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イスラム過激派支配の実像描く

2016年1月17日号
 アブデラマン・シサコ監督の「禁じられた歌声」(仏・モーリタニア)を見て、これを紹介批評することの難しさに悲鳴をあげた。何しろ、世界で問題化しているイスラム過激派の実態を、内側から批判的に描いた珍しい劇映画だからである。
 劇中の過激派兵士らはイスラム国(IS)をモデルにしたと容易にわかるが、そもそもISとは何者か? イスラムの教義によって、兵士らは王国のようなものを築こうとしている。しかし、固有の領土もなく、どんな国なのかはさっぱりイメージできない。ISを生みだしたのは米欧の中東への暴力による混乱であり、ISはその混乱に乗じて広がった矛盾の塊だからである。
 では、映画はそんなISのどこに焦点をあてたのか?
 パリ同時多発テロの7日後、アフリカのマリ共和国で20人以上が殺害されたが、そのマリの古都ティンブクトゥを舞台に、ISによる支配の実態を描き出している。
 シサコ監督は隣国のモーリタニア出身。マリで事実婚の男女が、ISによって投石で公開処刑された事件を知り、映画化に踏み切ったという。
 トップシーンから、兵士が街を回ってハンドマイクで「歌を歌うな」「たばこを吸うな」と呼びかけている。これを守らない者は、直ちに裁判にかけられる。歌を歌ったために40回のムチ打ち刑に処され、激痛に耐えながらも必死に歌おうと抵抗する女性の姿が強烈だ。
 そんな占領下でも、人里離れた少女トヤの一家はのどかな遊牧生活を送っていた。ところが、川漁師が一家の大切な牛を殺したことからいさかいとなり、拳銃の暴発事故で漁師は死ぬ。父は裁判にかけられ、その場で公開処刑されようとする。これを止められないトヤが泣きながら砂丘を駆けていくシーンが胸を打つ。
 美しい砂漠地帯でくり広げる理不尽な暴力支配を、映画は声高に批判するのではなく、観客に問うている―これでいいのか。
(木下昌明)

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