政治・社会詳細

イチオシ
loading...

「大阪震度6弱」膨らむ不安 「地震予知」はもう無理だ! 防災力が命を分ける

2018年7月 8日号

▼地震学者が警告!「次の大地震」を煽る人にダマされるな

▼通勤電車の「長時間缶詰め」「運転再開の遅れ」は防げる!  

大阪府北部が観測史上初となる震度6弱の地震に襲われた。小学生を含む5人が犠牲となり、多くの人が家屋や病院の損壊、電車の運休による苦痛をこうむった。大地震は日本列島のどこで起きてもおかしくないと改めて肝に銘じよう。今回の地震で教訓にすべきことは何か。

 地震が発生したのは6月18日午前7時58分。震源に近い大阪府高槻市、枚方市、茨木市、箕面市、大阪市北区で震度6弱を観測した。消防庁のまとめによると、ブロック塀の崩落や家具の転倒などにより5人が死亡、406人が重軽傷を負った(22日午後6時現在、以下同じ)。
 一部の地震の専門家らは発生直後から、「南海トラフ巨大地震との関連は」とか「房総沖スロースリップ現象は」などと、"来るべき次の大地震"を論じている。それも無理はないように思える。政府の地震に関する最高権威機関である「地震調査研究推進本部」(地震本部)が恐ろしい予測を公表しているからだ。
 例えば、静岡県から宮崎県の太平洋沖(南海トラフ)を震源域とするマグニチュード(M)8~9クラスの巨大地震について、「今後30年以内の発生確率は70~80%」としている。だが、地震学者で東大名誉教授のロバート・ゲラー氏は、日本政府の「地震予知」を痛烈に批判する。
「政府や"御用地震学者"は表向き、『これまでに起きた地震の発生頻度が分かれば、再び発生する確率が分かる』と言い続けています。地震には周期性があるという考えです。しかし、東日本大震災も熊本地震も直前予知はできず、長期予測も外しました」
 東日本大震災前、地震本部が公表していた資料には、東北地方の太平洋沖に複数の細かい震源域が想定されていた。2011年3月の三陸沖から茨城県沖までの広範囲を震源域にした巨大地震は、「想定外」だったわけだ。熊本地震を引き起こした活断層も、地震発生前は「今後30年以内にM7程度の地震が発生する確率は0~0・9%」と公表されていた。
「周期説は明らかに間違っています。政府は確率を算出する論理を世界の権威ある学術雑誌で明らかにしておらず、客観的な検証はできません。日本ではせいぜい1500年分しか古文書がないため、過去の発生頻度も分からないことが多い」

 ◇耐震性の高いまちづくりが先決

 ゲラー氏によれば、地震学者の大半は、地震の直前予知はもちろん、長期予測もできないと分かっている。しかし、研究費を獲得するため、予知や予測ができるかのように振る舞っているという。では、真実は何か。

「東北地方太平洋沖や南海トラフなど、地球を覆うプレート(岩板)が別のプレートに沈み込むところでは、大きな地震が起きる。ただ、その危険性はどこの沈み込み帯でも同程度と、暫定的に考えた方がいい。日本中のあるところで大地震が起きる確率が特に高く、別のところでは低いと考えるべき根拠は何もありません」
 センセーショナルなメディアは、地震学を専門としない学者らによる「今後数カ月以内」、あるいは発生日まで特定した地震予知なるものを取り上げてきた。ゲラー氏は「デタラメ民間予言」と切り捨てる。
「自分の住む地方が予知の対象でなければ安全だと誤解しないでほしい。日本列島ではどこでも大地震が起きる恐れがあると考えるべきです。大事なのは耐震性の高いまちづくりを進めていくことなのです」
 では、被災地の被害状況に話を進めよう。立命館大の高橋学教授(災害リスクマネージメント)によれば、今回の地震規模はM6・1とさほど大きくはなかったが、揺れが大きかった。地盤と関係があるという。
「被災地の茨木市や高槻市などの一帯は約7400年前まで海の底だったため、プリンのように軟らかい粘土でできています。地盤の悪さが揺れを大きくした。さらに高度成長期以後に人口が比較的密集したこと、それに大阪近辺の自治体は財政が非常に厳しいことが、ブロック塀や水道管の破損といった被害を大きくしたと考えられます」
 厚生労働省の資料によれば、水道管の法定耐用年数は40年。高度成長期に急ピッチで整備されたが、更新が間に合っていないため、全国的に法定耐用年数を超えた水道管の比率(老朽化率)は上昇する一方だ。全国平均では2006年度には6%だったが、15年には13・6%に跳ね上がった。
 都道府県別では大阪府が全国ワーストの28・3%。東京都の12・4%、愛知県の14・9%よりかなり悪い(15年度末現在)。今回の地震では、高槻市などで水道管が破裂して周囲が水浸しになっている。
「財政が潤沢な名古屋市には民家のブロック塀を撤去する人向けに助成制度がありますが、大阪市にはありません」(高橋氏)
 大阪市の吉村洋文市長は6月22日、助成制度の創設を表明したばかりだ。今回の地震では同市東淀川区で、民家のブロック塀の下敷きになった80歳の男性が亡くなったほか、高槻市立寿栄小のブロック塀が崩れ、通学途中だった9歳の女子児童が亡くなった。

 ◇最も遅い運転再開は「午後11時」

 明治大の中林一樹研究推進員(都市防災学)は、今回の地震で、鉄道や水道、ガスなどのライフラインの途絶やブロック塀の破損がクローズアップされた点が特徴的だと見る。消防庁によれば、家屋被害は全壊1戸、半壊34戸、一部損壊3381戸だった。

「過去の震度6弱の地震だと数十棟は全壊しています。今回それより少ないのは、耐震化された家屋が多かったためかもしれません。また、今回は大きな火災は起きませんでした。もし震源が大阪市や周辺の木造密集市街地(木密)にもっと近いか、揺れが大きかったら、大火災になっていたでしょう。それを防ぐには延焼遮断帯となる広い道路の整備が必要。今回の結果を理由に『木密の道路整備は不要』とする反対派が勢いづくと逆効果です」
「防災システム研究所」(東京都港区)の山村武彦所長は、通勤・通学時間帯を直撃した点を指摘する。
「阪神淡路大震災はほとんどの人が家にいた午前5時46分、東日本大震災は職場や学校にいた午後2時46分に起きました。地震は揺れ方、時間帯、規模が違うと様相が大きく変わることが分かります。今回は電車の脱線や転覆はありませんでしたが、復旧に時間がかかり、道路の大渋滞や帰宅困難者が大量に発生した」
 地震発生時に走行していた電車は直後に一斉停止した。その後の対応は鉄道事業者によって差が出た。
 被災地を通る鉄道で運転再開が最も早かったのは東海道新幹線。乗客を降ろした後、係員が鉄道設備を点検したところ、「電力設備の復旧が必要と判明し、作業した」(JR東海広報部)。米原(滋賀県)―新大阪間が午後0時50分に再開し、全線復旧した。地震発生から約5時間後だ。次に早かったのは京阪電気鉄道。駅と駅の間に緊急停止した電車の乗客は、午前9時半までに最寄りの駅で降車し終え、午後2時10分までに全線で運行を再開した。
 一方、4月に民営化したばかりの大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)では、最後まで不通だった御堂筋線の新大阪以北が再開したのは午後9時40分。阪急電鉄の降車完了は「お昼前後」(同社広報部)で、運転再開は午後10時45分までかかった。JR西日本で降車が最も遅かったのは、山陰線を走る特急きのさきの午後3時45分。乗客は8時間近く車中に閉じ込められたが、「トイレが付いている車両があり、軽食をお渡しした」(同社情報指令)。運転再開は最も遅い区間で午後11時5分だった。
 降車が遅かった阪急とJR西日本は、駅と駅の間で電車が緊急停止すると、係員が駆けつけるまで待機する手順だという。乗客は係員の誘導の下、線路上に降り、最寄りの駅まで歩く。「駅間に停車した電車は約150本。係員が一つの電車を対応したら次の電車へ向かうので、何時間もかかった」(同)。36本が駅間に止まった阪急では、体調が悪い人は知らせてほしいとアナウンスし、実際に降車開始より先に車外に出た乗客がいた。「トイレを我慢できない方は、乗務員と通話できる車内の非常通報ボタンを使っていただいて構わない」(同社広報部)
 京阪は駅間で客を降ろさなかった。運行指令の指示を受けた運転手が、目視確認しながら次の駅まで最徐行で進んだ。「線路上で乗客を降ろすのは危ないし、乗客を誘導する係員の数が限られている。当社は駅間の距離が短いこともあり、線路上を歩いてもらうより次の駅まで電車を動かした方がいいという考え」(同社広報部)

政治・社会

くらし・健康

国際

スポーツ・芸能

対談

  • 艶もたけなわ

    渡辺美里 ボーカリスト

    2018年7月 1日号

    阿木燿子の艶もたけなわ/208   かつて"夏ライブの女王"といえば、西武球場で20...

コラム