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「主食を抜くと健康になる」はホントか

2016年3月 6日号
◇糖質制限提唱者 江部康二医師が語ったこと!

 ごはんやパン、麺類やイモ類、菓子などの糖質を摂らない「糖質制限」。かつて一大ブームとなったが、第一人者として知られる作家の急逝で、安全性に不安を抱く人も多いのではないか。本誌の徹底検証をお届けする。

 糖尿病との診断をきっかけに「糖質制限」に取り組み、約20キロの減量に成功したノンフィクション作家の桐山秀樹さんが2月6日、急逝した。享年62。急性心筋梗塞(こうそく)という。同じ糖尿病の仲間を救いたいと、糖質制限関連の著書も多く、『おやじダイエット部の奇跡』(マガジンハウス)はベストセラーになった。糖質制限と突然死に関係はあるのか。
「糖質制限は寿命を縮めます」と話すのは、浜松医科大の高田明和名誉教授だ。
「肥満や高血糖に悩んでいた人が糖質制限を始めると、みるみる体重が減って血糖値が下がる。こんなに劇的に効果が表れるなんて、素晴らしい方法だと皆が思う。目に見えてわかる効果があれば、人は信用するでしょう。しかし、そのことが寿命にどう影響を与えるかは誰も考えない」
 糖質を制限することで、肉や魚などのたんぱく質の割合が増えると考えられる。日本糖尿病学会の2013年提言によれば、「たんぱく質の過剰摂取と心血管疾患発症率との間に相関がある」と報告されているという。一方で「関係がない」と、この定説を否定する大規模な研究結果もある。
 死亡した桐山さんが糖質制限を行う際の参考にし、糖質制限の提唱者として知られる「高雄病院」(京都市右京区)理事長の江部康二(えべこうじ)医師を直撃取材した。
「桐山さんが亡くなられたことは本当に残念ですが、糖質制限が原因ではないと思います。彼の著書によれば、2010年に気分が悪くなり、病院を受診し、200ミリグラム/デシリットルを超える高血糖、高血圧、肥満、脂質異常症を指摘された、と。その少し前に糖尿病網膜症にもなっていたようで、動脈硬化はかなり進行していたのではないかと考えられます。私は彼に会う度に循環器内科での画像診断を勧めてきました。というのは、血糖値が下がったと喜んでいましたが、現在の動脈硬化がどんな状態なのか、血液検査ではわからないからです」
 糖質制限より前の数年間で高血糖が続いていれば、心臓の血管は動脈硬化により詰まりやすくなっている可能性があるということだ。「糖質制限を始めるのは、早ければ早いほどいい」と江部医師は強調する。
 ここで糖質制限について説明しておこう。
「糖質制限」食は、もともとは糖尿病治療のための食事法としてスタートした。簡単にいえば、糖尿病は血糖値が上昇する病気だが、「現在、日本で勧められる"カロリー制限"を重視した炭水化物(糖質)中心の糖尿病食は、血糖値を抑えるよりむしろ上昇させる」と江部医師は考えた。
「糖質・脂質・たんぱく質の3大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質のみ。健康な人でも、空腹時血糖値が80ミリグラム/デシリットルだったとして、丼ものを1人前食べれば160ミリグラム/デシリットルくらいに跳ね上がり、しばらくして下がる(図)。この空腹時血糖値と食後血糖値のデコボコが、血管内皮を傷付けるのです。たんぱく質や脂質であれば血糖値が変動せず、恒常性を保てます。また糖質を摂(と)る度に、血中のブドウ糖をエネルギーに変えようと、インスリンも大量に分泌される。インスリンは別名"肥満ホルモン"と呼ばれるように、出すぎると体に悪い影響を与えます」
「糖質制限」食の基本的な考え方は、できるだけ糖質の摂取を抑え、食後血糖値の上昇とインスリンの過剰分泌を防ぐというもの。主食を抜いておかずだけ食べるイメージで、肉や魚はお腹(なか)いっぱい食べられるという。
「それに比べてカロリー制限は辛(つら)いと思いますよ。例えばステーキを食べたいと思ったら、200グラムで約1000キロカロリー。糖尿病患者は、すぐにカロリーの上限をオーバーしてしまう。糖質制限は満足できるまで食べてOKです。おいしく楽しく続けられる」(江部医師)

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