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大予測コロナ時代 半年後はこうなる 感染第2波、ワクチンは不明でもPCR検査信仰は消える

2020年7月12日号

 <1冊丸ごと 大予測コロナ時代>

 感染が収束しても世界は元に戻らない。今までとは違う「コロナ時代」になった。そんな見方が広がっている。景気は戦後最悪の落ち込みをする中、情報技術は一気に進化し、人々の生き方も変わる。これから年末までの半年間、世界はどう変わるのか。

 ワクチン登場でコロナ禍は収束となるのか、それとも――。政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーで、長年ワクチン研究にも携わる川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長が疑問に答える。

(聞き手・笹井恵里子)

――新型コロナウイルスの「特効薬」が待ち望まれています。先生の予測は。

岡部 特効薬(抗コロナウイルス薬)は必要ですが、それが世の中に出てくるのには時間がかかるので、現在はいろいろな既存の薬が「治療薬」として試みられています。ただし、〝薬の評価〟は案外難しい。抗インフルエンザウイルス薬であるタミフルなどでも議論になりましたが、軽症者の場合は薬がなくても治ったかもしれない。また、重症患者の場合は薬を使っても使わなくても経過が悪い場合があります。

――「薬を服用した→病気が治った→薬が効いた」、あるいは「薬を使用した→具合が悪くなった→薬のせいだ」と安易に判定するのは危険ということですね。厳密に薬の有効性、安全性をみるためには「薬使用群」と「薬未使用群(あるいは偽薬群)」に無作為に振り分けて比べるランダム化比較試験を行う必要があると。

岡部 そうなんです。それと薬の効果があったとしても、どの程度の効果なら使うのか。「90%の効果がみられないと使わない」のか、それとも「30%程度でもいい」と考えるのか。そんなに効果がなくても、3分の1の人を救えるならいいじゃないか、という考え方もあるでしょう。また効果だけでなく、当然ながら「安全性」も担保しなければなりません。

――その点、既存の薬なら、ある程度の副作用の内容、頻度、対処法などが分かっています。現在は他の病気の治療薬(既存薬)の中から有効性のあるものを探っている状態ですね。

岡部 新型インフルエンザの治療薬であるアビガンR、喘息(ぜんそく)の治療薬のオルベスコRなどに期待がかけられるわけです。アビガンは国産ですから、もし有効性、安全性が確認されたとすれば、日本の科学が世界に貢献できるということで嬉(うれ)しいですね。ただし、アビガンは、動物実験で妊娠動物に投与をすると胎児の催奇形性(胎児の体の見た目に異常が起きること)がある、というのが分かっています。使うのであれば、それらを理解しながら使うことが必要です。患者さんが風邪薬を買って飲むような使い方をしない、医師も患者さんに求められるままに薬を出してしまうということがないようにしなくてはいけません。有効性、安全性に関して、データとしてきちんと判断できるような、あらかじめ申請を出した医療機関のみ使えるなどの制限が必要ではないでしょうか。既存薬をじゃんじゃん使うのではなく、〝そろりそろり〟と使っていくのがいいでしょうね。

――しかし既存薬の場合も、正確な効果は分からない。軽症の肺炎患者に、アビガンと偽薬に分けて最大14日間服用してもらい、治療効果に差が出るかを確かめる治験が、コロナの新規患者の減少で難航しています。

岡部 もし、30%ぐらいしか効果がない薬を承認したとしたら、後から「何事だ」と言われると思いますね。反対に70%の効果があるものを承認しなかったとしても「何事だ」と言われるでしょう。いずれにしても「こういう明らかなデータがあるため、このくらいの効果ですが使います」という説明が必要です。しかし現状のメディアは「こっちがいい薬」「あっちは使えない」と持ち上げては下ろしての繰り返しで、一面的な報道です。

――子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンも、世の中から求められ、過去に定期予防接種になったのに、それからわずか2カ月で接種勧奨が取りやめになりました。

岡部 そうそう、ワクチンがない新しい病気が出てくると、「ワクチンはまだか、明日にもできないか」と口々に言うんです。しかしワクチンは健康な人に使うものですから、効果が見えにくく、安全性も厳密なものを求められます。完成までには、短くても1〜2年はかかるでしょう。しかも慎重にステップを踏み、やっとのことで世に出たワクチンに一つでも短所があったら、すぐにそっぽを向かれてしまう。2009年に流行した新型インフルエンザでは、国産のワクチンが完成しました。輸入ワクチンも購入されました。しかし、その時には流行がピークを過ぎ、皆が興味を示さなくなっていた。すると、それらは廃棄するか、製薬会社に費用を補償しなければなりません。今度は「無駄遣い」と、おしかりを受ける。

――勝手ですよね。

岡部 まあ......というわけで、今後流行がどうなっていくかが分からない現時点では、ワクチンの開発も治療薬の使用についても、良い、悪いはなかなか言えません。ただ「困っているからワクチンや治療薬をただちに使う」ではなく、科学的な考えに基づき、安全性と効果はしっかり把握して使用されるべきだと思います。

――最近、病院での感染を心配し、子供の予防接種率が落ちていると聞きます。第2波に備えるには、まずは今ある必要なワクチンの接種を受けておくことが大切ですよね。

岡部 私が常々強く言っているのは「コロナだけが病気じゃないよ」ということ。今はコロナが目立っている状態ですが、実際はインフルエンザの方が感染者数も死亡者数も多い(*1)。結核での死者数(*2)もコロナより上。6月に「川崎病」の発見者である川崎富作先生が亡くなりましたが、川崎病は1年間に1万5000人くらいの子供が発病しています。麻疹(はしか)がはやると、いわゆる先進国でも死者が急増します。

 先ほどのHPVワクチンで言えば、子宮頸がんで亡くなる方は国内で年間3000人近い。これまでに国内で新型コロナウイルス感染症(COVID−19)で亡くなった方より多い数です。必要なワクチンの予防接種率を落とさない、普段できることをやっておくことが非常に重要なんです。コロナについては、高齢者と持病のある人が重症化しやすいことが明らかですから、持病を持つ人は普段からその病気をコントロールすること。糖尿病があるから悪いのではなく、糖尿病をコントロールしていないことが悪いのです。

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