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大反響第10弾 わが家が一番危ない!訪問看護師が警告するステイホーム関連死

2020年11月 1日号

 <アルコール依存のコロナスリップも>

 新型コロナウイルスの感染を恐れ、外出に二の足を踏む人は確かにいる。だが、家の中が安心とは限らない。ここへきて、むしろステイホームを続ける弊害が顕在化しているのだ。訪問看護を続ける作家が見た〝密室〟の危険性と、具体的な対策をお伝えしよう。

 私は1987年から看護師として働き、今は精神科病院に勤務している。現在の配属は訪問看護室で、精神疾患を抱えながら自宅で暮らす人の支援が仕事である。新型コロナウイルス感染が広がり、緊急事態宣言が出ても、仕事は基本的に変わらない。勤務の日は出勤し、利用者さんの住まいを訪れる。ただ、マスクをして、室内は換気してもらい、いつもより距離を置いて話す。密集、密接、密閉の3密を避ける基本は、ここでも変わらない。

 私自身、訪問看護でうかがった先で、亡くなっている利用者さんを発見したことがあった。その人は長年の飲酒で仕事を失い、家庭を失い、家を失い、野宿暮らしも経験していた。断酒会などでも人との関わりに入っていけず、外来通院だけが定期的な外出だった。 それがコロナ対策で電話受診が可能になり、通院しなくても薬がもらえるようになった。元から通院受診には消極的だったため、いち早く電話受診を希望。病院との繫(つな)がりは、訪問看護だけという状態であった。

 結局、その人は野宿時代の仲間に誘われ、再飲酒をしてしまった。すでにかなり進んでいた肝障害が一気に悪くなり、眠るように亡くなったようだ。真夏の暑い日、寒いほどエアコンが利いていた。

 寝ているように亡くなっている姿を見て、これこそ、コロナによって引き起こされた「ステイホーム関連死」じゃないか、と思った。やっと酒のない生活を始めたばかりなのに......。何ともやりきれない気持ちになった。

 依存症治療の現場では、すでにアルコール依存症で治療をしていた人が再飲酒してしまう「コロナスリップ」が問題になっている。典型的なパターンとしては、断酒会などの自助グループに通って何とか飲酒をしないで過ごしていた人が、コロナの影響で断酒会活動が休止になり、孤立して再飲酒に走ってしまう。中には連続飲酒となって、入院するまで酒が止まらなくなる人がいるとも聞く。コロナさえなければもう少し何とかなるだろうと、気の毒でならない。

 今、依存症でない人にとっても他人事(ひとごと)ではない。すでにメディアでも報じられているが、ステイホームにより、多くの家で飲酒量が増えているからだ。極端な場合、これまでは通勤していたから飲まなかった人が在宅勤務になり、朝から飲んでしまう。このような形で、今までは明らかにならなかった、飲酒の問題が生じている人もいるのではないだろうか。

 お酒は深みにはまると怖い化学物質である。現在、飲酒の問題が明らかになっている人には、そこから目をそらさないでほしい。ぜひ身近な人に相談し、できれば早めに治療を始めてほしいと願う。

 そして、そこまでいかない人、まだ酒量の増加に気づいた程度の人は、それ以上増えないよう、勤務時間中は飲むのをやめ、1日に飲む量を決め、その範囲で飲んでもらいたい。

     *

 今年、新型コロナウイルス感染が拡大する中で、4月に緊急事態宣言が出され、自宅への自己隔離――いわゆるステイホームが日本中で求められるようになった。欧米の一部都市のような法的強制力を伴うものではないにもかかわらず、多くの人が国や自治体の指示に従い、外出を控え、家で過ごすようになった。

 今はこうした行動制限は解除となっているが、感染の収束はまだまだ見通せない。特に既往症のある人、高齢者など、感染により重篤になりやすい人は、外出を楽しめる状況にはほど遠い。

 では、私たちは家にいれば安全なのだろうか。もちろん感染症に関しては、イエスである。完全ではないにしても、感染の機会を減らすことはできる。少なくとも、人が集まる街に出るより、家にいる方が安全だとは言える。

 一方で、別の危険もある。長期化するコロナ禍においては、家に引きこもることによるマイナスが、徐々に大きくなっているからだ。世界保健機関(WHO)もコロナ禍におけるアルコール依存やうつ病、自死などの増加を警告し、各国に対策を呼びかけてきた。最悪の場合、「ステイホーム関連死」にさえ繫がりかねない。

 そこに思い至った源流には、1995年の阪神・淡路大震災後に生まれた「震災関連死」の概念がある。災害を直接の原因とせず亡くなるケースのことだが、復興庁によると、2011年に発生した東日本大震災でも震災関連死は3739人にのぼっている(19年9月30日時点)。9割は66歳以上で、心臓疾患や肺炎などが引き金になるという。

 コロナの場合も、この「震災関連死」に似たような事情があるように思う。直接コロナ感染で命を落とすのではない。しかし、感染しないためのステイホームによって体調を崩し、亡くなる人が出れば、それはステイホームが原因の「ステイホーム関連死」と言えるのではないか。

 収束が見えないコロナ禍で外出控えが続けば、どんな負の側面があるのか。あえて取り上げ、対策とともにお伝えしたい。

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