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知の巨人・内田樹氏 至極真っ当な提言! 安倍独裁制 本当の正体

2017年11月26日号

▼私たちを支配する特異な「民主主義」

▼日本社会全体が「株式会社化」している

 総選挙が終わって約3週間が過ぎた。当初は「安倍政権への信任投票」などと喧伝(けんでん)されたが、いつの間にか希望の党と立憲民主党ばかりが俎上(そじょう)に載せられる戦いになっていた。この総選挙は一体、何だったのか? 現代の知の巨人・内田樹氏(67)が論じる。

 総選挙の総括として本誌からかなり多めの紙数を頂いたので、この機会に言いたいことを歯に衣(きぬ)着せず全部書いてみたい。読んで怒り出す人もいると思うけれど、ご海容願いたい。
 総選挙結果を見て、まず感じたのは小選挙区制という制度の不備である。比例区得票率は自民党が33・3%。議席獲得数は284で、465議席中の61・1%だった。立憲民主・共産・社民の三野党の比例得票率は29・2%だが、獲得議席は69で14・8%にとどまった。得票率と獲得議席配分の間には明らかな不均衡が存在する。
 初期入力のわずかな違いが大きな出力の差を産み出すシステムのことを「複雑系」と呼ぶ。代表的なのは大気の運動である(「北京での一羽の蝶(ちょう)のはばたきがカリフォルニアで嵐を起こす」)。株式市場における投資家の行動も、小選挙区制度もその意味では複雑系のできごとである。現に、カナダでは1993年に行われた下院総選挙で、与党カナダ進歩保守党が改選前の169議席から2議席に転落という歴史的惨敗を喫したことがあった。
 政権交代可能な選挙制度をめざす以上、「風」のわずかな変化が議席数の巨大な差に帰結するような複雑系モデルを採用したというのは論理的には筋が通っている。私たちは「そういう制度」を採用したつもりだった。株価が乱高下するように議席数が乱高下する政治制度の方が好ましいと多くの日本人は思ったのである。だが、導入して20年経(た)ってわかったのは、小選挙区制は複雑系ではなかったということである。今の日本の小選挙区制は、わずかな変化は議席獲得数には反映せず、政権与党がつねに圧勝する仕組みだったからである。なぜ、複雑系として設計されたはずのこのシステムが決定論的なシステムとして機能するようになったのか?
 それは低投票率のせいである。有権者の選挙に対する関心が希薄で、投票率が低ければ低いほど、巨大な集票組織を持ち、既得権益の受益者たちから支持される政権与党の獲得議席は増える。そういう仕組みだということはこれまでもメディアでしばしば指摘されてきた。だが、その先のことはあまり言う人がいない。それは、そうであるとすれば、今の選挙制度下では政権与党の主たる関心はいかに無党派有権者に投票させないかにあるということである。論理的に考えれば、それが正解なのである。かつて「無党派層は寝ていて欲しい」と漏らした首相がいた。正直過ぎる発言だったが、言っていることは理にかなっている。それゆえ政権与党は久しくどうやって投票率を下げるかにさまざまな工夫を凝らしてきた。そして、彼らが発見した最も有効な方法は「議会制民主主義はもう機能していない」と有権者に信じさせることだった。

 

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