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7・1 相続法40年ぶりの見直しまるわかり 

2019年6月 9日号

▼配偶者の死亡後... 持ち家で親子同居が絶対お得ほか

 相続法が1980年以来、約40年ぶりに大幅に見直された。すでに今年1月から段階的に新制度が施行され、7月1日以降も相続の仕組みが大きく変わる。特に多くの人に影響を与えそうな項目を選び、変更点の仕組みと対策がまるごと分かる解説をお届けする。

 横浜市の高台に建つ戸建て住宅に住む和美さん(62)は5年前、長年連れ添った夫に先立たれた。その後、同居する亡夫の父母を介護してきた。
「昨年、義父を看取(みと)った直後からあまり付き合いがなかった夫の弟の二郎が頻繁に訪ねて来るようになりました。『あなたは相続人ではないから、この家に住む権利はない』と声高に言い、転居するよう促されているのです」
 まるで昭和のメロドラマのような話だ。しかし、7月1日の法改正後、和美さんはしかるべき対処をすれば泣き寝入りする必要がなくなる。
 ここで少し用語解説をしておこう。相続税の解説でよく使う「被相続人」は遺産を残して死んだ人のこと。その遺産を相続する人は「相続人」という。民法は〈被相続人の配偶者は、常に相続人となる〉(890条)と規定するほか、〈被相続人の直系尊属〉(889条1項1号本文)も相続人とする。つまり、子や孫も相続人になり得るわけだ。
 和美さんのケースを左ページの上図に示した。義父から見た続柄で表記すると、妻の花子が存命とすれば、相続人は花子と次男の二郎だ。和美さんは相続人ではなく、その意味では二郎の言い分は正しい。だが、和美さんはあまりに不憫(ふびん)ではないか。「税理士法人安心資産税会計」(東京都北区)の高橋安志社長に聞いた。
「現行制度では、相続人以外の人は、被相続人の介護や看護にどんなに尽くしたとしても、相続財産を取得することはできません」
 かつては「嫁が夫の両親の世話をすることは当たり前」という考えをもつ人が多かった。和美さんのような立場の人が遺産を手にできるのは、被相続人が遺言書に明記したケースに限られていた。現状に対し、「献身的な貢献をしても報われないのは不公平だ」という声が高まり、貢献を考慮する民法改正が実現。施行日は7月1日だ。
 ここで再び用語解説をすると、民法のうち相続に関する部分を「相続法」と呼び、今年1月から段階的な施行が続いている。
 高橋氏が解説する。
「7月1日施行の新相続法は『特別寄与料の請求』という制度を創設しました。(和美さんのような)被相続人の親族が、被相続人の介護や看護に無償で貢献した場合、相続人に金銭を要求できる内容です(左ページの下図)」

 ◇「自筆証書遺言」の要件緩和も

 問題となるのは、特別寄与料をどう算出するかだ。高橋氏と同じ事務所の相続アドバイザーを担う大塚政仁税理士は、こう説明する。

「請求できる金額は、介護や看護を外部の業者に任せた場合にかかる額を参考にして算出することになりそうです。請求する人は、労力に見合う程度はもらえるでしょう。ただ、遺産が多い場合は、相続人が取得するほどの金額を手にすることはなさそうです」
 次のようなケースではどうか。和美さんが再婚し、引き続き重雄さんや花子さんの介護や看護をした場合だ。前出の高橋氏が言う。
「長男の妻が『姻族関係終了』の届け出をしない限り、再婚しても一親等の姻族、つまり親族のままですから、特別寄与料の請求権はあります」
 特別寄与料の権利を行使するには期限がある。相続の実務では、被相続人が死亡するタイミングを「相続の開始」という言い方をする。相続対策などを指南する「アウェイクコンサルティング」(東京都千代田区)の畑山恵子税理士は、次のように注意を促す。
「相続人が相続の開始を知った時から6カ月以内、または被相続人の死亡から1年以内のいずれか早い時期までに、家庭裁判所に請求する必要があります」
 考えてみれば、もし相続人が和美さんのような親族の貢献を正当に評価すれば、和美さんが特別寄与料を請求せずに済む話だろう。畑山氏は事前に対処できると説く。
「被相続人が自分の財産を大切な人に『生前贈与』するか、自分の死後に『遺贈』できるように準備することが望ましいと思います。体が丈夫で、判断能力があるうちに、遺言書を作成するなどの相続対策をしておくとよいでしょう」
 生前贈与は生きているうちに自分の財産を誰かに渡すこと、遺贈は自分の死後、相続人、それ以外の人や団体に財産を渡すことをいう。前述のとおり、特別寄与料の請求権があるのは被相続人の親族で相続人でない人だけ。自分の死後、友人など親族でない人やお世話になった団体に財産を渡したい場合、その人や団体に遺贈する旨、遺言書に明記しておく必要がある。
 そこで、遺言書の仕組みと法改正の影響に話を転じよう。一口に遺言書といっても、主に三つの方式があることはご存じだろうか。
 まず、「自筆証書遺言」は遺言者が遺言の内容を全部手書きで作成する方式。いつでも自分の意志で作成でき、自由度が高い。三つのうち最も手軽だ。
 二つ目の「公正証書遺言」は遺言者が遺言の内容を話し、法律の専門家である公証人が文章にまとめて作成する。公証人が遺言人の遺言能力の確認などをし、2人以上の証人が立ち会う必要がある。公証人が原本を厳重に保管する仕組みであり、信頼性が高いといえる。
 三つ目の「秘密証書遺言」は遺言者が手書きで作成し、公証人が封印して保管する。あまり一般的でない方式だ。
 今年1月から、これらのうち自筆証書遺言の要件が緩和された。高橋氏はそのメリットをこう説明する。
「パソコンで作成した財産目録や預貯金通帳のコピーが、自筆証書遺言に添付する財産目録として認められるようになりました。遺言者の負担が軽減されると考えられます」
 もっとも目録や通帳のコピーには署名押印が必要だ。裏表面ある場合は、それぞれに署名押印し、住所を記入したり、割り印を押すことが望ましいという。改竄(かいざん)を防ぐためだ。
 遺言書の目的は死んだ人の意向どおりに相続や遺贈が実行されることだ。取り分が少ない相続人が不満を抱き、「誰かに遺言書を書かされたのではないか」「作成時に意思能力があったのか」などと主張し、時として裁判を起こして遺言書の効力がないことの確認を求めることがある。疑義をもたれないように作成することが重要なのだ。
 例えば、添付した登記簿謄本や通帳に印字された日付が、遺言書の作成日より後だとすれば、誰かが改竄したものと疑われてもおかしくない。日付や住所といった事実関係に誤りがないよう念を入れたい。前出の畑山氏が言う。
「自筆証書遺言は記載内容の不備を指摘され、有効性が問題になるリスクがあります。そのほか、相続人が自筆証書遺言があること自体を知らないことも。今回の改正では、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も創設されました(来年7月10日施行)。保管の申請時には、法務局で不備がないかを確認してくれるので、法的要件を満たさず無効になるリスクは減りそうです」

 

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