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荻原博子 よりよく生きるための生前整理 最低限の「財産チェックリスト」付き

2019年3月24日号

 人間、死んだら終わりではない。死んだ後も葬儀があり、財産分与があり、墓の問題がある。ならば元気なうちに準備して、残された家族にできるだけ迷惑をかけないようにしたい。本誌連載でおなじみの経済ジャーナリスト、荻原博子さん流の「終活」とは―。

 人生も後半にさしかかると、悔いなき最期のために準備を始める人が増えていると感じます。
 生きているうちから財産分与や自分の葬儀のこと、お墓のことなどを家族や身近な人に話しておくのは縁起でもないと思われる人がいるかもしれません。でも、生前にある程度、死後のことを決めておくと、残された人の負担は減るというもの。特に遺産の相続については、亡くなった本人の方針が明確に示されていないと、家族内で骨肉の争いを引き起こす火種にもなりかねません。
 さらに、これから大問題となるのが独居老人の増加。
 以前、本誌の連載でも書きましたが、最近、ゴミの中から次々と多額の現金が見つかっています。昨年末には、高松市のリサイクル業者が、回収した古紙の中から2841万円を発見しています。
 こうしたお金は、本来なら家族に残してあげるべきものだったかもしれません。それが、見も知らぬ第三者の手に渡ってしまうという現実。これがわが身とならないよう、ある程度のお金を持っている人なら、その処分法も含めて、今から「終活」を考えておくのが大切です。

 ◇まずは「よりよい人生」を生きる

 自分が死んだ後のことを考える前に、残りの人生をいかによりよく楽しく生きるかを考えることが先決です。

 そのためには、これまでの自分の人生を振り返ってみることです。「本当はこんなことがしたかった」ということがあれば書き留めてみるのはどうでしょう。書くのは市販の「エンディングノート」でも、大学ノートでも構いません。
 少し丁寧に来し方を振り返るなら、「自分史」を書くという方法もあります。
 私の父は生前、自費出版で『信は力なり』という自分史を出しました。父自身が自らを振り返るきっかけになっただけでなく、残された家族、子どもや孫に至るまで、父の生き方を心に刻める、いい記録にもなっています。
 自費出版なので費用はピンキリですが、取材力のある人にお願いする場合でも200万円程度、自分で編集までして印刷だけお願いするケースだと10万円以内で済むこともあります。
 これまでの人生を書き出してみれば、やり残したこと、やりたかったことが見えてきて、もう一度前向きに人生を生きようという気力も湧いてくるでしょう。

 ◇相続紛争の3割が1000万円以下の財産で

 残せる財産はそれほど多くないので、死後に子どもたちが揉(も)めることはないだろう―こんなふうに考える人は多いようですが、大間違い!

 上のグラフは2016年度の司法統計で、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち認容・調停成立件数。なんと1000万円以下で裁判になる案件が30%以上にのぼります。5000万円以下だと75%です。
 財産の額は少なくても、家族が一度、裁判で争うような事態になると、感情のもつれが生じ、その溝はなかなか修復されません。大事な子どもたちがこんな目に遭わないよう、あらかじめ自分の財産を把握し、死後、どう分けるのかを考えておくことです。

 ◇「財産チェックリスト」を作っておく

 財産整理の一歩は、「財産チェックリスト」を作ることから。前述した「エンディングノート」にでも大学ノートにでも、書き留めておいてください。127ページの表のように、負債も含めて財産になりそうなものは一通り書き出してみることです。それによって改めて、「自分にはまだ借金がたくさんある」とか「現金が少ない割には保険が多い」とか、自分の置かれた現実も見えてきて、死ぬまでに何をしておけばいいのか自明になるはずです。

 加えて、残された家族が財産で争わないために、遺言書も作成できればベストです。

 ◇遺言書は元気なうちに書く

「私はまだ元気だから、遺言などは必要ない」などと思っている人もいるかもしれません。でも、理想は逆。遺言書は元気がなくなってからではなく、元気なうちに書いた方がいいのです。

 なぜなら遺言ができる人は、15歳に達した人(民法第961条)、もしくは遺言能力のある人(民法第963条)となっていて、認知症の疑いがあったり、著しく高齢だと、後者の遺言能力が問われる恐れがあるからです。
 また、もし認知症になっていたら、法律行為をする場合にさまざまな制約がかかります。成年後見人などがいると、その同意も必要となってきます。もちろんマダラ程度の認知症なら一時的に判断能力が回復することはありますが、その場合も、医師2人以上に立ち会ってもらわなくてはなりません。その時に、必ずしも正常な判断能力があるかといえば、そうとは限らない。
 遺言はその都度、状況を見ながら変えてもいいもの。はじめから完璧を目指さず、とりあえず書いておいて、気が変わったら後で修正すればいいのです。

 

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