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渡辺淳一文学賞はミスマッチ? 『マチネの終わりに』の魅力とは

2017年6月11日号

 刊行から1年で累計15万部を超え、異例のロングセラーとなった芥川賞作家・平野啓一郎さんの長編小説『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)。同作が第2回渡辺淳一文学賞を受賞し、5月19日、東京都内で贈賞式が行われた。
「なにかとうんざりすることの多いいま、小説を読む時くらいは美しい世界に浸っていたいと思い、書いた作品。同じように感じてくれる読者がたくさんいてうれしいです」(平野さん)
 とはいえ、『失楽園』『愛の流刑地』など濃厚な男女関係を描いたエンターテインメント作家の名を冠した賞と、芥川賞作家の平野さんを並べれば、ミスマッチとも映る。実際、選考会では「受賞作は40代の恋愛が主題というのに性的な要素が薄すぎないか」との指摘もあったという。
 主人公は天才クラシック・ギタリスト。ヒロインは海外の通信社に勤務し、内戦でテロが頻発するイラクの特派員を志願するほどの有能な記者だ。共に才能と美貌に恵まれ、地位もある二人は、初対面から猛烈に惹(ひ)かれ合うが、直接会うのは3回だけ。いずれも、食事を共にしただけで別れている。やがて恋敵の横槍(よこやり)によって溝が生じ、一緒にはなれないまま別々の人生を歩み、物語は終章を迎える――。
 ストーリーだけを追えば、古典的ともいえる悲恋物。「かなり無理筋な恋愛小説」との選評もあった。それでも受賞に至った理由は何なのか。
 選考委員で恋愛小説の名手、小池真理子さんがこう評す。
「突然恋に落ちた男女を描いて、いささかもぶれない文章力に敬服した」
 同じく選考委員の高樹のぶ子さんは作者の筆力を讃(たた)えた。
「恋愛の苦さと、悲しみの余韻を置いた終章から(本当の恋愛が)始まる、つまりそのように読ませたこの作品が本賞に輝いたのは、恋愛小説の衰退が言われて久しい昨今、快挙といえる」
「古典的な運命劇の二十一世紀的な更新」という作者のもくろみは、果たされたようだ。
(文化・芸能取材班) 

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