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日本一わかりやすい 荻原博子のトクする「家計学」 「年金」を使い倒す!

2018年12月16日号

「人生100年時代」、年金支給も70歳からに繰り下げられる可能性が出てきた。老後の不安は募る一方だが、本誌連載「幸せな老後への一歩」でおなじみの荻原博子氏に任せれば道は開ける! 新シリーズ初回は公的年金制度の誤解を解き、より多くもらう裏技を詳述。

 ◇公的年金制度が「破綻」しないこれだけの理由

「年金が破綻するのではないか」と思っている人は多いようです。公的年金には国民年金と厚生年金があり、前者には自営業者や学生、会社員・公務員などの配偶者が加入。会社員や公務員などは厚生年金と同時に国民年金にも加入しています。

 年金財政を見ると、将来支払わなくてはいけない年金(受給権が発生しているもの)は1000兆円以上あるのに、年金積立金は約160兆円しかない(2017年度)。数字の上で見ると、明らかに「破綻」しています。
 けれど、年金は一度に支払われるのではなく、毎年支払われていきます。また、積立金がなくなっても、税金を投入すれば維持できるので、政府が財政破綻していないのに、年金だけが破綻するということはありません。
 もし、政府が健在なのに年金だけが「破綻」したら、受給資格がある人(10年以上加入している人)全員が、一斉に国を相手取って訴訟を起こすはずです。
 政府は、デフレの時に払いすぎていた年金支給額を13年10月~15年4月の間で2・5%カットしましたが、これが憲法違反に当たると全国で1500人以上が国を相手取って訴訟を起こしています。2・5%のカットで訴訟が起きるのです。年金をゼロにするなどといったら年金受給資格者全員が国に賠償請求し、それだけで国は確実に「破綻」するでしょう。
 国には、年金を「破綻」させないための方策があるのです。
「破綻」を防ぐ方策とは、
(1)保険料を上げる
(2)給付額を減らす
(3)支給年齢を上げる
(4)パートなど保険料を支払う人を増やす
 (3)までは、今まで取られてきた方策ですが、16年10月から新たに(4)の保険料を支払う人を増やす方策が出てきました。これは従業員数501人以上の企業のパートを皮切りに、最終的に約300万人を厚生年金に加入させようというもの。今年6月時点で40万人を超えています。
 特に、会社員の夫の扶養に入っていて、年金保険料を払わなくても将来年金がもらえる主婦(第3号被保険者)約130万人がターゲット。厚生年金なので保険料を払う側からだけでなく、雇用主からも半分の保険料を徴収できます。
 (1)から(4)のほかにも、税金を投入するという奥の手もあります。
 いま支給されている老齢基礎年金の半分は、税金です。以前は税金の割合が3分の1でしたが、04年に成立した年金制度改正で09年に2分の1に引き上げられました。この割合をさらに上げれば、年金は「破綻」しません。
 ただ、「破綻」しないけれど負担が増えて、もらえる額は減ることになります。

 ◇検討されている70歳受給はトクなのか?

 前述の(1)から(4)の方策のうち、近々実現しそうなのが、(3)の支給年齢を上げる。

 政府は「人生100年時代」と喧伝(けんでん)し、70歳くらいまで働こうというキャンペーンを張っています。
 背景には、70歳まで受給年齢を引き上げたい意向があり、それに向けた布石が着々と打たれています。
 たとえば、雇用保険。これまで65歳未満までしか加入できませんでしたが、昨年1月からは65歳以降でも「高年齢被保険者」ということで加入できるようになりました。これで70歳まで働いて仕事を辞めた時にも失業給付を受けられます。
 さらに今、企業では「継続雇用」で、60歳を過ぎても本人が希望すれば65歳まで働けますが、これを70歳までに引き上げる検討もされ始めました。
 きわめつきは11月2日に厚生労働省が出した、年金受給開始を70歳まで遅らせるケースの試算。
 年金は65歳で支給が開始されますが、70歳までは自分の都合に合わせて受給を遅らせ、その分、割り増しの年金がもらえます。この具体的な試算金額を初めて公表しました。
 厚生労働省が示した試算を見てみましょう。
 60歳まで働いて65歳で年金をもらうと、年金額は月21万8000円。65歳まで働いて65歳から年金をもらうと月22万8000円。ところが、70歳まで働いて70歳から年金をもらうと、なんと月額10万3000円も増えて月33万1000円。
 これだけ見ると、やはり70歳まで働いたほうがいいと誰もが思うでしょう。
 けれど、ここには三つの落とし穴があります。
(1)厚生労働省のモデルケースは、夫が20歳から40年間会社に勤め、妻は20歳で結婚して40年間専業主婦という設定。なぜ、この設定かといえば、扶養されている会社員の妻は、40年間保険料を一銭も支払わなくても老後に満額の老齢基礎年金がもらえるので、世帯として払った保険料に対してもらう年金の割合が最も高くなるから。でも、設定がちょっと現実離れしています。
(2)モデルケースでは60歳から64歳までの給料が月35万1000円、65歳から69歳までの給料が月30万5000円になっています。けれど、60歳を過ぎてこれだけの給料をもらえる人が、どれだけいるでしょうか。
(3)この試算のほかに、60歳から69歳までの間、短時間労働者として月10万円弱の給料で働いても、70歳まで年金の支給を延ばすと32万4000円になる試算もあります。でも、60歳から69歳の間、月に10万円弱で暮らしていけるのでしょうか。
 なんとしても年金をもらうのを65歳よりも後にしてほしいということでしょう。
 なぜなら、65歳以降に年金をもらう人の割合は、16年度末で年金受給者全体の1%台。笛吹けど踊らずということになっているからです。

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