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女性半数男性3割 預貯金が底をつく恐怖

2015年9月20日号
 豊かな老後はどこへ――65歳以上の生活保護受給が過去最多の79万6455世帯に達したと、先日厚労省が発表した。誰もが転落しうる"貧困老後"。中でも単身女性の困窮ぶりは際立っている。シリーズの初回は「低年金」の女性の現状と対策から始めたい。

 流し台には手洗い石けんや食器洗い、調味料などが整然と並び、つましく堅実に暮らしている様子が手にとるようにわかる―。8月上旬。気温が体温を超えた猛暑の日、横浜市の木田桂子さん(73歳、仮名)を訪ねた。築30年近いマンション1階に一人で暮らす。小さな台所のテーブルで向き合って話を聞いた。
 木田さんが見せてくれた年金振込通知書。20代の頃、10年ほど会社勤めをした時期があり、その時の厚生年金と、自営業を営んだ頃の国民年金を合わせて年額87万7300円。月約7万円の年金で暮らす。
「この少ない中から介護保険料を引かれるのよ。4月期、6月期は6000円だったのが8月は8020円になったでしょ。私、介護保険サービスを受ける気ないから『天引きしないでくれ』って言いたいのよね」
 年金振込通知書を何度も見直しながら、木田さんは働きづめだった自身の半生を振り返った。
 25歳で結婚し、2人の子に恵まれた。夫は電気工事やエレベーター設備の仕事をしていたが、オイルショックなどがあり収入は不安定だった。木田さんは家事と子育てをしながら会社の経理を担当し、和服販売などのサイドビジネスで家計を支えた。学習塾を開いて子どもたちに勉強を教えた時期もあった。仕事と金策に追われ、2度の離婚を経験。体を酷使したため、30代で胃潰瘍を患い、うつや自律神経失調症、心筋梗塞(こうそく)と病気に見舞われ続けた。
「『何くそ』とがむしゃらに働いてきたけど、収入が途絶えて国民年金保険料を払えない未納期間もあって。だから、この年金額しかないんですよ......」
 約7万円の年金から家賃などで5万円が出ていく。2万円では生活できない。簡易保険を取り崩しながら生活している。
「蓄えが底をつくのが恐怖です。食費や水光熱費、交通費など、なんだかんだで月10万円は出ていきますからね。膝や腰が痛みますが、医療費がないので我慢して医者には行かないようにしています。教育費がかかる娘や息子には、助けてくれとは言いたくない」
 木田さんが何より恐れているのは病気だ。だから食べ物に細心の注意を払う。
「無農薬の野菜を安い時にまとめ買いして作り置きしておくんです。どんな野菜もムダなく使い切りますよ。スーパーで必ず買うのは1袋20円のモヤシ。ニンジンは安い時に10本くらいビニールに袋詰めになったのを買ってきて、大きな鍋で一気に茹(ゆ)でます。1分だけでいいのよ。冷まして小分けにして冷凍にして、サラダにも煮物にも使えます」
 賞味期限が迫り「4割引き」になったレトルトの「和風煮物セット」を3~4個まとめ買いし、食べたい時に自分で味付けして食べる。ご飯は1回3合炊いて冷蔵庫へ。3日目はチャーハンや酢飯にする。大好きなお刺し身は"特売狙い"だ。
「カツオなんかは安い時に買って、切り身にしてみりんと醤油(しようゆ)で『漬け』にして、3日目の酢飯にのっけて食べる。おいしいのよ」
 そうやって切り詰めても、食費は月1万5000円ほどかかる。テーブルの上には健康本が積んであった。
「一番の節約法は病気しないことね。病院代や薬代にお金を払うぐらいなら、体にいいものを食べたり飲んだりして予防に徹した方がお得。免疫力をつけて、病気を寄せ付けないことが大事だと思っているの」
 午前中は暑くてもクーラーを我慢して、首の回りに氷をまいてしのぐ。部屋中に置かれた温度計・湿度計は熱中症にならないための対策なのだという。
「結局ね、病気になると迷惑かけるのは子どもだから。今は社会が面倒みてくれないでしょ。2人の子どもたちも、自分たちの生活だけで目いっぱいですよ」

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