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マンション危機 こうして乗り切る 老朽化、管理組合の破綻......ああ、資産が溶ける!

2018年11月11日号

 <マンション危機(クライシス)>

 ◇他人ごとでない免震装置偽装 施工の不正の見抜き方

 分譲マンションが日本で初めて売り出されたのは65年前。その後、何度もブームが起き、現在では日本人の8人に1人はマンションに住んでいる。ところが、歴史を重ね、総戸数が増えた分、「老朽化」など新たな問題が生まれている。どう乗り切ればいいのか?

 東京都が日本初の分譲マンション「宮益坂アパート」(渋谷区渋谷)を売り出したのは1953年。その後、60年代前半に第1次のマンションブームが起き、60年代後半に第2次、70年代前半に第3次、70年代後半には第4次のブームがあった。
 俳優の三浦友和(66)と山口百恵さん(59)が結婚し、新築の高級マンション「ペアシティ・ルネッサンス高輪」(港区)に入居したことが話題になったのは80年。この前後から都内など大都市圏では高級マンションが増え、世間がバブルに踊った80年代後半には第5次マンションブームが起きた。「億ション」(分譲価格が1億円を超えるマンション)という言葉が生まれたのはこのころだ。
 あれから約30年。国土交通省の調べによると、2017年末現在で全国には約644万戸もの分譲マンションがある。総人口の8人に1人はマンションに住んでいる計算に。日本人の住居として完全に定着した。
 半面、ここ数年は老朽化マンションの問題が深刻化しつつある。宮益坂アパートこそ既に取り壊されているが、1950年代に分譲されたマンションが現存するのだから、むべなるかな。建て替えをめぐるトラブルも起きている。
 そもそも建て替えは、全世帯のうち5分の4の賛成が必要であるなどハードルが極めて高い。2018年4月1日現在で建て替えは実施準備中のものまで含めて274例しかない。
 さらに近年、指摘される問題が、「空き家マンション」。13年の総務省調査によれば、全国の空き家の数は戸建てとマンションを合わせて計約820万戸。全住宅の13・5%も占めた。来夏に発表される予定の18年の調査結果は、1000万戸をオーバーする見込み。全住宅の15%を超える。
 そのうちマンションの空き家の割合がどれくらいなのかの統計はないが、13年度版の国交省「マンション総合調査」によれば、全国のマンションで3カ月以上空室となっている割合は2・4%。古いマンションほど空き家になっており、1969年以前に建てられたマンションに限ると、空室は8・2%にも上った。
 戸建ての空き家の場合、周辺住宅に防犯面や景観面などで迷惑を及ぼす可能性が指摘されているが、それはマンションも同じ。ましてマンションは、空き家になって住民の所在も分からなくなると、管理費や修繕積立金が徴収できなくなる恐れもある。
「空き家率が高まると、工事費が集まらず、住民の合意も得られないので、修繕が進まず、廃虚マンションになりかねません」(マンション問題に詳しいさくら事務所の長嶋修会長)
 一方、「老朽マンション」に明確な定義はないものの、一般的には建物に傷みが目立ち、外観が悪いだけでなく、住民の生活にも支障が出ている物件を指す。バブル期に分譲されたものに多いとされる。
 91年のバブル崩壊から27年。現在、築30年以上のマンションは約184・9万戸ある。これがバブル期か、それ以前に建てられた物件なので、老朽化マンション候補と言えるだろう。
 せっかくの資産が溶けてしまってからでは遅い。今のうちに危機の乗り切り策を探ろう。

 ◇住民の高齢化と修繕積立金未納問題

 マンションは住民が高齢化すると諸問題が起きやすい。代表的なトラブルが、年金以外に定期収入がない住民が増え、安くない月々の修繕積立金が支払えない住民が出てくるケース。

 良好な居住環境を確保し、資産価値も維持するためには、計画的な修繕が不可欠。だが、その工事費は高額になるので、一括徴収は困難。このため、マンション所有者で構成する管理組合が「長期修繕計画」を作成し、月々の修繕積立金を払い込むのが一般的だ。
 ところが、これを支払えなくなる住民が出てくる。長嶋氏は「新築マンション販売時の修繕積立金の設定にも問題がある」と指摘する。一体、どういうことなのか?
 それを解き明かす前に、まずマンションの管理に関わるお金について整理しておきたい。それは大きく分けて(1)管理費(2)修繕積立金。管理費はエレベーターの点検費や共有スペースの清掃費などに使われる。一方の修繕積立金は修繕工事が主な用途で、管理組合にプールされる。いわば住民共有の「積立貯金」だ。
 管理業務を実際に行うのは管理組合から委託された管理会社だが、新築マンションの場合、それが不動産会社など売り主の関連会社であることが多い。
 この場合、売り主は販売時に管理費を極力高めに設定するという。高い管理費が関連会社に毎月入るからだ。一方、修繕積立金はなるべく低額に設定される。
「売り主と修繕積立金は直接関係がないですから。ローンと管理費、修繕積立金の合計額が低くなるほど、購入のハードルが下がります」(長嶋氏)
 つまり、売りやすくするには管理費を高くする分、修繕積立金は低くしたほうが好都合というわけだ。この構図に問題があると長嶋氏は指摘する。そもそも最初から計画に無理が生じ、いざ修繕の際、積立金では不足する場合があるという。
「そんな時、それぞれの住民が数十万から100万円単位の一時金を拠出したり、管理組合でローンを組んだりする方法もありますが、全員が足並みを揃(そろ)えるのは極めて難しい」(同)
 これでは八方塞がりだ。
 そうなる前の策として、長嶋氏は次のように提言する。
「毎月の修繕積立金を段階的に増額していくプランを採用している管理組合が多いのですが、これは危険だから考え直したほうがいい。ずっと一定金額を支払う均等方式のほうが老後の負担が軽く、計画的な積み立てもしやすいのですから」
 昨今の建設費高騰で修繕費用が増大していることもあるので、管理組合で一度、修繕計画全体を見直してみるといいだろう。
 そもそも修繕積立金の段階的増額は、マンションの売り主があらかじめ決めていることが多く、これも売りやすくするためなのだという。
 ちなみに「修繕積立金は1平方メートルあたり月200円が目安です」と長嶋氏。一般的な3LDK(70平方メートル)なら1万4000円。積立金の支払いが均等方式であろうが、これより安すぎる場合、将来の修繕が危ぶまれるので、早めに管理組合の総会などで声を挙げるべきだろう。
 都が2013年に発表した実態調査によると、長期修繕計画のないマンションも約14%あるという。こういうケースも無論、管理組合で話し合ったほうがいい。

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