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『ファーブル昆虫記』ついに完訳 仏文学者の奥本大三郎さん語る

2017年7月23日号

「毎月30枚の原稿で全10巻(各巻上下で20冊)、正味7000枚。これに注釈を付け、10回渡仏して最新の知見を加えたら30年かかってしまいました」。こう話すのは、仏文学者で虫の研究家としても著名な奥本大三郎さん(73)。博物学不朽の名著『ファーブル昆虫記』(集英社)をこのほど完訳完結した。
 文芸誌の連載で始まったのが30年前。個人による完訳版は世界で初めて、登場する昆虫2183種すべてが正確にイラスト化されたのも世界初という。
「これまでは虫をいじったことのない人による翻訳だったから、肯(うなず)けない箇所が多かった。翻訳は欧文直訳体や子ども相手の猫なで声ふうもある。大正11年の大杉栄による訳はべらんめえ口調ですごく威勢がいい。僕は朗読で聞いて分かるように訳しました」
 奥本さんによれば、アンリ・ファーブル(1823~1915)の人物評はこうだ。
「勤勉で頑固で体が丈夫。地理・歴史・数学・天体などの教科書、啓蒙(けいもう)書を約100冊書いて食いつないでいた。実際に会えるのなら、疑問に答えてほしい部分も多い」
 例えば本能の問題。ハチが獲物を襲うときは必ず神経中枢を刺して殺さず麻痺(まひ)させるが、なぜ体得したのか、それを知る以前のハチはどうしていたのか。ファーブルはそれを本能としか書かない。解明されればノーベル賞級の「疑問」も残されている。同書は、昆虫学をやる少年少女には絶好の参考書になるはずだとも言う。
「今では雑木林が宅地になりましたが、採集は狩猟本能の一つ。殺生のコツを体得して、捕らえすぎれば反省もする。こうして虫を捕った人は限度を知るから、長じて犬や猫を殺したりはしません」
 奥本さんが館長を務める「虫の詩人の館」(東京都文京区)では、虫捕りスポットや道具について、ホームページにメールで送れば指導してくれる。
(南條廣介)

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