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"平成の玉音放送"を読み解く 「お気持ち」に込められた 生前退位への「覚悟」

2016年8月28日号

"平成の玉音放送"を読み解く 「お気持ち」に込められた 生前退位への「覚悟」=保阪正康

▼「象徴」という役割への深い思い
▼国民との信頼関係を作り得たことへの自負

▼天皇の孤立した闘いを受け止める「国民の役割」

 8月8日、天皇陛下の「象徴としてのお務めについてのお言葉」がビデオメッセージの形で伝えられた。このなかで天皇陛下は象徴天皇としての思いの丈を国民に語りかけ、天皇の位を皇太子に譲るご意向を示唆した。ノンフィクション作家の保阪正康氏が、「お言葉」に込められた天皇陛下のお気持ちを解読する。

「生前退位」に関する天皇陛下の「お気持ち表明」、つまり「お言葉」が、8月8日午後3時から一斉に各メディアによって報道された。この内容に触れてすぐに思い浮かぶのは、わずか2000字の中に天皇の現在のお気持ち、歴史へ向き合う姿、それに天皇家としてのとるべき態度などがほとんどすべて網羅されているという心配りである。見事なほどあらゆる方面に配慮しているということになろうか。
 「お言葉」は正確には、「象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉」とのタイトルがついている。象徴天皇としての率直な気持ちを語っているという意味になるであろう。
 この「お言葉」について、まず私なりの解説を加えておこう。この内容は以下のような構成になっている。
〈老齢の今、個人としての意見を明らかにしたい(A)→象徴天皇としての行動を貫いてきた(B)→老齢の今、肉体的に不安(C)→私の28年間の活動について(D)→摂政には疑問(E)→天皇の終焉(しゆうえん)時の一連の儀式(F)→国民の理解を求める(G)〉
 この七つのポイントが、「お言葉」の中には整理されている。あえていうと、天皇は、自らの発言が「政治」に関わるとの懸念があるにもかかわらず、今回その心中を吐露したといっていいのではないかと思う。いや、天皇という制度、システムの枠から離れて、あえて「個人」としての視点から問題提起をしたといってもいいであろう。一面で、このビデオメッセージは「平成の玉音放送」と評していい。
「昭和の玉音放送」とは、言うまでもなく、昭和20年8月15日に太平洋戦争を敗戦という形で収めるための昭和天皇のご聖断であった。天皇のナマの声に接することによって、国民はさまざまな感情があるにせよ戦争終結という状態になった。昭和史を動かしたこの玉音放送は、結果的に大日本帝国の崩壊を意味したし、天皇という制度のあり方も変えることになった。元首であり、主権者である天皇は、新憲法のもとでは「国民統合の象徴」となったのである。

 ◇「政体」が「国体」の上にあるという考え

 ここで一点、問題点を指摘しておかなければならないのだが、大日本帝国憲法成立と旧皇室典範はほぼ同時期に成立していて、いわば近代日本の天皇制はこの二つの枠組みで決まっていた。いわば天皇はこの国

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