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「物忘れ」「認知症」は怖くない! きょうから実践 すき間時間活用 最新・脳トレーニング術

2018年11月11日号

「人生100年時代」と言われるようになった。だが、晴れて長寿を迎えられようが、脳が衰えてしまっては幸福度が落ちてしまう。体だけでなく脳も若々しく健康でいたい。どうすればいいのか? 脳科学のエキスパートで医学博士の加藤俊徳氏に対策を聞いた。

 友人の名前が出てこない、もの忘れが多くなった、このままでは認知症になるのでは......。
 シニア世代のみならず、脳の老化を気にしている人は少なくないはず。
「人間の脳は、胎児のときから形成がはじまり、生まれてから1年以内には、すでに脳の神経細胞数はピークに達しています(1000億個)。脳細胞はほとんど新生することなく、その後は毎日、どんどん減ってゆくのです」
 そう語るのは脳科学が専門の医学博士・加藤俊徳(としのり)氏。となると、脳細胞は加齢とともになくなってしまうのか?
 加藤氏が続ける。
「減るとはいうもの、脳にはもともと1000億にもおよぶ細胞があります。これは200歳生きたとしても、脳が成長するためには尽きる心配はありません」
 とはいえ、年を重ねるごとに細胞の全体量は減っているわけで、その分、能力は低下するのではないか。
「たしかに、50歳を過ぎると脳はより老化していきます。これを放置しておくと、能力も落ちます。もっとも、脳には未熟なままで使われていない細胞がたくさんあります。私は『潜在能力細胞』と呼んでいるのですが、これを活用することで老化を防止できるのです」
 加藤氏は、1995年から2001年まで米国ミネソタ大学放射線科で「MRI(注1)脳画像法」を研究。これまでに胎児から超高齢者にいたる1万人以上を、MRI画像を用いて診断・治療してきた。
「脳の神経細胞からは神経線維という回路が伸びています。神経細胞が活発に働くと、神経線維が集まる白室が大きくなり、扇状に広がります。これを髄鞘(ずいしょう)形成といいますが、MRIで観察すると樹木の枝が伸びているように見えるので、私は『枝ぶり』と呼んでいます」
 つまり、脳には同じ役割をもった細胞の集団が近くに集まる性質があるのだ。
「それぞれの集まり(部位)を私は『脳番地』と名づけ、約120カ所に区分しました」
 たとえば後頭葉には視覚系の細胞が集まり「基地」を形成している。そこで視覚系脳番地と命名された。
「枝ぶりは脳番地へと伸びていて、脳番地が発達すれば、それに応じて枝ぶりは枝先を分岐させ、成長します。その過程で不足があれば、脳番地は潜在能力細胞も活用するのです」
 加藤氏は1万人を超えるMRIデータに基づき、「脳番地はトレーニング次第で、何歳になっても成長を続けることが明らかになりました」と、解説する。
 逆に、「使わない脳番地が増えると、脳自体の機能が衰える。脳番地が衰えると人は一気に老けてしまいます」と説明。脳の老化は脳番地と深い関わりがあるのだ。
 同窓会に出席すると、同じ年なのに、頭が活発に働いているように映る旧友もいれば、記憶力がめっきり落ちているように見える者もいる。これも脳番地の衰えの差なのだという。
「MRI画像を見ると、同じ脳はひとつとしてありません。顔が違うように、脳番地も、個人によってすべて異なるのです」(加藤氏、以下同)
 同年齢でも見た目に差が出るように、脳番地にも違いが出る。だから、記憶力を保てている人、そうでない人に分かれてしまう。
「脳番地は、ライフスタイルで決まります。老化の進行具合と同様です」

 ◇「運動」「会話」の不足で脳は老化

 具体的には、まず睡眠が脳に大きな影響を与えるという。

「1日7時間以上眠らないといけません。眠っている間に脳は老廃物を排除し、記憶や経験を定着させます」
 睡眠不足は脳を老けさせてしまうのだ。さらに、「何時に寝るか、これも重要」なのだという。
「脳には松果体という部分があり、そこからメラトニン(注2)というホルモンが分泌され、人体に睡眠を促します。これは午後9時ごろから分泌されるので、それに合わせて眠ると、脳の調子もよくなります」
 昼夜逆転生活は脳によくないようだ。影響するのは睡眠だけではない。
「適度な運動も脳を老化させないためには欠かせません。国際的な研究報告を見ても、1日1時間以上運動している人とまったく運動していない人では、認知症になる確率が違っています」
 運動不足は、体も脳も老化を加速させる。
「社会的な孤立、コミュニケーション不足も、脳の老化を促進させます」
 サラリーマンが定年退職後、認知症やアルツハイマー病を発症する一因は、孤立なのだという。
「人と会話をすると、相手がとっさに何を言い出すか、分かりません。その言葉を受け止め、自分の意見を返す。これが脳の活性化につながるのですが、会話が減ってしまうと、脳のほうも衰えてしまいます」
 女性は男性と比べて、人づきあいの範囲が広く、コミュニケーションをとる機会が多いとされている。
「独身女性は老けないけれど、独身男性はすぐ老けるといわれるのもそのせいではないでしょうか」
 生活のパターンがマンネリ化するのも老化の原因となる。
「同じ脳番地をいつも同じように使っていると、脳は勝手に省エネを始めてしまいます。すると、潜在能力細胞を働かせる必要がなくなり、活性化は望めず、老化することになります」
 外に出るのは面倒だし、人と会って話をするのはおっくう。家にこもって、テレビでも見て、なんとなく一日を過ごす。そんなライフスタイルは脳を老化させてしまい、ひいては認知症へとつながりかねないのだ。
「認知症には、いまのところ治療薬はありません。予防するしかないのです」
 加藤氏は、脳トレーニング(以下脳トレ)によって老化防止と認知症の予防を提唱している。
 加藤氏の新書『50歳を超えても脳が若返る生き方』(講談社+α新書)にも書かれ、強調されているが、「老化を防ぐには8つの脳番地を鍛えること」。
 それは、思考系、伝達系、運動系、感情系、理解系、聴覚系、視覚系、記憶系の各脳番地を指す。
「買い物も意識すれば脳トレに活用できます」
 出かける前、買い物リストを作るようにすれば、どんな品目が必要か考えることになり、それは思考系脳番地を活性化させる。
 目的の店へ徒歩で行けば、運動系脳番地が働く。
 店内を見てまわり、税抜き価格を税込み価格に計算してみたり、合計金額を計算したりすれば、記憶系脳番地が鍛えられる。
 店内を2巡するようにすれば、衝動的に買おうとしたリスト以外の余計なものが、本当に必要かどうか考えるようになって、感情系脳番地が刺激される。
「伝達系脳番地を鍛えるためには、積極的に集会などに参加することです」
 人づきあいや知らない人との会話が苦手な場合も、糸口はある。
「相手と目を合わせて、ほほ笑むようにしましょう。コミュニケーションは会話に限りません。雰囲気や表情も大切です」
 そこから会話が生まれてくるはずだ。
「耳」についても考えるようにしたい。
「老人性難聴は認知症の原因になる、というアメリカの研究発表があります。これを防ぐためには、ラジオを聴く習慣をつくることも必要です」
 また、ラジオを聴こうとすると、聴覚系脳番地がフル活動する。
 さらに音だけで内容を聴きとるには集中力が必要で、理解系脳番地も活発化させることになる。

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