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「人生の深淵」覗いた天才劇画家

2016年2月14日号
 オリジナルの『同棲時代』、作画を担当した『修羅雪姫』『悪の華』『しなの川』、半自伝的な『関東平野』―。
 1970年代、上村一夫(194086)が描いた劇画は、女たちの危険な魅力を活写し、劇画界に独自の世界を築いた。没後30年の今年、弥生美術館(東京都文京区)で回顧展「わが青春の『同棲時代』 上村一夫×美女解体新書展」が開かれている。
 上村作品の魅力は「女性の涙や情念を通して、残酷で狂気に満ちた人間の本性を躊躇(ちゆう ちよ)なく読者に突き付けます。けれど、ドロドロした内容でも作品が汚くならない。この魅力にハマると彼の世界から抜け出せなくなります」(同館学芸員の松本品子さん)
 会場にはデビュー時から45歳で没するまでの代表作原画など約500点が並ぶ。テーマも従来の展覧会のような作品本位ではなく、「登場する美女という観点から50人を選んだ」という点が新しい。「マニアの方も初心者の方でも楽しめる、新しい視点で見せたかった」と前出・松本さんは言う。
 上村は「人生の淵(ふち)まで行って帰ってきたような人」と評されもしたが、その作品は平穏な人生を過ごした人間には描けない凄(すご)みと人間の業の深さを確かに感じさせる。上村の生涯を追った展示や、商業施設のデザインコンペで不採用になった原画作品もあり、ファンには注目ものだろう。
 職人気質のなせる業か、どんなタイプの原作でも受け入れ、月産200枚で多作といわれる業界にあって、最盛期には400枚も描いた。座談の名手でフラメンコギターもプロ級という社交的な人物像の半面、人間の裏側を知ったがゆえの深みと暗い影もあったと近親者は言う。
 ここ10年、上村作品は海外でも翻訳が進み、「映画的な魅力がある」としてフランスなどで評価されている。「後を継ぐ作家は出ておらず、やはり一代限りの天才だったと思います」(前出・松本さん)
(南條廣介)

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