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IT介護の全情報  安全安心 老親見守りの最前線! これが最新テクだ 「徘徊防止」「会話ロボット」「トイレタイム通知」

2018年8月19日号

 在宅介護の見守りや、介護現場向けに、ロボットや人工知能(AI)などの開発が相次いでいるが、宝の持ち腐れにならないためには「コツ」があった。職員の慢性的な人手不足の解消や負担軽減のため、うまく使いこなしている施設や介護者の「共通点」を探った。

「僕はね、歌が歌えるんだよ」
「歌って!」
「♪大きな栗の木の下で~」
 電子音の歌声を響かせるのは、コミュニケーション(会話)ロボットの「PALRO(パルロ)」。平日の午後、特別養護老人ホームのフロース東糀谷(ひがしこうじや)(東京都大田区)のデイサービスで、利用者の女性と"おしゃべり"をしていた。
 デイサービスの介護職員たちは入浴の介助やレクリエーションの世話、食事やおやつを出すといった作業に追われている。多忙な職員に代わって、利用者の話し相手になってもらいたいと、昨年導入された。
 最近、介護現場にはロボットや人工知能(AI)といった新しいテクノロジーが導入され始めている。高齢者の移動や入浴介助、見守りなど介護業務をフォローし、食事や歩行など高齢者の自立を支援する。さらに、排泄(はいせつ)の予測や睡眠状態を把握してデータ蓄積するシステムも登場した。
 フロース東糀谷を運営する社会福祉法人・善光会では、2013年から「介護ロボット・AI研究室」を開設し、IT(情報技術)機器を試験的に導入している。大房祐太副施設長が言う。
「介護現場では慢性的な人手不足で、経験の浅い職員が増えているのが問題になっています。そこで、ITや介護ロボットの技術に着目して、職員の仕事を手助けできるものはないか試しながら、働きやすい環境を整えています」
 厚生労働省は、団塊の世代がすべて75歳以上になる25年には、約38万人の介護人材が不足すると予想している。今年から外国人技能実習制度による介護人材の受け入れが始まったが、介護者同士の言葉や文化が異なる中で業務を円滑に進めるために、情報通信技術(ICT)の活用にも注目が集まっている。国は16年に50億円以上の予算をかけて、ロボット購入や開発のための助成事業を行った。今年4月に行われた介護報酬改定では、ベッド上の高齢者の動きを検知する「見守り機器」を、一定の基準で導入した事業所には報酬が加算された。
 ところが、実際のところ、現場での利用はそれほど進んでいないと言うのは、介護事業者のIT化を支援するビーブリッド(東京都台東区)代表取締役の竹下康平氏。
「補助金で賄えるようになったので機器を購入したのはいいが、使いこなせずに倉庫に置きっぱなしという話をよく聞きます。現場では何に困っているのか、介護職員の意見を普段から吸い上げている事業所では、職員の仕事をフォローする機器を見つけ、逆に使いこなしています。ところが"補助金ありき"の事業所は宝の持ち腐れになっています。ITは道具なので、これを使って何をしたいのか、目的が見つからなければ導入しても無駄になります」
 機器の使い勝手を高齢者に聞く以前の問題で、施設側が導入の目的をはっきりさせていないため、職員にも伝わらない。「高額なロボットを買うのなら、介護職員の給料を上げたほうがいい」と、導入そのものに否定的な意見が現場には根強く残るのもこのためだ。
 近隣の事業所同士がケアに関して意見を交換する機会も皆無に等しい。情報不足から、出入りの業者などに勧められたまま購入しているケースもあるという。
「使用例をもっと事業者の間で共有するようになると、使い勝手の良い機器とそうでない機器が分かってきます。『使い勝手が悪い』という情報は決してマイナスにはならず、それをメーカーがフィードバックすることによって、良い商品の開発につながる。ヒット商品が生まれれば、介護向けのIT機器に参入する企業も増えて、やがては産業創出のチャンスが生まれてきます」(竹下氏)
 積極的にIT機器を導入している事業所の例を参考にすることでメリットが分かれば、「介護ケアは人の手で行うもの」と否定的な意見を持っていた人の見方も変わってくる。そのためには、「IT機器を使うとこんなに作業がラクにできる」と、職員の作業の一つ一つを検証することが求められる。
 冒頭で紹介したフロース東糀谷は、竹下氏をはじめ介護業界が注目する施設の一つで、14年から「ハイブリッド特養プロジェクト」を行っている。IT機器を使って職員の作業がどれだけ改善できるか、職員の仕事を洗い出し、業務ごとの所要時間を算定した。その上で、所要時間が長い業務に機器を導入して、業務負担を25%削減するという数値目標を立てている。

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