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天皇陛下生前退位が浮上した「2つの理由」=保阪正康

2016年8月 7日号

戦後ニッポンの重大岐路「象徴天皇制」を解読する 短期集中連載/1 天皇陛下生前退位が浮上した「2つの理由」=保阪正康

  • ▼大正天皇から得た「歴史の教訓」
  • ▼天皇制の形骸化を回避
  • ▼皇太子への「追悼と慰霊」の継承

 天皇陛下「生前退位」のニュースは、さまざまな臆測をはらみつつ日本全国を駆け巡った。はたして陛下の真意はどこにあるのか。本誌前号で、戦後日本の重大岐路ともいえるこの問題を解読したノンフィクション作家の保阪正康氏が、『昭和天皇実録』を読み込みながら、歴史からの視点でさらに深く分析する。

 平成28年(2016)7月13日、NHK午後7時のニュースは、天皇陛下が「生前退位」の意向を宮内庁の幹部に示されているとの報道を行った。まったく寝耳に水の報道なのだが、この中には次のような内容があった。
「天皇陛下は、82歳と高齢になった今も、憲法に規定された国事行為をはじめ数多くの公務を続けられています。そうしたなか、天皇の位を生前に皇太子さまに譲る『生前退位』の意向を宮内庁の関係者に示されていることがわかりました」
「天皇陛下は、数年内の退位を望まれているということで、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表す方向で調整が進められています。天皇陛下は、象徴としての立場から直接的な表現は避けられる可能性もありますが、その場合でも、ご自身のお気持ちがにじみ出たものになると見られます」
 さらに「日本でも、昭和天皇まで124代の天皇のうち、半数近くが生前に皇位を譲っていますが、明治時代以降、天皇の譲位はなくされ、江戸時代後期の光格天皇を最後におよそ200年間、譲位は行われていません」と伝えている。翌日の新聞は〈天皇陛下「生前退位」意向〉〈数年以内に譲位〉〈「お気持ち」表明へ〉(以上、いずれも『毎日新聞』の1面)などと一斉に大きく報じた。たしかに国民の関心を呼ぶニュースではあるが、それにしても「なぜ、今?」というのが読者の率直な気持ちでもあった。
 密(ひそ)かに洩(も)れ伝わってくる情報では、天皇陛下は体調が思わしくなく、実際に公務に没頭できる状態でなくなったら、「終身在位」ではなく「生前退位」もやむを得ない、との意向だとはいわれていた。しかしそれは今すぐというのではなく、これからの数年先を想定しているとか、この意向は皇室典範の改正とも関わりがあるため、天皇自身が発言すべきではなく、政治の側や宮内庁がなんらかの形で明らかにすべきだとの声もあった。
 7月13日にこの報道が行われたあと、宮内庁は「陛下ご自身がこのような発言をしたことはない」と真っ向から否定していて、なぜNHKがこうした報道を行ったかは不透明である。
 私自身、多くのメディアから取材の申し込みがあったが、その真相はわからないので、意見を明らかにするのは二、三のメディアを除いて断った。実際にこの報道では、あたかも天皇ご自身の体調が悪くなったのかと錯覚する向きもあった。あるいは7月10日の選挙、11日の改憲勢力3分の2獲得というあとだけに、なにか政治的な思惑があるためではないかとの推測の声もあった。
 こういう推測自体が、天皇を政治に巻きこむ危険性と重なりあっていて、メディアの報道はさまざまな形で問題を投げかけることになった。

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