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寺島実郎・核心提言 在日米軍を自衛隊基地に移し共同管理にせよ 日本の"安全保障"はどうあるべきか

2017年1月 1日号

倉重篤郎 サンデー時評

 トランプ時代に変容を迫られる日本の安全保障について、「サンデー時評」倉重篤郎がさまざまな知性に新たな解を求めるシリーズ。今回は希代のワシントンウオッチャーにして、日米関係をめぐる独自の思索者でもある寺島実郎氏が、米軍基地縮小への展望を語る。

▼トランプがマーケット出身者を側近に置いた理由
▼中ロ米韓を引き込んだ「北東アジア非核構想」を
▼日米同盟の再構築なくして「戦後」は終わらない

 日米同盟の今後を展望するにはどうしてもこの人に会いたい、と思っていたのが寺島実郎氏(日本総研会長、多摩大学長)である。
 氏が月刊誌『世界』に長期連載する「脳力のレッスン」は愛読させてもらっている。骨太な現状分析と歴史教訓の自在な引用、自らの脳みそを振り絞って考え抜かんとする姿勢。そして日米同盟という戦後日本の「国体」信奉に囚(とら)われない批判的知性に着目してきた。在米経験10年のワシントンウオッチャーでもある。
 まずは、トランプ政権をどう分析する? なぜこの異形の政権が誕生した?
「根っこは一つ。貧困や格差に対する国民の怒りだ。これが民主党では若者たちを軸としたサンダース旋風につながり、ヒラリー氏をウォールストリートの代弁者として失速させ、本来は勝てる選挙を落とす羽目になった。夫婦で財団を作りマネーゲームをしている、と見られた。一方、共和党では、プアホワイトという白人貧困層がトランプ氏の単純なメッセージ、例えば、あなた方の苦しい生活は不法移民の流入と工場の海外移転のせいだという扇動に乗せられた」
 となると、深刻な根っこの問題を解決することが新政権の課題であるはずだ。
「ところが当選後1カ月もしないうちに、国民の声が市場の声に乗っ取られつつある。ウォールストリートの人々がいかに懲りないしたたかな人々か。トランプ氏になると米経済は終わりだと言っていたのが手のひらを返したようにトランプ氏も悪くないぜ、米経済を復活させるかもしれないと、政権が動き始める前であるのに、はしゃいでみせ、いつのまにかその流れを作って取り込んでいる」
 新任の財務、商務長官はいずれもマーケット出身者。人事が市場の声のほうに応えている印象だ。
「ムニューチン次期財務長官はジョージ・ソロス氏のファンドにもいた人物。ロス次期商務長官もファンド投資家という世界を生きていた。いずれもマネーメーカー、マネーゲーマーで、政権の性格をはっきり見せている」
 外交、安全保障分野の人事も特徴的だ。
「マティス次期国防長官は海兵隊出身者。沖縄の基地問題にとって若干ややこしい人物が出てきたという印象だ。国務長官に指名されたエクソンモービルのティラーソンCEOはまさにプーチン露大統領の親友だ。あの会社はロシアに大きな権益を持っている。対ロシア制裁がもし解除の方向にいったら欧州との連携関係、G7がどう影響を受けるか。いずれも不透明だが、外交・安保政策の大きな変更点が見え隠れしている」
 日米同盟への影響は?
「トランプ氏は選挙戦で駐留米軍経費を100%日本に持たせろと主張した。1990年代に日本叩(たた)きをしたジャパンバッシャーの安保ただ乗り論と似た議論だった。日本側はこれを悪夢の再来とばかりに『祈る。ヒラリー当選』となった。ヒラリー氏の政策スタッフがカート・キャンベル氏らジャパンハンドラーだったので安心感があった。そのバッシャーvs.ハンドラーの戦いは、バッシャー氏が勝った。だから大変だと慌てている」
 それは悪夢ではなくむしろチャンスだと?
「そう受け止めるべきだ。というのも、日本の安保政策の金縛り要因は、冷戦終結の貴重な転換点でしかるべき対応をしてこなかったことにある。同じ敗戦国だったドイツが93年に同国駐留の全ての米軍基地をテーブルに載せ、米国に対し基地の段階的縮減と地位協定改定を正面から持ち出した。その結果、ドイツの米軍基地は大幅に削減され、地位協定も改定された。ところが、日本は東アジアではまだ冷戦は終わってないとの認識で同盟の従来通りの維持に動いた」
「その後も日米安保を自動延長する流れが継続された。せいぜい97年の日米防衛指針の見直しがなされた程度だったが、それも日米安保の対象地域を従来の『極東』限定から世界中に広げる可能性を開く結果になった。冷戦後の『米国の一極支配』といった議論が主潮となり、深い思慮もなく米国の世界戦略との一体化が加速された。ある意味思考停止の選択だった」
 そして、昨年の新安保法制。中国台頭という事態に対する新しいアクションではあったが、集団的自衛権行使の一部容認も後方支援の世界的展開もさらなる米国との一体化、同盟への過剰依存という同じ路線をひたすら突っ走っている。
「今まで通りでいきたいという力学がある種、固定観念として埋め込まれている。今回青天の霹靂(へきれき)のように駐留軍経費100%説が蘇(よみがえ)ってきた。これは、21世紀の東アジアをにらみ、その安定のために日米同盟がどうあるべきかということにしっかり向き合うチャンスだ。まずは、米中がやっている戦略対話を日米でもやってみようということだ」
 ドイツでやったように、そのテーブルに全ての米軍基地・施設を載せる?
「北限は三沢、南に全米軍基地の74%が集中する沖縄がある。全部テーブルに載せ、21世紀をにらんだ東アジアの安全保障にとって真に何が必要か、すでに意味のないものはないのか、優先順位の高いほうからチェック、目的を終えたと合意できる基地・施設の返還を実現する。卑近な話で言えば、首都圏周辺に米軍専用のゴルフ場が二つあり、コストはすべて思いやり予算で日本側が持っているというような事実もある」
「陸、海、空軍、海兵隊(マリーン)という4軍間の力学、バランスにもメスを入れる。沖縄に集中する米軍基地の7割が海兵隊だ。国防総省と議論してわかるのは、沖縄はイコール海兵隊の基地ということだ。海兵隊への配慮がものすごく大きい。2万人の犠牲を出して沖縄戦で勝利したのは海でも陸でもなく海兵隊だった、という歴史に引きずられている。そこに辺野古問題の本質があるし、

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