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独占掲載!「がん再発」闘病記

2015年3月29日号

 なかにし礼 「人は何よりもまず生きなければならない」

 この時の私の心境は「ああ、ついに来たか。まあ、間違いなくがんだろうな」というものであり、「またあのつらい闘いが始まるのか。克服できるだろうか。こんどもまた陽子線は頼りになるのだろうか。陽子線さえ使えれば怖いものはないのだが」というものだった...

 二〇一二年の九月に食道がんを克服して私は『生きる力─心でがんに克(か)つ』(同年十二月二十日発行 講談社)という本を書いたが、決して有頂天になっていたわけではない。その本の終わり近くにA・カミュの『ペスト』の文章を引用したことがなによりの証拠だ。それはこうだ。
 ─ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないのであり、数十年の間、しんぼう強く待ちつづけていてそしておそらくはいつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストがふたたびその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差向ける日が来るであろうということを─(宮崎嶺雄訳、新潮社)
 というわけであるから、正直に言って、私は絶えずがんの再発を恐れていた。もし私が明るくふるまっているかのように見えたのなら、それはたぶん「今日のところはまだ再発は起きていない」というはかない事実にもとづいてつくった笑顔によるものだろう。
 しかし、がんが消えて二年半も経(た)つと、専門家である医師も「もう大丈夫でしょう」と言ってくださるし、本人もそう思いたいからそう思う。しかし心から笑えない。という奇妙な月日がここ数か月流れた。
 そして今年の一月二十七日、三か月に一回受けているG東病院における定期検診の結果、食道付近のリンパ節に怪しい影がみつかった。CT検査によるものだ。しかしあくまでも怪しい影であり、がんとまだ決定を下すまでにはいたらない。もっとはっきりと影の正体をつきとめるためにPET・CTをやってみましょうということになった。
 この時の私の心境は「ああ、ついに来たか。まあ、間違いなくがんだろうな」というものであり、「またあのつらい闘いが始まるのか。克服できるだろうか。こんどもまた陽子線は頼りになるのだろうか。陽子線さえ使えれば怖いものはないのだが」というものだった。

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