそれとして、虚心に問いたい。「人生100歳時代」に我々はどう生きるべきなのか。寺島氏が求める知の再武装とは何なのか。蔵書4万冊以上を所蔵する東京・九段の「寺島文庫」に寺島氏を訪ねた。
 まずは、今回の自民党総裁選を総括してください。
「重要なのは、自民党が(総裁を)交代させられなかったということだ。大きな禍根を残すだろう」
 安倍氏を交代させるべきだった?
「過去に自民党は、えっ、と驚くほどに融通無碍(むげ)にトップの顔と政策を豹変(ひょうへん)させてきた。今回、その豹変力が働かなかった。これが大きい。そのツケが来年参院選にくるかもしれない」
 そこまで安倍政治に限界が来ていた?
「金融政策に過剰に政治が介入し、異次元緩和と公的資金投入で株価引き上げに執着、健全な市場経済を大きく歪(ゆが)めてしまった。その結果、国際金融の世界でジャパンリスクが喧伝(けんでん)され始めた。日本が緩和の出口に向かった時に世界金融が受ける打撃が懸念されている」
「外交・安保も、集団的自衛権行使の一部容認によって米国との軍事一体化を進めたが、トランプ政権の誕生でとても相互信頼に基づく同盟関係とは言えず、むしろ米国の愚かな戦争に巻き込まれるリスクが増大している」
「世界でどう生きていくのか、自らの国家戦略について政権の主体的構想力が欠如しているために、朝鮮半島の雪解けでも、ロシアとの領土問題でも、資金提供役を期待されるだけの存在になり下がっている」
「政治手法も問題だ。代議制民主主義で選ばれた首相として、権限行使でも国民への目線でも、直接国民に選ばれた大統領と違う謙虚さとバランスが必要なのに、それを失っている。"忖度(そんたく)官僚"が公文書を改ざん、国会で偽証してまで首相を守ろうとした」

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