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「引退宣言」を吹き飛ばす 橋下復活、全シナリオ

2015年6月 7日号

▼安倍官邸が救出作戦「内閣参与」で厚遇か

▼与野党が争奪戦「橋下」の政治的利用価値

▼民主党と維新合流の確率

▼維新幹部とブレーンが諦めない「橋下・関西州知事」構想 

政界からの引退宣言ーー。橋下徹・大阪市長は大阪都構想の住民投票の敗北後、そう明言した。しかし、である。その水面下では、本人の意思とはかかわりなく、与野党間で「橋下氏の復活シナリオ」が進んでいるのだ。政界のウラで蠢く「橋下政局」の全貌をスッパ抜く。

 安倍首相側近の一人がこう断言した。
「橋下さんが大阪市長を辞めて政界引退を明らかにしたが、その後、安倍首相はその話に特に触れることもなく反応がない。それはどうでもいいということではなく、橋下さんがこれで終わりとはまったく思っていない、という証明だ」
 大阪都構想の住民投票で敗れた大阪維新の会代表の橋下徹・大阪市長が投開票当夜に記者会見して、「任期満了となる今年12月の大阪市長選挙には出馬せず、政界を引退する」ことを表明した。
 多くのメディアが「7年以上に及んだ橋下劇場がこれで終わった」とノスタルジックに報じているが、むしろ「復活への始まり」だと言うのが、冒頭の首相周辺や官邸の反応だ。
 政権サイドだけではない。
 野党民主党も橋下氏を巻き込みながら、「野党再編」を目指す動きがすでに出ている。
 永田町では「引退会見」を機に、「橋下氏のやり方には功罪があるが、何かを進めるときに橋下氏の突破力や破壊力、発信力とその背後の維新の数は、政治的に利用価値が非常に高い」(自民党幹部)と評する多くの声が聞かれる。それは新たな「橋下」争奪戦が始まった、と言っていい。
 そもそも会見で口にした「引退」は真実なのか。地域政党である大阪維新の会の府議が言う。
「やり切った感はありますね。街頭演説などでの最後のパワーは凄(すご)かった。都構想が市民に通じなかったという諦めや疲労感はあると思います。しばらく休みたい、引退したい、というのが本音でしょう」
 だが、府議はこうも付け加えた。
「私は橋下さんを5年近くそばで見てきて、あの人の源はズバリ『リベンジ』。それまでの人生も悔しい思いをしたことからの『リベンジ』。大阪府知事や大阪市長になってからもそう。攻撃されて本気で力を出す人ですから。今回は小差で負けた。『リベンジ』はあると思います」
 また、自民党ベテラン議員は、記者会見には橋下氏の「計算」と「狙い」があったのではないか、と話す。
「あの爽やかさが気になる。わずか1万票差で負けたんだから悔しさがあってもいいはずだが、それがまったくない。橋下さんらしくない。再起を考えて、好印象を示した上でいったん幕引きしたのだろう。その成果なのか、会見後、『橋下さんは辞めるべきでない』『いい会見だった』との声が永田町で相次いでいる。"次"への期待や求心力につながっている」
 こう見ると、「引退宣言」を額面通りに受け取るのはまだ尚早だ。

 ◇「改憲メッセンジャー」の役割

 さて、安倍官邸にとって橋下氏、そして維新の党はどうしても味方につけたい、という思惑がある。安倍首相の一丁目一番地である「憲法改正」での協力だ。
 これまでの経緯は次のようなものだ。
「今回の大阪都構想について、地元大阪の自民党府連が反対しているにもかかわらず、安倍首相や菅(義偉)官房長官があらゆるタイミングで『二重行政の解消はいいことだ』との表現で、応援メッセージを出した。昨年末には、菅官房長官は住民投票を巡って、橋下氏と公明党の間に入って調整に一役買うなどしてきた。それに対して、橋下氏は年明けに『憲法改正で協力する』旨も明らかにしている。大阪都構想と憲法改正のバーターは既定路線だった」(首相周辺)
 憲法改正については、衆参でそれぞれ3分の2の賛成が必要。だが、衆議院では自公で満たしているものの、参議院では約30議席足りない。来年夏に行われる参院選の改選議席は、総定数の半分で141議席。自公だけで30議席を上積みするのは不可能に近い。となると、参院で3分の2を確保するには、橋下維新の協力が不可欠だ。
 そもそも、両者の結びつきは深い。とくに菅官房長官は、野党時代から先を見越して手を打ってきた。
 私が克明に覚えているのは、2012年3月のこと。民主党政権下で自民党は野党だった。テレビ番組で久々に菅氏に会い、楽屋での話だった。
「きょうは大阪から帰ってきた」
 と切り出した菅氏。「何をしに大阪へ?」と問うと、こう言った。
「維新の会の松井(一郎)知事たちと会ってきた。大阪には最近2カ月に一度は通っている。松井さんは元々自民党で古くからの付き合いだし、橋下さんの大阪市の改革は私も共感するところがある。総務大臣をやっていたからよく分かるが、政令市の二重行政を壊すのはそう簡単なことじゃない。既得権を死守する職員労組とあれだけやり合うのは、なかなかのものだ。いつかは分からないが、我々が政権に戻るあかつきには、できることは一緒にやろうと約束している」
 この時期、自民党総裁は谷垣禎一氏。消費増税を巡って野田佳彦首相との駆け引きが行われていた頃だ。もちろん、永田町では安倍氏の復活などはあり得ないと見られていた。菅氏や他の一部の安倍周辺だけが、その年の総裁選に再挑戦すべきと動いていた程度だ。裏を返せば、そんな境遇の中でも、菅氏は「あらゆる手」の一つとして、橋下維新との関係を築いていたのだ。
 菅氏に近い官邸スタッフは、こう断言する。
「菅さんは記者会見で『(政界引退は)感慨深い』などと言っていたが、橋下氏をこのまま引退させることは、絶対にない」
 では、官邸サイドはどんな「橋下復活シナリオ」を描いているのか。
「一番分かりやすいのは、橋下氏が市長を辞めた後、来夏の参院選で松井知事と一緒に国政に打って出ること。橋下氏が出馬すれば、維新の議席増が見込める。その後、維新の党代表になって改憲に協力してもらうというシナリオです」(前出の菅氏に近いスタッフ)
 別の自民党幹部は、橋下氏があそこまで「引退」と言い切った以上、簡単に国政に転身はできないだろう、としながら「ほかに手がある」と言ってこう話す。
「何もバッジをつける必要はない。とにかく橋下氏に政治的発言ができるような公的なステージを用意してあげればいい。そこで憲法改正などについて発言して、間接的に維新の党の数を動かすような形でもいい。そのステージは、たとえば民間登用の『大臣』もあるし、相談役的な『内閣官房参与』といった方法もある。『大臣』だと、さすがに自民党内から不満が出る。そこで非常勤の国家公務員である『参与』のほうが現実的な話ではないか。いずれにしろ、公的な肩書をつけて発言力に重みを持たせ、橋下氏に"改憲メッセンジャー"になってもらえばいい。見え透いているが、菅さんはそうしたウルトラCを平気でやるだろう」

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