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冬うつを吹き飛ばす食事術 気分の落ち込みを招く「栄養素不足」の恐怖 新井貴

2018年2月11日号

 日照時間が短く、寒さで活動量が減る冬は憂うつな気分(抑うつ)になりやすい。しかし、近年の研究で食生活が心の不調に関係することが分かってきた。国内ではまだ数少ない「精神栄養学」を専門とする医師と管理栄養士が勧める"冬に強い"食卓を紹介しよう。

 精神栄養学とは、心の病気の発症において、栄養素の不足や過剰、バランス異常との関係を明らかにし、食生活や栄養補充療法による治療法を開発する新しい学問分野。欧米では2000年ごろから、さまざまな栄養素と認知症やうつ病などとの関係を調べた研究成果が次々と発表されている。
 心の病であるうつ病に食事がどう関係するのか。国内の精神栄養学の第一人者として知られる国立精神・神経医療研究センター神経研究所・疾病研究第三部(東京都小平市)部長の功刀(くぬぎ)浩医師はこう話す。
「うつ病の人の脳内では、モノアミン神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの総称)の放出が減り、BDNF(神経栄養因子)というタンパク質が不足して、気分や感情を調節する機能が低下していると考えられています。モノアミンやBDNFなどが作られる過程で必要となる栄養素が不足すると、うつ病の発症リスクが高まると考えられます」
 たとえば、精神の安定や睡眠に深く関わっている「セロトニン」は必須アミノ酸のトリプトファンが原材料となる。快楽物質として知られる「ドーパミン」はアミノ酸のチロシンを原材料とし、同じく抗ストレス作用を持つ「ノルアドレナリン」と「アドレナリン」の前駆体でもある。そして、これらの原材料からモノアミンが合成される際にも鉄、メチオニン、葉酸などの栄養素が必要となるという。
 脳内の神経細胞(ニューロン)を育てる作用のある「BDNF」を減らさないことも大切だ。うつ病はストレスが続いた後に発症することが多いが、動物にストレスを与えると脳の海馬という領域のBDNFが減少することが分かっている。事実、うつ病で亡くなった人の脳を調べると、海馬でBDNFの量が減っていたという報告が多いという。海馬のBDNFはマウスの実験で、よく運動することで増えることが確認されているが、栄養素の摂取でも量を増やすことが可能。実際にうつ病の発症まではいかなくても、抑うつ気分には同様のメカニズムで栄養素が関係するのだ。
 では、どんな食品が有効なのか。功刀医師は、最も手っ取り早い食習慣として普段飲んでいるものを「緑茶」に替えることを勧める。東北大のグループが09年に発表した1058人の高齢者を対象にした調査では、緑茶を1日4杯以上飲む人は、1日1杯以下の人と比べて、うつ症状を持つリスクが約半分だったと報告されている。
「緑茶に含まれるうまみ成分のテアニンには、精神安定作用があるのです。私たちのマウスを使った実験では、テアニンを投与するとBDNFが増えることが観察されています。また、うつ病の患者さんでも1日250ミリグラムのテアニンを約4週間飲んでもらったところ、うつ症状がかなり改善しています」(功刀医師)

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