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狼と人間との熾烈な戦い描く映画

2016年2月 7日号
 新春にふさわしい映画は、ジャン=ジャック・アノー監督の「神なるオオカミ」がイチ押しだ。作品は、中国・文化大革命のさなかの1967年から2年間、内モンゴルの大草原で繰り広げられる狼と人間の熾烈(しれつ)な戦いを描いた壮大なドラマである。
 毛沢東は都市部の知識青年を農村に送り込み、肉体労働を介して精神を鍛える「下放政策」をとった。主人公の大学生チェンは、ヤンとともに北京から草原にポツンとある遊牧民の族長の牧場へとやってくる。そこで彼は狼の群れに遭遇し、畏怖(いふ)の念を覚える。同時に狼に魅せられ、1匹の子狼を育てることにする。
 作品は当時の下放体験を綴(つづ)ったジャン・ロンの同名の原作を基に、フランスのアノー監督が映画化した。アノーはこれまでにも「子熊物語」「トゥー・ブラザーズ」など、熊や虎を中心に据えたドラマを作っている。本作も狼の調教に2年を費やして撮影に当たったという。狼の鋭い眼光の動きや仕草の一つ一つが見事に表現されている。
 まず惹(ひ)かれたのは、チェンが族長に連れられて、草を食(は)むガゼルの群れを襲う狼の群れを偵察するシーン。チェンが「狼は残虐だ」とこぼすと、族長は「違う。ガゼルこそ草原の悪だ。草を食い荒らすが、草原は多くの小さな命が頼っているものだ」と自然の秩序の大切さを説く。
 しかし、政府の役人は「狼は害悪だから絶滅させよう」と受け付けない。こうした対立から、文革時代のちぐはぐな政治のあり方も見えてくる。が、何よりも果てしない空と草原を眺めていると、「これが悠久の大地というものか」と、圧倒される。
 文革による悲劇映画は数多いが、厳しい大自然を我が物として生きる青年の「成長譚(たん)」ともいうべきこの映画からはロマンの薫りがした。第30回中国金鶏奨・最優秀作品賞を受賞している。
(木下昌明)

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