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大特集「医療不信」時代の処方箋

2016年11月13日号

健診&検診ホントのところ!

 検診は必要か、不要か。その有効性を問う論調を最近よく目にするが、一律に断じるのは早計だ。病気の種類、本人の体や年齢、ひいては経済状況にも関わってくる。一般的な健康診断(健診)も含め、自分に必要な検査を見極められる指針を専門家に取材した。
 一般的に検診は、行政が住民のために行う「対策型」と、自ら費用を払って受ける「任意型」の二つに分けられる。
 自治体が呼びかけるような集団検診は、「対策型」に該当するだろう。『本当は怖い!健康診断&人間ドック』(主婦の友社)などの著書があるおおたけ消化器内科クリニック(東京都港区)院長の大竹真一郎医師は「対策型は税金を利用して行う以上、費用と効果のバランスが大事」と話す。
「胃を診るなら医者の立場から内視鏡が一番精度が高いと言えますが、対策型検診としては長らくバリウムを飲むX線検査のみでした。しかし、対策型の一番の目的は、集団から病気の人を拾い上げて症状が悪化するのを防ぎ、最終的に全体の医療費削減につなげること。精度にこだわるというより、どこかで折り合いをつけることが求められる」
 一方で「任意型」は、プライベートな検診ともいえる。例えば大腸がんの対策型検診として行われる「便潜血検査」は自己負担額が少ない。しかし、「どうしてもがんが心配だから、内視鏡検査を受けたい」と、病気の見落としを防ぐことを優先する人は、自費による「任意型」検診となる。この場合、自ら検診施設を選ぶ必要がある。
「任意型では、検診を受けるデメリットも考えなければならない。X線検査の立体版であるCT(コンピューター断層撮影)検査は、精密な画像で診断できるメリットがありますが、放射線を使うため、多少なりとも被曝(ひばく)してしまう。CTを撮影するほどがんになるリスクが上がるという研究データもあり、毎年受けるのが妥当かどうか、個人の判断になる」(大竹医師)
 がんを予防し、早期に発見することが最大の目的なのに、検診を受けることでがんの危険を高めてしまっては本末転倒だ。しかし、家系にがんになった人が多かったり、気になる症状があるのなら、デメリットを踏まえても受けたほうがいい時もあるだろう。
 本特集では、通常よりも精密な診断ができるCTや内視鏡、超音波による検査を含め、同じ部位(臓器)でも複数ある検査法を取り上げ、比較した。また全身のがんがチェックできるという「PET(陽電子放射断層撮影)検査」など、一般的な検診に追加して行われる検査で分かること、分からないことをまとめた。
 自分はこの検査を受けたほうがいいか、そうでないか――迷う時の判断材料にしてほしい。

 ◆心電図
 ◇男性40代、女性50代からはお勧め

 職場などで行われる、いわゆる「健康診断」は、生活習慣病の予防を目的とした基本的な検査が多い(左の表(1)参照)。東京・八重洲総合健診センター(東京都中央区)院長の中里馨(かおる)医師は「ささやかな検査ですが、病気の糸口をつかむ要点を押さえている。健康な時の数値を知ると、病気になった時にも役立つ」と話す。
 心電図検査では心臓の位置やリズム、不整脈などが分かるといわれるが、「本当に異変が分かるのか」と懐疑的な見方もある。心筋梗塞(こうそく)の兆候は安静時には表れないため、「心電図検査は役に立たない」と指摘する専門家もいる。
 東邦大医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)循環器科の東丸貴信医師は、こう解説する。
「本人が気づかない間に心筋梗塞や狭心症を起こしている場合があり、それが発見できる可能性が高い。特に心筋梗塞は1カ月や1年、あるいは10年前の発作であっても、心電図の波形を見れば分かることが多いです。ある部分が壊死(えし)した状態が残っているためで、いわば心臓の"入れ墨"のようなものです」
 特に糖尿病患者の場合、「気分の悪い時があった」という程度でも、実は心筋梗塞を起こしていた、ということがあり得るという。
「健康な人に心電図検査は不要だという考え方もありますが、年齢が上がるにつれて真に健康な人が少なくなる。循環器医としては動脈硬化が始まる年代――男性40代、女性50代からは基本の検査としてお勧めします。高血圧症や糖尿病の人、中性脂肪やコレステロール値が高い人、喫煙者など動脈硬化を進めるリスクを持つ人は必須でしょう。父親が55歳以下、あるいは母親が60歳以下で脳梗塞や心筋梗塞、狭心症で倒れていれば、リスク要因の一つです。血液が固まりやすくなったり、血管自体がもろくなるような遺伝子もあるためです」(東丸医師)
 リスクが高い人は、運動負荷をかけて心電図を測る「運動負荷心電図」を追加で受ける手段もある。ここで異常が見つかった場合は、医師の指導のもとで治療を始めよう。
 不整脈は、発作が頻発している人なら基本の心電図検査でチェックできる確率が高い。しかし、時々不整脈を起こす人は見つかりにくい。装置を身につけて心電図を24時間記録する「ホルター心電図」ならば発見しやすいという。

 ◆胸部レントゲン
 ◇レントゲンかCTか、リスクで選択

 肺結核や肺がんなどを見つける目的で行われる胸部レントゲン(胸部X線)検査は、骨などの陰に隠れた病気が分かりにくいという。
「胸部という3次元の立体構造を、2次元である1枚の胸部X線写真に反映するためです」と言うのは、呼吸器専門医で池袋大谷クリニック(東京都豊島区)院長の大谷義夫医師。
 一方、X線を体の周りから当て、体内の様子を輪切りに撮影する「胸部CT」検査は、骨の裏に隠れている病気も見つけやすい。「胸部X線検査では早期の肺がん発見率が低い」という研究報告もある。
「胸部CTのほうが10倍ぐらいよく見えるのは確かです。だからといって、全員に胸部X線より被曝量の多い胸部CTを勧められません。肺がんに関する世界的なガイドラインでは、『55~74歳で喫煙者である高リスク群』には、年1回の低線量CT検査が勧められています。表(2)の『中リスク群』や『低リスク群』に該当する人は海外のデータでは推奨されていませんが、日本国内では検証中です」
 胸部CTにもいくつかの種類があり、「低線量CT」と呼ばれるものは1~2ミリシーベルトの被曝量。胸部X線検査の0・1~0・2ミリシーベルトと近いレベルになってきました。それに対して「高分解CT」は、5~10ミリシーベルトの放射線量を浴びることになるが、その分精度が高くなる。検診よりも、具体的な病気が疑われる時に使われることが多い。
 大谷医師自身は、肺がんの低リスク群に該当することから、胸部X線検査を毎年受けているという。
「ただし、胸部X線写真は医師側に"読み取る力"が要求されます。経験を積まない内科医が1人で診断すると、見落とす可能性がある。確実に肺疾患を見逃さないためには、呼吸器専門医か放射線画像専門医の医師2人によるダブルチェックをしている検診施設を探すことです」
 右にある肺がん患者の胸部X線写真(写真(1))を参照してほしい。どこにがんがあるか分かるだろうか。肋骨(ろっこつ)にがんが重なった時、「何となく骨の一部分が濃いような気がする」という判断で、医師は「要精密検査」の診断を下す。ちなみに大谷医師のもとでは画面上で肋骨を消すシステム(同写真右)を導入している。
 同じ患者を胸部CTで診たのが写真(2)だ。肺がん(左の白い影)をかなり識別しやすくなるのが分かるだろう。医師2人によるチェックを行う検診施設を探すか、心配な時は低量線CTを一度受けておくと、安心かもしれない。

 ◆大腸がん検診
 ◇まず「便潜血」検査 陽性なら内視鏡を

 大腸がん検診として公費の補助で行われているのは、便潜血検査。専用の検査キットに便をつけ、少量の血液が含まれていないかどうか判定する。大腸がんを確実に診断をするためには内視鏡検査が有効といわれるが、では便潜血検査には意味がないのだろうか。
 都立駒込病院(東京都文京区)大腸外科部長の高橋慶一医師は「そんなことはありません。最初の検査は便潜血が一番いい」と言う。
「まず、検診を受けないという選択はお勧めできません。検診で大腸がんが見つかる人は1%未満と頻度が低いですが、数万人の規模で考えれば、検診で数百~千人の大腸がんが見つかっています。内視鏡検査は、患者さんの体への負担があることと、内視鏡医の手が足りないのが難点。集団からできる限り疑わしい人を見つけて、内視鏡につなげるという意味で現段階ではベストの検査です」

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