くらし・健康詳細

イチオシ
loading...

最新科学で判明!丸山ワクチンはやはり「がん患者」に光明 森省歩 第1回

2016年6月 5日号

「夢のがん特効薬」とされながらも、厚生省(当時)が新薬承認を見送った丸山ワクチン。創薬から70年余を経て、その制がん効果に関する新たな知見が次々に明らかになっている。自身もがん闘病中の気鋭のジャーナリストが、丸山ワクチンの驚きの新事実を集中連載で報告する。

 2012年8月23日、日本医科大学付属病院。この日の朝、私は東京・根津にある同病院のワクチン療法研究施設を訪ねていた。目的は、かつて「がんの特効薬」として世の注目を集めた「丸山ワクチン」の投与を受けるためだった。
 実は、この3カ月前、私は同病院に近い東京大学医学部附属病院で大腸がんの摘出手術を受けていた。切除範囲はS状結腸の大半と所属リンパ節19個、病巣が癒着していた腹膜の一部など広範囲に及び、術後の病理検査の結果、がんの病期はリンパ節の2カ所に転移のあるステージ3A(進行S状結腸がん)と宣告されていたのである。
 当時51歳の私にとってはまさに青天の霹靂(へきれき)。主治医からはただちに再発予防のための経口抗がん剤の服用を勧められたが、抗がん剤は時に患者を死に至らしめるほどの副作用をもたらす毒薬、劇薬である。
 仮に副作用の発現が比較的軽微だったとしても、少なくとも夜討ち朝駆けの取材や徹夜の執筆などを余儀なくされるジャーナリスト稼業は立ち行かなくなる。加えて、私には治療に専念できるほどの経済的余裕もなかったことから、悩みに悩んだ末、最後はイチかバチかの心境で術後の抗がん剤治療を辞退した。
 ただ、その一方で、座して再発を待つことには、心理的に耐えがたいものがあった。再発が明らかになれば治癒はほとんど絶望的となり、その瞬間から余命のカウントダウンが始まってしまうからである。
 この窮地を抜け出す妙策はないものか―。実は、手術を受ける前から、私には「進退窮まった時にはアレを使おう」と、密(ひそ)かに心に決めていた薬があった。それが40日分で1万円と値段も安く、副作用も皆無といわれる丸山ワクチンだったのである。
 その日、日本医科大病院の中央玄関ホールは、まだ朝の8時台だというのに、外来患者らでごった返していた。玄関脇に設(しつら)えられた案内板に従い、そこから狭い廊下を右に折れ左に折れしながら進むと、突き当たりの奥に目指す丸山ワクチンの外来受付はあった。
 投与を受けるための説明会場にはすでに十数人の先客の姿。そして、私も手続きを済ませるべく必要書類を提出した時のことである。受付係の女性が「ご家族の方ですね」と念を押すように尋ねるので、「いえ、患者本人ですが......」と答えると、「えっ、ご本人なんですか!?」と何やら驚きの声を上げたのである。
 聞けば、患者本人が手続きのために来院するケースは少なく、実際にやって来るのはほとんどが患者の家族や身内などの代理人なのだという。私はこの事実にハッとさせられるとともに、あらためて丸山ワクチンを取り巻く現状の厳しさを痛感させられた。
 一言で言えば、手術、放射線、抗がん剤などの標準がん治療をやり尽くし、歩くこともままならない打つ手なしの最末期にならない限り、事実上、がん治療医は丸山ワクチンの使用を認めようとせず、患者やその家族らも使用したい旨を医師に言い出せない、という悲しい現実が、いまだに存在しているのである。
 言うまでもなく、治療選択の決定権は患者にある。にもかかわらず、このような理不尽な状況がなぜ続いているのか。その構造的理由を知るには、丸山ワクチンをめぐる「受難の歴史」に迫る必要がある。

政治・社会

くらし・健康

国際

スポーツ・芸能

対談

コラム