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名ばかり国民皆保険に殺される!

2016年1月24日号

 保険証一枚でいつでもどこでも医療機関を受診できるのが、日本が誇る「皆保険」制度だった。ところが今、国民健康保険の保険料を払うことができずに病院にかかることを諦めたり、治療費の心配から受診を我慢して死に至る慄然とする事態が広がっている。

「1億総活躍元年の幕開けであります」
 安倍晋三首相は1月4日の年頭記者会見で高らかに宣言した。この言葉に、共感できる国民はどれぐらいいることだろう。
 平田雅志さん(仮名、77歳)は正月明けに予約を入れていた病院に行かなかった。「今年は節約の年にする」からだという。糖尿病の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)が11%を超え、4年前に糖尿病の治療を始めた。朝昼晩の食前に自分でインスリン注射を打ち続けている。
 年金は月10万円ちょっとだが、家賃4万円と水光熱費を払い、食費は1日800円以内と決めてやりくりする。
「年金生活に入ってからの糖尿病との付き合いはきついよ。注射もやめたいけど、失明や足切断など合併症を起こすと医者に脅かされてるし......。食費を削ってフラフラになって、なんとも情けない老人になってしまった」(平田さん)
 経済的困難から治療を中断する人は少なくない。日々を健康に生きられさえすれば......という、ささやかな願いすら満たされない国民生活と「1億総活躍」のギャップ―今の日本の現実だ。
 関東地方の60代の女性が2014年夏、膵臓(すいぞう)がんで亡くなった。女性は30代の長男と家賃4万円のアパートで2人暮らしをしていた。女性の収入は月3万円の国民年金のみ。同居の長男は派遣業で月12万円ほどの収入を得ているが、生活は苦しく、やがて国民健康保険(国保)の保険料を払えなくなった。
 女性が病院にかかったのは同年春。受診する1年半前に体調不良で他の病院を受診し、膵臓腫瘍と診断された。だが女性はその後、病院にはかからなかった。歩けない、食べられない状態になってやっと来院し、検査の結果、腫瘍が肝臓や肺など全身に転移していることが分かった。
 病院のソーシャルワーカーがこう話す。
「医師から転移を告知された時、女性は大きく取り乱すことはありませんでしたが、涙を流しながら『悔しい』と口にされました」
 どんな思いで痛みを我慢し、病院にかかることを我慢し続けていたのか。ソーシャルワーカーによると、女性は国民健康保険の滞納があり、有効期間が短い「短期保険証」しかなかったという。期限が切れると全額(10割)を負担することになる。
「入院して治療をした場合、どれぐらい費用がかかるのか不安だったため、受診をためらっていたようです」(ソーシャルワーカー)
 医療費が高額になった場合に窓口負担が抑えられる「限度額適用認定証」を発行できるように、病院の担当者が女性の住む自治体にかけあったが、滞納による「短期保険証」であることを理由に発行されなかった。それでも、同病院の無料低額診療事業(後述)の対象になり、治療は継続できることに。だがその時点で病気は進行しており、治療のかいなく他界した。

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