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高齢社会反映した「介護」異色作

2016年4月 3日号
 犬童一利監督の「つむぐもの」は、薄明かりの仕事場で紙漉(す)き労働をしている職人の背中から始まる。そのアップシーンに惹(ひ)かれた。
 職人の剛生(たけお)を演じるのは石倉三郎。彼は東映に入って高倉健に「倉」の一字をもらって大部屋俳優から始めて50年、ようやく主役の座についたのがこの映画という。こわ張った表情で、笑おうとしない頑固一徹な和紙職人の生き方を堂々と演じている。その彼の「わしも耄碌(もうろく)した」というつぶやきが胸を打つ。
 もう一人、韓国映画の「息もできない」(2008年)で勝ち気な女子高生役で評判になったキム・コッピが相手役のヨナに選ばれている。娘ほどの年の差に「どうして?」と思ったが、彼女の介護役がぴったりはまっていた。
 舞台は越前和紙で知られる福井県の丹南地域。妻を亡くした剛生は一人で和紙作りに励んでいたが、病に倒れ、介護が必要となった。そんな時、韓国からワーキングホリデー制度を利用してヨナがやって来る。しかし、彼女の仕事は伝統工芸の手伝いではなく、介護だった。ヨナは激怒し、また剛生も韓国人と知って「帰れ!」と受け付けない。
 そんな2人が一つ屋根の下で暮らす。言葉が通じず、互いに理解し合うどころではない。半身不随になってもなお仕事に執着する剛生を、ヨナは手伝おうとするが拒否される。彼女はその都度ニッコリ笑い、韓国語で「わかりました、クソジジィ」と答える。介護施設の人々がサポートするのだが、うまくいかない2人の関係がおかしい。食卓で彼は日本酒、ヨナはマッコリを飲むシーンも。
 日本は今や超高齢社会。昔は二枚目スターの恋愛ものが邦画の主流だったが、近年は介護をテーマに据えた作品も目立つ。本作もそんな一本だが、同時に生涯をかけて一つの職業を全うしようとする者の物語でもある。
(木下昌明)

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