政治・社会詳細

News Navi
loading...

未救済者2314人に国賠促す 厚労省がアスベスト労災で通知

2017年10月29日号

 国家が国民に国家賠償訴訟を促す異例の事態――。
 厚生労働省は10月2日、アスベスト(石綿)関連工場に勤務して健康被害を受けた少なくとも2314人の元従業員らに対し、国賠訴訟を起こすよう郵送で個別通知すると発表した。
 賠償金の支払いは、石綿の健康被害で国の賠償責任を認めた2014年10月の泉南アスベスト訴訟の最高裁判決に基づく制度。最高裁は、大阪府南部の泉南地域の石綿工場で働き中皮腫や肺がんなどで死亡した元従業員や遺族ら82人の救済を命じた。当時の塩崎恭久厚労相は「極めて重く受け止め、心からおわび申し上げたい」と謝罪していた。
 とはいえ、現状では司法の判断がない限り、被害者に賠償金を支払う要件を確認することができない。同判決当時、厚労省は最大1300万円の賠償金の支払いで和解を勧める方針を決めており、今回の通知で被害者や遺族との早期和解・解決を図りたい思惑がある。
 厚労省通知は、泉南訴訟で対象期間となった1958年から71年にかけ、アスベスト工場に勤務して石綿関連疾患で労災認定され、賠償金の対象となる可能性が高いものの、訴訟を起こしていない元従業員らが対象。賠償金請求者がわずか1割ほどしかいないためだ。支援団体などは「知らない人も多い」と厚労省に掘り起こしを求めていた。
 もちろん、今回の措置はごく限定された被害者への対策でしかない。全国ではアスベスト工場周辺住民の被害者やアスベスト建材を扱った建設労働者、さらに解体現場の周辺住民が起こした訴訟もある。「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子前会長はこう指摘する。
「最初から和解を前提としたような訴訟を起こさせるのはおかしい。本来なら被害者が労災認定されていった段階で周知させるべき。対象の期間も限定されすぎている」
 アスベスト被害者の救済は、緒についたばかりである。
(粟野仁雄)

政治・社会

くらし・健康

国際

スポーツ・芸能

対談

  • 艶もたけなわ

    黒田福美 女優・エッセイスト

    2017年11月19日号

    阿木燿子の艶もたけなわ 178   芸能界きっての韓国通として知られる女優の黒田福美...

コラム