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7.1施行直前特集 "盲点"を知れば万全!  荻原博子「最強の相続」

2019年6月30日号

▼借地でも税がかかる
▼「高額仏具で税対策」の落とし穴...

 民法の相続分野の規定が約40年ぶりに大改正され、多くが7月から施行される。富豪でなくても、遺産があれば、常に骨肉の争いになる恐れは免れない。本誌連載でおなじみの経済ジャーナリスト、荻原博子氏が相続の基本の「き」から意外な盲点までを徹底解説。

「うちにそんな財産はないから対策は必要ない」
「お金は残さず使い切っていくから大丈夫」
「相続」と聞いてもどこ吹く風、自分には関係ないと思い込んでいる人は少なくありません。
 でも、そう決め込むのは大間違い。2016年の司法統計によれば、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち、実に3分の1が遺産額1000万円以下なのです。およそ75%が5000万円以下。額の大小にかかわらず裁判になると、骨肉の争いに発展しかねません。
 家計の金融行動に関する世論調査(18年)を見ると、60代の貯蓄は平均1849万円で、70歳以上の貯蓄平均は、1780万円。
 つまり、死ぬ時に1000万円以上の貯蓄がある世帯は少なくないということ。持ち家や土地などがあれば、さらに相続財産は増えます。それだけに元気なうちから対策を立て、相続で"争族"にならないよう準備をしておく必要があるのです。

 ◇相続税がかかる財産は?

 相続税は、亡くなった人が残した財産の全てにかかるわけではありません。

 相続税がかかる財産には、現金や預貯金、貸付金、株式などの有価証券、車や貴金属などの動産、土地や建物などの不動産、賃借権、特許権、著作権といったものがあります。その他、生命保険や退職手当金も相続財産とみなされますが、これらには、それぞれ一定金額まで相続税がかからない控除があり、生命保険や退職手当金の非課税限度額は【500万円×法定相続人(民法で定められた相続人)の数】となっています。

 <意外な盲点!> 借地でも相続財産に

 わが家は借地に建てた家で、地代を払っている土地だから相続は関係ないと思っている人はいませんか?
 しかし、その場合、土地が自分のものではなくても借地権が発生し、相続財産として評価されます。
 たとえば30年前に借りた土地の前に駅ができ、いつの間にか一等地で時価5億円になっていたとしましょう。この場合、借地権は3億~4億円となっており、この分を相続するとみなされ、膨大な相続税がかかってくる恐れがあります。相続税を払えないなら、借地権を売って引っ越しせざるを得なくなるかもしれない。
 借地でも油断は禁物です。

 ◇相続税がかからない財産は?

 一方、相続税がかからない財産には、墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など、祖先を祀(まつ)るために必要なものがあります。また、葬儀費用なども相続税がかからないよう配慮されています。

 さらに遺族へのお悔やみである弔慰金や花輪なども、「世間一般の常識的な金額」であれば、相続税はかかりません。
「世間一般の常識的な金額」の目安は、業務上の死亡の場合、給与(賞与以外)の3年分、業務上の死亡でない場合には給与の半年分までが非課税で、これを超えるものは退職金に含めて課税される可能性があります。
 また、交通事故などで死亡すると、遺族に損害賠償金が支払われますが、その賠償金のうち、遺族の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料については、相続税も所得税もかかりません。ただし、死亡するまでの医療費や付き添い看護費などに対する賠償請求権や逸失利益(被害者が生きていれば得られていたと思われる所得の補償金)などは相続財産に含まれます。

 <意外な盲点!> 高額な仏壇は相続税逃れと

 以前は仏壇や仏具が非課税であることを利用した"抜け道"がありました。つまり、骨董(こっとう)品として売却できるような高価な仏壇や金製の仏具などを買い、死後、子孫に残すというケースです。ところが最近は税務署も目を光らせるようになり、明らかに高額と思われる仏壇や仏具については、相続税逃れと判断される恐れがあります。

 ◇相続人の範囲は?

 先に法定相続人について触れましたが、民法では左上の図のように相続人の範囲を定めています。

 亡くなった人に配偶者がいたら、まず配偶者が相続をする。配偶者は常に法定相続人になるのです。さらに子どもがいれば、子も法定相続人になりますが、子が亡くなっていると、その子ども(孫)が、孫も亡ければ、孫の子(ひ孫)がなる。
 亡くなった人に子どもや孫、ひ孫がいない場合は、配偶者と両親が法定相続人になり、両親が揃(そろ)って他界している場合は祖父母がなる。
 また、死亡した人に子や孫、ひ孫のほか両親や祖父母もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥(おい)や姪(めい)がなるのです。
 ちなみに相続で受け継ぐ財産の中に、借入金や未払金のような負の財産があり、これが相続財産よりも多いと、借金を返済していかねばなりません。この場合、「相続の放棄」が可能です。
 また、手続きは煩雑ですが、相続人全員の合意があれば、借金の支払いを相続財産の限度とする「限定承認」も使えます。

 <意外な盲点!> 養子にも相続権

 財産を相続する時には、相続する子どもが多いほど、相続税を軽減できます。
 この子どもとは実子に限らず、養子にも実子と同じ相続権があります。実子がいる場合、養子は1人まで、実子がいない場合には2人まで相続税の控除が可能になります。ですから、資産がたくさんある人は、孫の1人を養子にすれば、その分、相続税の控除額が600万円増えるのです。
 ただし、養子になることを本人が拒否する場合もあるので、事前の根回しはしっかりと。

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