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中国と戦争はするな! 安倍首相よ、田中角栄の日中国交正常を無にするな!

2016年9月 4日号

サンデー時評・番外編 倉重篤郎

 ▼72年の日中共同声明の原点に戻れ
 ▼"原則論"では中国は引っ込まない
 ▼安倍首相は諫言者を周辺に置け

 ◇日中友好協会会長(元中国大使) 丹羽宇一郎が直言

 日中関係の危機が戦争に至ることを絶対に回避するために、さまざまな叡知を尋ねる本シリーズ。第2回は、中国大使を務め、現在は日中友好協会の会長である丹羽宇一郎氏(77)が、日中国交正常化以来の歴史を踏まえて、安倍外交に直言。サンデー時評・倉重篤郎が迫る。

 中国の最高実力者・習近平氏はこの夏、何を考えているのか。
 自らの権力基盤を相当程度固めた、との自負を抱いているであろう。ナンバーワンの総書記に就任して間もなく4年。共産党内で権力闘争を勝ち抜いてきただけではない。虎もハエも叩(たた)く、と腐敗人脈も一掃し、一定の評価も得た。強大な経済力を背景に世界をまたにかけた外交も展開、57カ国を加盟国としてAIIB(アジアインフラ投資銀行)を創設するにも至った。
 ただ、世の中いいことずくめでもない。経済成長に陰りが出る。韓国が最新鋭迎撃ミサイルの配備を決めた。さらには、南シナ海の領有権をめぐる仲裁裁判所の判決で中国側の主張が全面的に否定された。すでに共産党内からは習執行部の失態とする声が出ている。
 そんな中で9月4、5日に杭州で開かれる20カ国地域首脳会議(G20)を主催国としてどう演出するか。習氏には悩み深いところだろう。世界への協調姿勢を示す好機である。一方で、南シナ海、東シナ海で譲歩すると強硬派から足を引っ張られる。来秋は、最高指導部を入れ替える5年に1回の党大会だ。盤石な党内基盤で臨むためにも対外的に融和姿勢は取りにくい。
 外交とは、相手の立場を慮(おもんぱか)りながらも、自らの国益を最大化する営みであろう。であるならば、日本外交は習近平氏の中国にどう対処すべきなのか。前週の田中均氏は、習体制への逆風の今こそ、日本外交の出番がある、と語っていた。
 今回登場の丹羽宇一郎氏は伊藤忠商事社長、会長を務めた後、中国大使を2年半経験した現職の日中友好協会会長である。その彼の目に一体何が見えているのか。8月4日、東京・赤坂の事務所で聞いた。

 ◇「南シナ海」については中国はやり過ぎ

 開口一番出てきたのが、日本の言論状況に対する強い懸念だった。
「日本の一番の問題は、有識者、学者、メディアがものを言わなくなってきたことだ。もちろん、言論が明確に統制されているわけではない。ただ、そういう人たちが皆、政治から離れようとしている。政治問題をテーマにテレビ番組を作らない。作るとお前、偏っている、と言われる。そういう意見が権力側から出ているところに問題がある」
 メディア側の自粛か。
「自粛というより沈黙だ。沈黙の罠(わな)にかかっている。アベノミクスを含めて、皆さん遠慮しいしいしゃべらない。私の見立てでは戦後70年で今が最悪だ。声を出さないということは、賛成ということになる。(現体制・政策を)無批判に助長、加速することになってしまっている。これをどうぶち破るか。知識人とメディアが勇気を持って自らの本意を発言すべき時だ」
 安倍政権ゆえのものか。
「それはある。ただし、安倍さんだけが悪いわけではない。彼を取り巻くスタッフや国会議員が、面と向かってこれはおかしいと言わなくなってきた。昔のリベラリズムを中心とする保守勢力には、同じ党内でもいろいろ意見があった。だが、今は自民党の国会議員から安倍さんと違う意見は、ほとんど聞こえてこない。民進党にも少ない。まっとうな意見が出てこない」
「これはいつか来た道だ。70年前の日本と変わりない。あの時はもの言うと身に危険が及びかねなかった。だから、皆静かにした。今は殺されはしないが、自己保身で静かになる。情けない。歴史に学ぶ過去の教訓を活(い)かしてない」
 そんな中での安倍政権の今回の組閣(8月3日)。稲田朋美防衛相が話題だが、中国はどう見る?
「非常に刺激的だった。稲田さんは、安倍さんに近い右寄りの人、と受け止められている。言動をすべてチェックしている国だ。中国側にすると、安倍政権は日中関係を一体どうしようとしているのか、というメッセージを送ったことになっているようだ」
「というのも、両国関係はこの間薄氷を踏む思いでやってきたからだ。人の家に入る時には、靴を脱ぎ礼を尽くしてお邪魔する。お互いに気を使い、相手を立てて話をする。だが、両国とも最近その姿勢に欠くところがあった」
 丹羽氏は2015年4月22日にインドネシアで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)での日中首脳会談を取り上げた。この時が日中関係改善の大きな節目だったというのだ。確かに、日中関係は、13年の安倍首相の靖国参拝という最悪の時期を乗り越え、14年11月以来、5カ月ぶりの会談は両国の雪解けを期待させた。前回仏頂面だった習近平氏も笑顔を見せた。
「党内基盤を固めた習近平氏の方から働きかけて、安倍さんと会おうとした。習氏からすると、ようやく日本と話し合いできる時期に来た、従来の強硬路線から柔軟路線に舵(かじ)を切ったつもりだった。ところがタイミングが悪かった。日本側からは特定秘密保護法制定、武器輸出三原則見直し、そして新安保法案を通して軍事的抑止力を強化する、という話がどどっと出てきた。それに加えて、南シナ海の領土問題での中国への名指し批判が始まった」
「南シナ海についてはどんな理由であれ中国はやり過ぎだ。世界の賛同を得られる行動ではない。ただ、これらの動きが必要以上に日中関係にトゲを刺した。尖閣より今は重くなっている」
 尖閣より重い?
「もともとの経緯を考える必要がある。南シナ海は、第二次大戦時は日本が占領していた。戦後は、

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